私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「クマと森のピアノ」 デイビッド・リッチフィールド作 俵万智訳 ポプラ社

はじめて書店で見たとき、まずは表紙にひと目ぼれ。少し開いた上品な深紅の緞帳の向こうで、燕尾服のクマが、木製のアップライトピアノに向かって演奏しています。そのコントラストのなんと洗練されて素敵なこと!表紙に続く木漏れ日の耀く木立の美しい風景に誘われ、あっという間に絵本の世界に引きこまれてしてしまいました。

ごく小さい時に森の中でピアノに出会ったクマのブラウン。それが何なのかも知らなかったけれど、鍵盤に触れ、その音を聞いた時から心を奪われ、毎日毎日ピアノに触れにやってきます。拙く途切れ途切れだった音が少しずつなめらかになり、いつしかその音はメロディーとなり、森の動物たちの心をとらえます。そしてある日のこと…。

こどもの時に出会うのか、20代なのか60代なのか…。出会う年代や人生経験のちがいで様々な受け止め方になるだろう本書。BGMにお気に入りのピアノ曲等を流しながら、静かにじっくりと味わってほしい絵本です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「ストレス脳」 アンディ・ハンセン 新潮社

世界的ベストセラーとなった「スマホ脳」の著者の最新作である。

大学生の孫と書店をウロウロ、「スマホ脳の本が良かったよ」と彼に紹介。その孫が「こんなのもあるよ」と本棚から取り出してくれた。孫に敬意を表し読むことに。

脳はその個体が生存できることを最優先とする。脳が選択するのは生き延びるためにすべき方向。

長寿社会が訪れるまでは若い時期に感染症や事故等で死ぬ確率が高く、その関所を巧妙に潜り抜けた人間の遺伝子のみが生き残り、世代を重ね、現代に至る。

対人関係に不安を感じ引きこもるのは、生存を重視する脳が選んだごく自然の成り行き。

運動と仲間が必要と対処法も記してある。特に運動は1週間に1時間程度でも効果を期待できるそう。ストレスホルモンを抑制する作用を促すらしい。

ウオーキングへと突き動かす原動力を理解できたように思う。気候が良くなったら、こっそり1時間ウオーキングを始めようかな…。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「本屋という仕事」 三砂慶明 世界思想社

誰かと待ち合わせするとき、みなさんはどこで待ち合わせをしますか?喫茶店?公園?文房具店?

学生のころから一貫して、わたしのお気に入りの待ち合わせ場所は本屋さん。ここなら早く着いても、相手が遅くなっても機嫌よく過ごせます。

本屋は本を買う場所ですがそれだけではありません。地域の情報発信拠点として、本を核に人と人、人と地域、地域と地域を結ぶ場所でもあります。

梅田蔦谷書店の人文コンシェルジュにして同点で本と人をつなぐ「読書室」を主宰されている三砂慶明氏編による多角度から迫る「本屋という仕事」。なにもなかった場所に本屋を起こした人、書店員として“本屋とは”に向き合い取り組んできた人、本屋に新たな付加価値を与えこれからの本屋のあり方についてユニークな活動を実践している人…。

日本各地の本屋とそこに働く書店員たちの生きる世界を生き生きと伝えてくれる一冊です。

 

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私の一冊

西野内小代

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インド洋 日本の気候を支配する謎の大海」 蒲生俊敬  講談社

日本から遠い海、という印象でしかない「インド洋」。

「謎」というキーワードにすこぶる惹かれ、加えて最近の異常気象も気になり、副題に惹かれて読んでみることに。

日本はインド洋から遠く離れてはいるが、ユーラシア大陸と隣り合っているという地理的条件によってインド洋の影響を受けている。

インド洋の熱帯海域における表面水温が、西側で異常に高くなり、逆に東側では低くなる現象(ダイポールモード現象)が日本列島の夏の異常高温の原因となっている。

冬の大陸高気圧が強力なときには北西季節風は強まり、日本列島は厳しい冬となる。そのようなときは、同時にインド半島やインド洋北部でも、強い北東季節風が吹きやすくなると考えられる。この風はとても乾燥しているが、日本海を渡ってくる時に大量の水分を含むために日本海側に豪雪をもたらす。

ソマリア海賊はインド洋の海流や季節風(ヒッパロスの風)を巧みに利用することによって燃料を節約、作業の安全(!)を考慮していたらしい。

海底温泉やシーラカンスの話も登場し、トピックス的な面白さもある。

 

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私の一冊

山門由佳

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「ホームパーティ 和を楽しむ食卓12か月」 江川晴子 世界文化社

こちらに引っ越してきてから、人をお招きする機会がとても多くなりました。嬉しいことです。 幼少期から、お友達の家に遊びに行くよりも勝手知ったる自分の家に来てもらうほうが好きだった私なので、その流れがさらに加速しているのかもしれません。

「お招き」‥なんて洒落た言葉を使ってみましたが、わが家のリビングはトミカやらレゴやらメルちゃんやらが散乱し、なんとかそれらを部屋の隅に押しやり、体温計のぶっ刺さったペン立てと食堂かといわんばかりの大量の箸が箸立てに並んだテーブル(もれなく油性ペンで施された落書き付き)にお招きするのです。汗。

けれども、こちらの写真集にでてくるホームパーティはまさに「お招き」にふさわしいテーブルコーディネートばかりです。大人っぽくて、美味しそう。。。 いつかわたしもこんなテーブルコーディネートで「お招き」できるよう腕と技を磨きたいものです。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「サステイナブルに家を建てる」 服部雄一郎, 服部麻子 アノニマ・スタジオ

アメリカ、南インド、京都を経て、2014年に高知県移住された服部雄一郎さん一家。ご家族で楽しみながらプラスティックフリーやゼロウェイストの実践的な取り組み、サステイナブルな暮らしをされています。引越しによる刺激や発見を楽しんでいらした一家が大方向転換(?)。3年の道のりを経て、昨年家を建てられました。

家を育て、引き継いでいく「100年を目指す家」が建つまでのプロセスはそんじょそこらの物語よりも刺激的でドラマティックです。家を建てるって思いもかけないアクシデントも多々起こることだと思いますが、その苦労さえも楽しく語られる雄一郎さんと麻子さんお二人の洒脱な文章の素敵なこと!

おすすめの一冊ですがひとつだけご注意申し上げます。この本を読むと「家を建てたい病」に罹患するかもしれません。もし罹患されても責任は一切取りませんので、くれぐれもご用心くださいね。

 

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私の一冊

山門由佳

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「少年探偵 黄金仮面」  江戸川乱歩 ポプラ社

江戸川乱歩の少年探偵シリーズは、わたしの小学生時代の青春がよみがえるシリーズです。このシリーズを読みすぎて、両親ともに視力1.2という家系に生まれたというのに、現在0.02(!)というド近眼になるほど視力も心も奪われたほど夢中になりました。

大人になった今もなお、このシリーズを手にとると懐かしくて愛おしい気持ちでいっぱいになります。 憧れの昭和の時代背景、独特の言い回し、全体的に漂う知的さと気味の悪さ、魅惑的な挿絵、あっと驚くストーリー展開…。夢見る少年少女にふさわしいシリーズこの上ないと思われます。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「宙(そら)ごはん」 町田そのこ 小学館

 気の置けない友人や大好きな人との食事を一緒に取る時、しみじみと「幸せだな~」と思います。ましてやそれが好物のお菓子や美味しいレストランでの食事だったら、これぞ「至福」というもの。でもなかなかそんな時間の取れないときは、美味しいものが出てくる本を読むのも良いものです。

「和菓子のアン」、「幸福な食卓』、「喋喋喃喃」…。美味しいものが出てくる本はたくさんあって嬉しい限りですが、そのラインナップに新たな本が仲間入りしました。

タイトルにある宙(そら)は主人公の女の子との名前です。ママ(育てるひと)とパパがいて、お姉ちゃんがいて、しかもお母さん(産んだひと)がいるなんてとてもラッキーだと思っていた宙でしたが、ある時同級生のマリーに「かわいそう」と言われます。それまで全くそんな風に思ったことのない宙ははじめて自分の境遇を「かわいそうなのかな?」と思い始めます。

そんな思いもあってか、パパが外国に転勤することになったとき、宙はママたちと一緒に外国に行くかわりにお母さんと一緒に暮らすことにします。ところがお母さんは料理はできないし、宙の面倒も見てくれません。そんな宙を救ってくれたのはお母さんがやとった“やっちゃん”の作ってくれる美味しい食事なのでした。

「第一話 ふわふわパンケーキのいちごジャム添え」、「第二話 かつおとこんぶが香るほこほこにゅうめん」、「第三話 あなたのための、きのこのとろとろポタージュ」…。どうです、美味しそうでしょう?

 

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私の一冊

西野内小代

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「僕が恋した日本茶のこと  青い目の日本茶伝道師、オスカル」 ブレケル・オスカル 駒草出版

「YOUは何しに日本へ?」という番組で紹介され、ライフワークとしての位置づけで日本茶と真摯に向き合い、単なるクールジャパンに憧れた人ではないと印象づけられていた。
その後を追う企画をたまたま観てビックリ!その決意通り会社を立ち上げ、グローバルに活躍されていた。本も数冊出版し、今や静岡から東京へと進出している。

日本人がないがしろにしがちな日本茶をもっと大切にするべきだと日々奔走している。この本ではその行動の過程・お茶の銘柄そして産地や背景なども紹介している。
100g一万円のお茶はウィスキーと比較してみると決して高い訳ではないと言い切る。
容姿の端麗さも読者を引き付ける要素の一つとなっているだろうが、お茶に関する資料を読み解くために日本語を習得し、漢字も使いこなす。
頭の下がる思いです。この本で評価の高い秋津緑という銘柄に出会ったら飲んでみたい!と本を閉じた。

 

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私の一冊

山門由佳

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「作家の住まい」 コロナ・ブックス編集部  平凡社

毎週日曜日の朝、いつも楽しみに観ている番組があります。『渡辺篤史の建もの探訪』(BS朝日8時半より)。渡辺篤史さんが、こだわりを持って建てたおうちを訪ねて、その家の主人に説明を受けながらさまざまな家を紹介する番組です。

まず出演されている渡辺篤史さんの声がとても耳に心地が良い。さらにおちゃめなリアクション、絶対マイナスなことを言わないコメントもどれもこれもツボ。 数々の素晴らしく美しい家が映し出され、番組が終わり、画面から室内に目を戻したとき、散らかりまくった自宅の現実にがっかりはしても、結局愛すべき暮らしはここにある。

しかしながら「家」を見て、そこにどんな「人」が暮らし、どんな「生活」が営まれているのか想像するのがとてつもなく面白いです。

作家の住まい…。圧倒的に家に在宅している時間が長い作家という職業の家。不思議と家というものは、そこに住む人物、作品、センスまでを映し出します。どの家も、その作家にぴったりな雰囲気をまとっていることに驚かされます。

この本を通して、堀田善衛氏の作品を読んでみたいと思いました。この家から生み出されるのはどんな作品なのであろうかと興味津々です。

 

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