私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「発達障害の人が見ている世界」 岩瀬利郎 アスコム

「定型発達」という言葉を恥ずかしながら本書を読むまで知りませんでした。定型発達とはいわゆる普通の人=発達障害ではない多数派の人びとを意味する用語です。

学校や職場、地域の人たちと互いの意見や考え方を理解し、尊重し合いながら関係を築いていくことの難しさを感じることが時々あります。人と円滑にコミュニケーションをとることはなかなかに難しいことです。定型発達者同士でもそうなのですから、発達障害の人たちはもっと悩み、傷つき、苦しんでいるだろうことは想像に難くありません。

上手にコミュニケーションをとるために必要なことは定型発達者、発達障害者の区別なく「相手の見える世界」を想像すること。他人の「靴を履いてみる」ことかも?

相手を理解し、適した接し方をとれればコミュニケーションがスムーズになる例が具体的に示されていて、たくさんの気づきとヒントをもらえた本でした。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

西野内小代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「百人一首 百人の物語」 辻井咲子 水曜社

一首には一つの解釈があるのみとずっと思っていた。違う感じ方をしてもそれは私が間違っているのであって、正解を覚えなくては…と長年思っていた。

時々こんな作品がどうして長く世に残っているのかと不思議に思うこともある。この本に出会い、長い年月を経る過程において、解釈は変化していく場合もあることを理解した。

それならば、自己流に解釈してもいいのではないか、と気軽に接することができるようになった。

百人一首の選者である藤原定家は、政治的な思惑や世間の評判を気にして選んだ可能性も考えられるそうだ。表現や解釈は自由と感じることにより、固まっていた思考がほぐされていく思いがする。

この本は、それぞれの作者とその歌を詠んだ時の状況も含め、その歌の背景を簡明に解説してくれる。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

鳥山百合子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

 

「字はうつくしい」 井原奈津子 福音館書店

先日、土佐町小中学校で英語を教えているエヴァンさんと話す機会がありました。

「昨日の夜、部屋にこれが出たんだよ!」エヴァンさんが見せてくれたのはムカデの写真!

どうやって捕まえたらいいのか聞かれたので「火挟で挟んで、油を入れた瓶に突っ込む」と伝え、さらにムカデが出なくなるおまじないも教えました。

紙に「茶」という漢字を書き、上下逆さまにして壁に貼るという非科学的なおまじないです。(調べてみると「ムカデはお茶が嫌いで、「茶」の文字を逆さにして貼っておくとお茶がこぼれるから、そこにはムカデが入ってこない」という説があるそう)

「 Amazing!」とエヴァンさん。英語圏で生まれ育ったエヴァンさんにとって漢字はとても興味深く、面白く、美しいものとして見えるようです。そして「書き順や何通りもある読み方が難しいんだ」とも。

この本には手で書いた色々な種類の文字が出てきます。漢字、ひらがな、カタカナ…。同じ文字でも書いた人によって文字の佇まいが違います。文字を通してその人の人柄まで伝わってくるような。懐かしい人や大切な人に手紙を書きたくなってきます。

エヴァンさんも筆を持ち「茶」と書きました。実に味わい深い文字。きっと、もう二度とムカデは出なくなるはずです。

2つ並んだ「茶」の文字。アメリカで生まれ育ったエヴァンさんとここ土佐町で出会えた不思議とご縁を感じました。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

山門由佳

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「作家の猫」 平凡社

のっぴきならない事情で、居候していた猫を手放しました。その猫とは忘れもしない不思議な出逢いかたでした。

息子がクリスマスプレゼントに「猫がほしい」と話した30分後に、家の駐車場にその猫は現れました。息子もそれには驚き、サンタさんってほんまにおるんやなぁ!と大喜び。それから、その猫との暮らしがはじまりました。

その昔、実家で飼っていた猫達に何度となく痛い目に合わされた経験があり、猫を飼うことに対して正直あまり気が進みませんでした。突然現れたその猫に対しても【飼う】というより【居候している】といった一定の心の距離を保ちつつ暮らしていました。

先日。その猫を新しい飼い主に引き渡すとき、息子は当然渡したがらず必死の抵抗をしましたが、私はわりとあっさりとした気持ちで見送れました。それから10日ほど経ち、新天地で暮らすその猫の様子を見にいく機会があり、のびのびとした環境で幸せそうに暮らすその猫を抱いたとたん、えも言われぬ寂しさに襲われたのです。猫の新たな幸せを確認したと同時にもう本当にここへ戻ってこないこと、もう気軽に抱いたり、撫でたりできないということに遅ればせながら気づいてしまったのです。

そこからずーっと車内で猫の話をしつづけ、ケータイのカメラロールに写った猫の写真を見返しまくり、仕舞いにはすこしリアルなつくりで重みのある猫のぬいぐるみまでポチッていました。。。 ‥わたし、こんなに猫好きやったん。。。?

『猫には不思議な魅力がある。』 よく言われるその言葉どおり魔力にかかった人たちをたくさん見てきて、なにより自分の父は取り憑かれたかのように猫に執着し、今まで自分はその呪いにかからず済んでいたのに、猫を失って強烈に自分にもその言葉の意味を知る日が来てしまうとは、、、 その猫は天井裏を走っていたねずみを一掃し、子どもたちの遊び相手、孤独を慰め、息子が一人で留守番、トイレにいけるようになったのもその猫のおかげです。短い時間にたくさんのものをわれわれに与えてくれました。心より感謝です。

そしてまた大の苦手なねずみが現れないかとビクビクする私に戻り、家のそこかしこに確かに存在した痕跡と残像、在宅時間が長かった者どうしの二人だけの思い出に浸りながらいつかまた猫と暮らせる日を夢見て、ひざにポチった猫のぬいぐるみを乗せてページをめくるのです。

ありがとう、どんち。 さよなら、どんち。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

鳥山百合子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「木はいいなあ」 ジャニス=メイ=ユードリイ著, マーク=シーモント絵,さいおんじさちこ訳 偕成社

「木はいいなあ」。木がそばにあるとどんなにいいか、この絵本は教えてくれます。

葉はそよ風の中で口笛を吹くし、枝にのぼると遠くの方が見える。りんごの木だったら、木にのぼってりんごを取るし、ブランコだってつけられる。こかげを作ってくれて、お弁当も食べられるし、家を守ってくれる。

山に囲まれた土佐町ではさまざまな木が見られます。杉やヒノキ(春は花粉でなかなか大変笑)桜や欅、コナラや桃やネムノキ…。花を咲かせ、山に色を加え、めぐる季節を教えてくれます。

あちこちに気持ちの良い散歩コースもあるし、少し標高の高いところに行って木々の間を歩いて深呼吸、これも最高です。頭のてっぺんからつま先まで、澄んだ空気が通り抜けていきます。

「木はいいなあ」。心から同感です。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

山門由佳

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「ニッポン 最高の手しごと」 テリー・エリス✕北村恵子  光文社

 土佐町で織物を織っている友人、上土井恵子ちゃんの作品を見せていただく機会がありました。

今まで織物を織っている友人に出会うのは初めて。タテ糸とヨコ糸を「経糸、緯糸」と表すことも初耳というくらい織物初心者の私にとって、彼女の織物の説明を聞き、交じり合う織り目の面白さにすっかり魅了されました。そこで私が発見したのは、織物の裏側にその作者の「素」の姿を感じられることでした。

実は煎餅も裏側に、いろんな情報が表れます。手焼きなのか、機械焼きなのか。職人がどのようにタネ(生地)を乗せたか、まで…。 表向きのよそゆきの顔から、裏側の「すっぴん」をみせてもらうことで、より一層その作品を身近に感じられます。

手織りならではの不均一な織り目と草木で染めた優しい色合い、紡ぎ糸ならでの太いところと細いところのある、決して機械にはだせないそのリズムに温かみと人間味を感じて愛おしくなります。それは人間の手でつくりだされた民藝や工芸のすべてにいえることだと思いますが、その歪さ(いびつさ)こそ人間そのものの姿であり、そこに心が宿り、美しさを感じます。

著者のテリー・エリスさんと北村恵子さんのお二人が日本各地のものづくり作家の工房を訪ねてゆく著書。作品の裏側にある物語を聞き、時代やその土地の文化やバックグラウンドを調べ、それが生み出される現場に足を運ぶことで、強い「存在感」を放つ本物を見分けるお二人のものを見る目、美しさのものさしには感銘を受けます。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

鳥山百合子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「はるかぜさんといっしょに」 にしまきかやこ こぐま社

山のあちらこちらに桜色が加わり、時々ウグイスの声も聞こえるようになりました。土佐町はもうすっかり春です!

春らしい風を感じながら歩いていると、足元にはたんぽぽ、オオイヌノフグリ、なずな、つくし、桃。庭先にはムスカリやチューリップ。色とりどりの花たちが、足取りを軽くしてくれます。

この絵本の主人公「こんちゃん」は、ふーっと風を吹かせる「はるかぜさん」と出会って、はるかぜさんについていきます。このはるかぜさん、何とも気持ち良い風を吹かせているようで、いつの間にかこんちゃんに続き、町の人たちも長い長い行列に。歩いて歩いて、みんなでたどり着いた丘でひと眠り。

ああ、いいなあ!私もこんな丘で、大の字になって寝てみたい。

春は、心も身体も開いていく季節なのだそうです。人間をそうさせるのは、はるかぜさんが新たな気持ち良い風を運んできてくれるからかもしれないですね。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

山門由佳

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「軽井沢 はじまりの森暮らし。」 morinoie  文藝春秋

その響きを聞くだけで、優雅な気持ちになる不思議な地名というものがこの世にはあります。『軽井沢』 はい、優雅です。

でもこちらの著書を読んで、そこに家を構えた人の暮らしを読んでいると、ん?土佐町での暮らしとそう変わらないのでは?と感じる部分もあります。 軽井沢も豊かな山と森の恵みを受け、田舎ならではの不便さや大変さも土佐町と似ています。

ただ軽井沢が大変羨ましいのは薫り高い文化にも触れられ、美味しいレストランがたくさんあり、自転車で走り回れる土地だということでした。

−文化が醸される街の条件は、川が流れていること、そして平地があることだと言われる。それらをいずれも満たす軽井沢は、だからこそ豊潤な文化が育まれ、自転車でスイスイと走れる、どこか開かれた軽快さがある。なるほど〜

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

山門由佳

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

 

「谷内六郎のえのぐ箱」 東京新聞

かつての週刊新潮の表紙絵を担当した谷内六郎さんの絵は、誰しもが一度は目にしたことはあるのではないでしょうか?

六郎さんの描くこどもの絵は素朴で、いつだって子どもの世界とおなじ目線。こちらの著書に子煩悩で、二人の我が子の育児にも熱心だったご様子が記されてありました。

子どもたちと同じ視点で世界を見つめ、本気で遊び、いつでも全力で子供の言葉に耳を傾け、あらゆる体験を感動を持って迎え入れた六郎さん。それは「子どもと向き合う」というより、まさに「子どもと同じ方向を向いて生きる」日々。六郎さんにとっては、自身の子ども時代を追体験するような感動と発見に満ちた暮らしなのでした。とあります。

六郎さんの描く子どもたちは、時間がゆったりと流れ…日常のちいさな発見と暮らしの営みがなんとものどかで懐かしい気持ちにさせてくれます。

つい時間や用事に追われて「早く!早く!」とわが子を急かしてしまうけれど、あっという間に終わってしまう子供時代、すべての子どもたちがのんびりと情緒豊かに過ごしてほしいと願います。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

田岡三代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「これは、アレだな」 高橋源一郎 毎日新聞出版

高知新聞の「小社会欄」に取り上げられていたので、さっそく購入。

先ず作者欄を見ると、私より1歳上の方、いわゆる同年代。

実はこの本に紹介されている、別の作者の「本」に興味があって購入しました。そして、今、私が一番必要としている「本」を続いて購入。

それにしても、この本の中にはたくさんの本が紹介されています。

しかも、当然、中身を熟読されていて、「これ」と「アレ」、昔にあったことや、考えられていたことと、現在起きていることの相似性をうまく対比させているエッセイ。

本の帯に「新旧話題作の”ツボ”がわかる痛快エッセイ」と書かれてある通り。

・・・まさにそれ!・・・

 

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone