西野内小代

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「僕が恋した日本茶のこと  青い目の日本茶伝道師、オスカル」 ブレケル・オスカル 駒草出版

「YOUは何しに日本へ?」という番組で紹介され、ライフワークとしての位置づけで日本茶と真摯に向き合い、単なるクールジャパンに憧れた人ではないと印象づけられていた。
その後を追う企画をたまたま観てビックリ!その決意通り会社を立ち上げ、グローバルに活躍されていた。本も数冊出版し、今や静岡から東京へと進出している。

日本人がないがしろにしがちな日本茶をもっと大切にするべきだと日々奔走している。この本ではその行動の過程・お茶の銘柄そして産地や背景なども紹介している。
100g一万円のお茶はウィスキーと比較してみると決して高い訳ではないと言い切る。
容姿の端麗さも読者を引き付ける要素の一つとなっているだろうが、お茶に関する資料を読み解くために日本語を習得し、漢字も使いこなす。
頭の下がる思いです。この本で評価の高い秋津緑という銘柄に出会ったら飲んでみたい!と本を閉じた。

 

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私の一冊

西野内小代

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「ホテル・ピーベリー」 近藤史恵 双葉社

高知新聞の記事下広告にこの本が載っていた。
作者の名前が気になり金高堂書店へ赴く。もちろん同姓同名に過ぎなかったのだが…。

舞台がハワイ島らしいので、そちらにも興味があり読み始めた。事情があり、小学校の教師を辞職した20代の男性が主人公。友人に勧められたリピーターお断りの曰くありげなホテルに長期滞在の予定で、自分探しのような旅に出る。

鬱屈した青年の内面描写のように始まる。そしてある日、宿泊者の一人がホテルのプールで溺死し、ミステリー小説へと変貌する。謎だらけの中、何かを知っていた2人目がバイクで事故死。オーナーはホテルを閉じるので予定を繰り上げて退去するようにと通告してくる。不審な気持ちを抱きつつ帰国する。

4ヶ月後に再びハワイ島ホテル・ピーベリーへと向かう。謎解きは一気呵成、緻密な伏線が張られていた訳でもなく、日本で調べた事実を元に解決へと導く。こうして主人公の1泊2日のハワイ島再訪の旅は終わる。

少し消化不良の感は否めないが、ハワイ島の情景・空気感がさらりと描かれており、旅した気分にさせてくれた。

 

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土佐町森地区は、ざっくりと説明するならば樫山・南泉山・ワレイ山に囲まれた盆地である。もっとも私の個人的見解であるが…。

私の実家から見える樫山は、扇方をした穏やか極まりない平面的な山である。

この樫山は私にとって天気予報のようなお山であった。夏休みになると川へ泳ぎに行く前に必ず眺める、けぶったように見えれば、1時頃からかなりの確率で雨!用意した浮き輪・バスタオルの登場は今日はなし、明日のお楽しみである。

 

春と秋は何かというとワレイ山へ登った。(未だにこの山の漢字がわからない、和霊かと勝手に考えている)

急峻なくねくね坂を抜けるとやがてなだらかな尾根沿いの道、広葉樹からこぼれてくる太陽に幸せを感じつつ先を目指す。少し開けた所が目指す山頂のすぐ下、右に一気に駆け上がる。征服感満載で一人前に腰に手をあてて森の集落を見下ろす。心潤す瞬間である。

南泉山へは現在でもトラウマとなっている板の一本橋「はしとこ」を渡らねばならなかった。冬は夕日に美しく照らされ、てっぺん近くの家は神々しいばかりの光に包まれていた。屋号のように呼んでいたのは「そら」。

現在は木々が生い茂りワレイ山を下から望むことはできない。どこがそうだったのかも断言できない。夕日を独り占めしていた「そら」の家にも前ほどは日が当たらないそうだ。

樫山だけは今でもどこに居ても視界に収めることができる。見る角度により全く違った山の雰囲気となるが、安心して眺められる唯一の山かもしれない。

樫山近辺から森中学校に自転車通学していた級友達を時々思い出す。

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私の一冊

西野内小代

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「元彼の遺言状」 新川帆立 宝島社

テレビドラマ化され、不思議なテーマが気になりつつほとんど寝てしまい、何が何だか分からずじまいとなった。スッキリするべく原作を購入。目の回るような画面展開を気にすることなく、自分のペースで謎解きを理解できた。

買収した会社が実は問題だらけだった。後々に禍根を残さないように周到に計画された遺言だった。一見辻褄が合いそうにない珍妙極まりない遺言が、実は未来をみすえた措置であったと若き女性弁護士は見抜く。

主人公の女性弁護士はお金の亡者である。しかしながらお金以外にも大切なことがあると気づき始める。その微妙な心の変化も見逃せない。

 

 

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西野内小代

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「ほとけさまが伝えたかったこと」 岡本一志 三笠書房

先日、AI(人工知能)の本(コミック)をお借りして読んだ。

AIが「心」を持つというコンピューターとしての重大な欠陥の為に、処分の対象となってしまったという内容だった。この場合の「心」とは、慈しみなど善に焦点を合わせている。

「ほとけさまが伝えたかったこと」では、人間が本質的に持っている悪の心の部分を矯正していく(仏教では修行)という事に主眼を置いている。

悪を乗り越え、善になるのか…。そもそも善であったはずが利己的な部分に浸食され悪の要素で満たされていくのか…。

AIに善の心を求めてしまうこと自体が、自分の心の弱さの現れなのかもしれない。

人生、修行あるのみかな?

 

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西野内小代

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「世界の王室うんちく大全」 八幡和郎 平凡社

華やかな英国王室、美しいモナコ王妃(正確には公妃らしい)、王室離脱の醜聞等報道機関からの情報は限られている。

世界各地の王室の成り立ち、終焉等の詳細な経緯が記述されている。

王室の起源、変遷を可能な限り遡り現代へと繋げている。似たような名前がズラリと並び混乱してくるが、お勉強をしている訳ではないのでサラリと読み流す。

王室の内幕を垣間見た感ありの一冊です。

 

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「水上バス浅草行き」 岡本真帆 ナナロク社

俵万智さんの「サラダ記念日」以来の短歌ブームだと知り、四万十出身の岡本さんの短歌集を買ってみた。短歌集としては大変な売れ行きらしい。

『深すぎるお辞儀でひらけランドセル スーパーボールスーパーボール』

小学校1年生の時の出来事、病身な母はいつも寝ていて、私のお人形さんの服などを手作りしながら帰りを待っていてくれた。

ある日珍しく父親も側にいた。子供の扱い方が苦手な父親は、からかうかお説教が会話だった。

「ただいま」と言っていつものように母親の側にランドセルをおろすと、父親は「中に何も入ってない」と言った。その言葉を鵜吞みにし家を飛び出し学校へと引き返した。学校に到着する直前母が追いついて来た。心臓が悪く安静にしていなくてはいけなかった筈なのに、寝巻を着かえて追いかけ迎えに来てくれた。

私はだまされたのだった。切ない思い出が蘇った。

 

『水上の乗り物からは手を振っていい気がしちゃうのはなぜだろう』

隅田川の水上バスに小学生の孫と乗船した時、橋の下を航行する度に橋から見下ろしている人達に手を振っていたのをホンワカと思いだした。

自分の経験した事柄に近い短歌には、とても共感できる。

 

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「中先代の乱  北条時行、鎌倉幕府再興の夢」 鈴木由美 中央公論新社

鎌倉時代から室町時代への過渡期、歴史の推論と事実との整合性について古文書などを根拠に追求した書籍です。

北条氏を先代、足利市を当御代と呼び、その中間にあって一時的に鎌倉を支配したことから「中先代の乱」と言われる。

鎌倉時代が終わり、南北朝時代を経て室町幕府の成立へと移行、詳しくは把握していなっかたけれど、北条氏の抵抗はなかなかしぶとかったとこの本を読んで理解した。潔く自害するのが武士の世界と思いきや、何度も逃げて再起を誓う。まさしく北条時行はそういう人物。

たった20日間だけではあったが鎌倉を奪還した事実には、彼のリーダーとしての資質に感服する。

ただ享年25歳、人生のほとんどを一族再興のために戦ったと思うととても切ない。

 

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西野内小代

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宝島(上・下)」 真藤順丈 講談社

返還前後20年の沖縄が舞台。

オンちゃんと呼ばれる英雄・豪傑をリーダーとした4人の戦果アギヤー(単なるコソ泥ではなく、戦果をあげて必要とする人々に届ける義賊)が、アメリカの基地から物資を盗み出し世界一の軍隊をキリキリ舞いさせていくという物語で始まる。

そしてある日の嘉手納基地でのアギヤーで状況は一変する。

オンちゃんが行方不明となりそれぞれが傷つき、恋人は狂人のごとき執念でオンちゃんを探し続ける。親友と弟は劣悪極まりない留置場で数年過ごすこととなる。

数年後、3人の幼馴染は教師・警察官・テロリストとなりそれぞれの角度から理不尽極まりない統治下の沖縄を変えていこうと挑んでいく。

様々な伏線が張り巡らされ、史実も組み込まれ、それらが最後でピタッと一点に交わる。

皮膚の質感、大気の湿度ある濃密感、細部に至るまで克明に書き込まれていて50数年前の沖縄が現実として認識できる。

改めて戦争の悲惨さ、敗戦国への理不尽な仕打ちを痛感。

5月13日の高知新聞に次のような作者のコメントがあります。「物語にはジャーナリズムとは違う形で読者の琴線に触れられる機能がある」

戦争状態の地域の悲惨さを報道よりも更に実感できた。

 

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私の一冊

西野内小代

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全米トップ校が教える自己肯定感の育て方 星友啓 朝日新聞出版

「自己肯定感」という言葉に引かれ手に取った。

満足感のある経験もしてきたはずなのに、ふと蘇る思い出にマイナス思考に陥り、心のモヤモヤ・自尊心の喪失、だんだん落ち込んでいく。常々こういった自己否定の感覚に見舞われ俯きがちになる。

成績の向上、金銭的な裕福、これらは外発的な報酬であり、おまけの報酬であって、これによる満足感は長くは続かない。よって自己肯定感は育たない。

これとは対照的に内発的な満足感による自己肯定感は持続可能である。

ネガティブな気持ちは無理矢理忘れようとしてはいけない。

自分の気持ちを抑え込みがちな人は、疾患による死亡リスクが30%高まり、癌になる確率も70%上がるという研究結果がハーバード大学などにより報告されているそうです。

人間は反省の生き物であり、反省しないことには次のステップでの向上はない。そのようにして人類は成長し、豊かな心を育んできた。自己否定・反省は厳しい進化を生き抜く上で一人ひとりのDNAに刻まれてきた大切な能力の一つであると肯定的に捉えるべきである。

自己肯定感の育て方が幾通りか提案されていて「優しさ」がキーワードになっています。

 

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