私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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全米トップ校が教える自己肯定感の育て方 星友啓 朝日新聞出版

「自己肯定感」という言葉に引かれ手に取った。

満足感のある経験もしてきたはずなのに、ふと蘇る思い出にマイナス思考に陥り、心のモヤモヤ・自尊心の喪失、だんだん落ち込んでいく。常々こういった自己否定の感覚に見舞われ俯きがちになる。

成績の向上、金銭的な裕福、これらは外発的な報酬であり、おまけの報酬であって、これによる満足感は長くは続かない。よって自己肯定感は育たない。

これとは対照的に内発的な満足感による自己肯定感は持続可能である。

ネガティブな気持ちは無理矢理忘れようとしてはいけない。

自分の気持ちを抑え込みがちな人は、疾患による死亡リスクが30%高まり、癌になる確率も70%上がるという研究結果がハーバード大学などにより報告されているそうです。

人間は反省の生き物であり、反省しないことには次のステップでの向上はない。そのようにして人類は成長し、豊かな心を育んできた。自己否定・反省は厳しい進化を生き抜く上で一人ひとりのDNAに刻まれてきた大切な能力の一つであると肯定的に捉えるべきである。

自己肯定感の育て方が幾通りか提案されていて「優しさ」がキーワードになっています。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「緑の精にまた会う日」 リンダ・ニューベリー作, 野の水生訳, 平澤朋子絵 徳間書店

 日本に座敷わらしやコロボックルの伝説があるように、イギリスには豊かな自然の象徴のグリーンマンや炉端のロブ等の民間伝承があるそうです。

ルーシーのおじいちゃんの畑には「ロブさん」が住んでいて、おじいちゃんの畑仕事をちょこちょこと手伝ってくれています。ルーシーはまだロブさんを見たことはありませんが、ロブさんの存在をときどき感じることはあります。

やっとロブさんの姿を見ることができるようになったのもつかの間、おじいちゃんがなくなってしまい、畑は売りに出されます…。

目に見えないものは「ない」という人がいます。でもそうでしょうか?人を好きになる心や誰かに対する感謝の気持ちは目に見えないけれど、確かに存在しています。魔法はないっていう人がいますが本当にそうでしょうか?

小さな黒い朝顔の種を植えればちゃんと芽が出て夏には美しい花が咲くこと。ツバメの卵からはトカゲやニワトリでなく必ずツバメが孵ること。ちいさくて何もできなかった赤ちゃんが幼児になり子どもに成長し、いつしか大人になっていくこと…。どれ一つとっても全く不思議な、魔法としか思えないことで世界は満ち溢れています。

いつもいつも、幸せに平和に生きていくことは難しいかもしれません。でも、自分の周りにあるたくさんの魔法の力を信じて、自分の芯にある変わらぬものを大切にして道を歩き続ければ、その先にはきっと祝福がある、とルーシーとロブさんが教えてくれました。

 

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私の一冊

山門由佳

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「もう、家に帰ろう 2」  藤代冥砂 ロッキングオン

息子が一年生になった。 保育所時代、歩くのをいやがり自分の軽い荷物でさえ、持ってーと甘えていたあの息子が重いランドセルを背負って片道2キロの通学路を歩いてゆく。

朝、いっしょに通学する友達の姿をみつけると、こちらを振り向きもせずにはしゃいで学校へとむかっていくうしろ姿に、成長の喜びとともにすこしのさびしさを感じてしまった。 どんどんこうして離れていくんだなぁ、、、 あんなに早く大きくなってくれぇ〜と心から祈っていたのに、ほんとのほんとに大きくなって、離れていく予感を感じたら焦るあまのじゃくな母のわたしのきもち。 でも、これでいいんだ!これがいいんだ!…そう言い聞かせる。

この「もう、家に帰ろう 2」は著者である写真家の藤代冥砂さんの家族の写真集。息子さんを妊娠している頃からを順に追い、約6年間の記録を著者の温かいコメントと共に綴られている。 他人の家族写真なのに、自分達家族の記憶とかぶり、思わず感情移入して泣きそうになる。

一日一日は、大きな感動もなくただただ慌ただしく過ぎていくのに、一日が日々になって積み重なるとどうしてこんなにも愛おしくせつないんだろうか。 もう二度と取り戻せないあの日々。 想い出はいつだって美しい。

この素敵な写真集の表紙に落書きした幼い息子の痕跡。当時は本に落書きして叱ったのに、今ではそれですらいとおしく思える。。。 …じゃあ赤ちゃん時代に戻れますよ!といわれても戻りたくはないんだけれど。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ルポ 森のようちえん~SDGs時代の子育てスタイル」 おおたきとしまさ 集英社新書

 遠い昔、幼児教育をほんのちょっぴり齧った(ほんとうにちょっぴりです)せいか、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育、イエナプラン教育などの実践には興味や憧れがあります。これらの教育と並び称される教育が日本の各地で展開されているらしいのです。素敵!

その教育・保育活動を称して「森のようちえん」と名付けていますが、そのアプローチ方法は一律ではありません。 生きぬく力に満ちた、迫力のある子どもたちが育っている様子は見事の一言。こどもはやはり希望にあふれた存在なのだと伝えてくれるルポルタージュです。

 

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私の一冊

西野内小代

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「日本語の大疑問  眠れなくなるほど面白いことばの世界」 国立国語研究所 幻冬舎

気になりながら詳しく調べることもなくやり過ごしてきた十二支の漢字の不思議。

帯の文字に興味をそそられ購入。

十二支は月日などの順序を表す記号のように用いられたものであり、動物との関わりはない。あとから馴染みある動物名を割り当てただけであり、本物の動物を示す言葉ではない。(ネコがないのが気になる~)

手話についても説明があり、なんと手話は世界共通ではない!日本においてさえ地域差がある。いわゆる手話の方言である。ジェスチャーが基本なので考えてみれば当然です。現在では標準手話がかなり浸透してきているそうです。

その他、「最近の日本語」「敬語と接客言葉」「世界のことばと日本のことば」「外来語」など興味深い内容が展開されています。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「はなのすきなうし」 マンロー・リーフ文, ロバート・ローソン絵, 光吉夏弥訳 岩波書店

昔、スペインの牧場にフェルジナンドという子牛がいました。フェルジナンドは一人静かに草の上にすわって、花のにおいをかいでいるのが好きでした。他の子牛たちはいつか闘牛で活躍したいと飛んだり跳ねたりしていましたが、フェルジナンドはそんなことには全く興味がありませんでした。

それから数年後、体の大きな立派な雄牛に成長してもフェルジナンドの好きなことは、花のにおいをかいで静かにいることでした。ところが…。

この絵本がスペインで発行された1936年は内戦の最中で、平和主義者の象徴として国内で発禁になったこともある作品です。それでも名作として世界各国で読み継がれているのは、自分らしく自然体で、周りに流されることなく穏やかに生きるフェルジナンドの個性が、人々の心に何かしらの善きものをもたらしてくれるからではないでしょうか?

 

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私の一冊

山門由佳

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「若杉友子の野草料理教室  春」 若杉友子 ふーよよ企画

土佐町に来て2年になった。 四季を2度経験して、だんだんと季節のうつりかわりの流れがようやくつかめだした感じがする。

蛙が鳴きはじめて、田植えの予感を肌で感じ、そのあとには蛍が光りはじめて、秋までつづく蝉の大合唱…そんなあたりまえの流れに安心感と心地よさを感じる。

春は、いつもの散歩コースもあちらこちらに目をやるところがいっぱいになっていそがしくも愉しい季節。この若杉友子さんの本を片手に野草のお勉強。 絵本「ばばばあちゃん」を実写化したような若杉友子さん。じつに頼もしい。

今年はカルシウムの宝庫であるつくしをうっかり食べ逃してしまった。 そのかわりに、薬効高きよもぎをバンバン取り入れようと企んでいる。よもぎをみたらむしりとらないと勿体なく感じるなんて自分の姿は、2年前は想像もつかなかった。。。

【ヨモギ】 ビタミン・ミネラル・酵素は極めて豊富で、薬効成分もピカイチ。 血液を浄化し、生理機能を正常にする働きがあり、内蔵器官の機能を復活させ、新陳代謝を盛んにする優れた野草。 肩こりや利尿に効果があり、黄疸も治ったと言う人がいるくらいの効能がある。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「はるがきた!」 ジーン・ジオン文, マーガレット・ブロイ・グレアム絵, こみやゆう訳 主婦の友社

春から夏、夏から春、と季節の移ろいを感じる時間は楽しいものです。その中でも特に冬から春になる時間は格別に思われます。でも、例年なら春の気配を感じるころなのに、どこもかしこもどんよりとした灰色だとしたら、どうしますか?

「どうして春を待たなくっちゃいけないの? ぼくたちで春をつくっちゃおうよ!」と町の人たちに呼び掛ける小さな男の子。その言葉に鼓舞されて、人々は町を春の色に塗り替えていきます。町中すっかり春の装いになった夜、嵐がやってきて…。

自然災害や戦争や感染症など、自分の力だけでは好転させられないものはたくさんあります。でも、あきらめずに願い、行動し、希望を失わずに生きていればきっと待ちわびる「春」がやってくることを伝えてくれる絵本です。

 

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私の一冊

山門由佳

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「TOKYO ARTRIP 和菓子」 美術出版社

 最近、和菓子が気になる。せんべい屋だから当然かもしれないけれど、生まれ育った神戸は、歴史・地理的な背景も手伝って、圧倒的に洋菓子のまち。和菓子はどうしても地味にみえて魅力に気づけていなかった。

実際、自らつくるせんべいも小麦粉、砂糖、卵を使うので【洋風煎餅】と呼ばれている。

−木の実や果物が起源で、米や粟、ひえなど穀物を加工した餅や団子が、和菓子の原形といわれている。

飛鳥〜平安時代に遣唐使らにより「唐菓子」が中国から伝わった。鎌倉〜室町時代にかけて禅僧によって「点心」が、戦国・江戸時代初期にはポルトガルから「南蛮菓子」が上陸。これら3種の影響を受け、江戸時代には色、形、菓子名ともに日本独自の和菓子がつくられるようになった。

和菓子をつくる職人の繊細な技巧だけでなくそこに付随する器や茶にはじまり、空間における書や花や庭などの全体的な芸術、そしてもてなす茶人の心まで、、、 歴史は果てしなく古く、知れば知るほど奥深く、根が深い。あれもこれも知りたくなってもうドロドロの沼状態…。

まずは入門書的なこちらの本。 東京の和菓子を扱う店舗紹介とともに和菓子の歴史や豆知識、写真のかわいさにキュンとなる。 (日本語&英語のバイリンガルで書かれているので、外国のかたに日本の〈wabi-sabi〉的な魅力の和菓子のことを説明するにもピッタリかもしれない。)

和菓子を目の前にしたとき。 その佇まいからひろがるおだやかなテンションに【平和】【平安】を感じて心が落ち着く。揺らぎやすい心を、すーっと正してくれる。そんな感じがする。 地味は滋味。洋菓子は気持ちを高めたいときに、和菓子は心を落ち着かせたいときに。

 

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私の一冊

西野内小代

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プロイセン王家 12の物語」 中野京子 光文社

現在のドイツの成り立ちを名画と共に辿っていく比較的肩の力を抜いて読める歴史物です。

 「ハプスブルグ」や「ブルボン」という王家の名前は耳にすることも多いけれども、この本の扱う「ホーエンツォレルン家」というのは馴染みが薄い。このホーエンツォレルン家が巧みに世界史を渡り歩き、今のドイツの礎を築いてきた様子をその時々の主たる人物の絵画を紹介しつつ読み解いていく。

「兵隊王」「不定詞王」「ひらめ」などあだ名も紹介、親近感のもてる内容となっている。

ヨーロッパ(含ロシア)各国の王家が日本の戦国時代そのもの、姻戚関係により結びつきあっていて、政治的に微妙な位置関係にあることも納得した。

領土拡大という野望は、多大なる犠牲のもと誰の益となるのか?

過去からの教訓は人類の大切な根幹ではないかと思います。

 

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