「八月十五日に吹く風」 松岡圭祐 講談社
「軍人に限らず夫人や子どもを含む一般市民に至るまで、日本人は自他の生命への執着が薄弱である。軍部による本土決戦および一億総玉砕、一億総特攻に誰もが抵抗なく呼応している。本土決戦において婦女子を含め、非戦闘員が戦闘員となりうる。日本への上陸作戦は、米軍兵士に多大な犠牲が生じる。」
太平洋戦争時、アメリカの日本人についての分析としてこのように記された書類が、原爆投下の最終決定に大きく影響したようです。占領後も、死をも恐れぬ日本人の反撃を警戒していたアメリカ軍は、きびしい占領政策を実施しようとしていた。
後のイラク戦争終結後、米軍は治安維持部隊を組織し、ゲリラとの戦闘を続けたことと同様であったかもしれない。
しかし、ある報告により、進駐軍は見解を180度変え、日本を武力で制圧する方策はとらなかった。
その理由となる報告とは…。
1943年、キスカ島での人道を貫き5000人の救出を成し遂げた、一見弱々しくも見える木村昌福少将のとった作戦とは…。
これは実話であり、登場人物も全員実在する人々です。
この本はむごい戦争の事実と、その最中、重い任務と重責を負わされながらも戦わずして尊い命の救出を成し遂げた感動の一冊です。
藤田純子