山門由佳

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

山門由佳

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「山ちゃんルーレット」  山門修平 新風舎

この本は若かりし頃、出会うずっと前の20代はじめの夫が書いた本です。若気の至り、若さゆえのノリと勢いで20万円だけ持って世界一周しようとした海外旅行記。

この本のことはもう彼にとってはとっくに過去の葬られた記録として見向きもしませんが、今改めて読み直すと彼が一人で自由に生きてきたこと、一所懸命毎日を過ごしていた様子が伝わってきます。内容は息子や娘がいつか大きくなったときに読んだら、ゲッてなる(親ゆえに余計に)内容も多々含まれてますが、きっともっと大きくなったとき読めば、おもろい親父やったんやなぁ〜って思ってくれるんじゃなかろうか?どうだろか。汗。

大阪から船に乗って上海へ、歩いてベトナムの国境をまたぎ、バスに乗ってタイ入り。インド〜トルコからの飛んでアイスランド、イギリス&スペイン、スイス…新潟。途中、もちろん資金は底をつきレストランで働いてお金をつくったかと思えば、ボラれてお金を失ったりさまざまなトラブルに遭いながらもその倍以上に現地でたくさんの人に助けられ、素直な気持ちでその時その時を綴ってます。(文章めちゃくちゃだけど)

私も一人海外旅行が好きだった人間ですが、彼のようなハードな旅は出来ませんでした。でも、旅をしている時間は、人生を凝縮したような濃い時間が流れる気がします。見知らぬ土地で独り、いろんなことを考え、いつもいる日本での生活を離れてみることによってわかること大切なひと、そして自分自身が見えてくることがたくさんありました。

ちなみにこの本を出版するにあたり借金した彼はその返済のため北海道で漁師のバイトをし、滋賀で銅を精製?するバイトに打ち込んだそう。 昨年は、家族みんなで北海道でお世話になった船頭に会いに行く旅に出かけました。どうやら山さんルーレット、まだまだ旅の途中のようです。

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「全国駄菓子屋探訪」 土橋真 トゥー・ヴァージンズ

土佐町のおとなりのまちに駄菓子屋さんができて一年が経つ。

一周年とは思えない味のあるお店で、息子も娘もそのお店が大好きです。 ……… 自分も子供の頃、近所の小さな駄菓子屋のおばあちゃんとおじいちゃんが大好きで、今でもはっきりその二人のやさしい眼差しと笑顔が思い出せます。

子どもの頃に出逢った大人達は大きくなってから出逢った人以上に心に残るような気がします。子どもは自分に優しいか否かの大人を瞬時に見抜く力があるような。その能力はきっと自分を守る力につながってるような。 駄菓子はカラフルでウキウキするユニークなデザインで心をつかみ、所狭しとびっしり並ぶ様は夢のよう。

セルフレジとは対極にあるおばちゃんやおじちゃんが一個ずつ一円単位の細かい計算をしてくれ、子ども達と何気ない会話を交わす。そんな駄菓子屋さんで過ごすひとときは子供時代の宝物だと思います。

実は、土佐町には駄菓子屋さんではないけれど、お菓子があっていつもニコニコ笑顔のやさしいマダムが迎えてくれる場所があります。その空間は老若男女にとってオアシスで、そこを訪れた誰もが生きる活力をもらえます。

そんな場所に出入りする子どもたちをみて、駄菓子屋さんが町になくてもそれ以上に幸せな子供時代を過ごしてるなぁ~とほほえましく思うのでした。

 

 

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山門由佳

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「電車でめぐる富士山の旅」 甲斐みのり 株式会社ウェッジ

2024年の24は【フジ】とも読めることに気づいてしまいました。

今年40歳の節目を迎え、人生も折り返し地点か、、、なにか心に残るセレモニー的なことを…そうだ富士山に逢いたいかもしれない。山に囲まれ暮らしていると、日本一の富士山とは一体どんな大きさなんだろう。富士山に登りたいというよりも、富士山の大きさが知りたい、富士山を眺めながら暮らすまちはどんなものなのだろう? そんな4歳児のような素直な気持ちと疑問を40歳が抱きつつ、今年は富士山に逢いに行くことが目標です。

富士山のお膝元・静岡県富士宮市で生まれ育った著者が富士山の旅を提案するガイド的著書。

 

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「ルナティック雑技団」 岡田あーみん 集英社

漫画をすっかり読まなくなって久しい今日このごろ。小〜中学生の頃はよく読み、よく買っていました。たくさん持っていた漫画も大きくなって全部売り払い、それは服や靴や遊びに使うための資金に替わりました。 でも、唯一手放せなかった漫画、、、それはこの『ルナティック雑技団』です。

この漫画の風変わりで高すぎるテンションと濃すぎる登場人物…こんな漫画はそうそうなく、この世界観を理解してくれる友もそうそう居なく(笑) この『ルナティック雑技団』が好きな方は一報下さい…! 嬉しいです、握手しましょう!!!

カリスマ性が凄い孤高の貴公子、14歳の天湖森夜くんを巡って巻き起こる事件の数々と彼を取り合いする女達(特に彼の母親、ゆり子がこれまた強烈キャラ)の学園物語。 こんなサラッとした説明では終わらないような漫画なんですけどね。 説明のしようがない感じです。

 

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「小学生のことわざ辞典」 学習研究社

目は口ほどに物を言う  住めば都 備えあれば憂いなし  知らぬが仏  安物買いの銭失い… シンプルな言葉と少ない文字数で深〜い意味のある言葉を生み出した昔の人はなんて凄いんだろうとしみじみ思います。

ことわざや慣用句を好きになったのは、まちがいなくこの本のおかげで、小学生のころに買ってもらったこの本は今では宝物です。イラストとその色使い、人物の表情がなんとも昭和で、このイラストに惹きつけられて小学生のときボーッと眺めてました。そのおかげかなんとなくことわざや慣用句が頭に残っていて、ついつい今でも会話のはしばしにことわざや慣用句を使いがちな私です。

ひとことで納得できる強い言葉たちです。 魔法の呪文のような。 息子には「猿も木から落ちる やで!」 娘には「内弁慶の外地蔵やなぁ〜」 夫には「早起きは三文の得って言うやろー」 母には「老いては子に従えって言うやん?」 などと魔法の呪文を唱えて、日常生活にフル活用している私の人生は【一難去ってまた一難】、、、いえいえ【渡る世間に鬼はなし】でございます。

 

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「一緒に生きる 親子の風景」 東直子, 塩川いづみ 福音館書店

育児本のタイトルはやけにインパクトがあって、“〜歳までに◯◯できる子に”など焦りを感じさせながら悩み多き母の弱みにつけ込んだ題名が多いような気がしています。でも、大抵そういった本を読んだあとは余計に空回りする自分に気づいたのはいつからでしょうか。

【育児】という答えがありそうでないジャンル。 気合を入れて、絶対にうまくいかせないといけないような気にさせる強迫観念のマジカルワールド。

子育てを終えた著者の温かい目線、思い出のエピソード、育児に対しての考えを読んで心に明かりがぽっと灯されました。育児は毎日がワイルド&ハード。 弱りやすい母親に本当に必要なのは 『心配しすぎなくてもいいんだよ』 というやさしいメッセージ。この本にはそんなやさしさが詰まっています。たくさんのお母さんに読んでもらいたいです。

もうじき私も幼児期の子育てを終えます。

−うれしくて、さみしい。よろこばしくて、かなしい。

−長い人生からすると、とても短い期間なのに、育児の最中は、永遠に続くしんどい時間のように感じることもあった。必ず終わってしまう時間なんだよ、もっと楽しみなさいよ、とあのときの若い自分に耳打ちしたい。

−子どものときの時間は、最もおもしろくて、楽しくて、貴重で、大変で、不安で、辛くもあった いろいろあって、いろいろ終わって、そして、二度と戻らない時間なのである。

どれもこれも胸を打つ文章に、たくさん励まされた本でした。 出逢えてよかった一冊です。

 

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「97歳 料理家 タミ先生の台所 おさらい帖」 桧山タミ 文藝春秋

タミさん。わが娘と同じ名前ってだけですでに親近感を覚えます。 福岡で生まれ、現在大分の山奥で暮らされています。 60年という長きにわたって、日本をはじめ世界の家庭料理をたくさんの方々に教えていらっしゃいました。

こちらの著書にはタミ先生愛用の道具、鍋や器にエプロンまで、台所にまつわる品々が紹介されています。

まずはタミ先生の代名詞ともいえる銅鍋の紹介からはじまり、おひつ(冬場は藁いずみという籠におさめて保温する)、梅干しやお水や塩をいれるそれぞれの壺、サラシや竹皮を日常使いする暮らしは 《料理をつくること。 実はそれは地球環境と台所は深く繋がっている》というまさかの事実にもはっとさせられました。

スーパーに行けば、簡単に早く出来上がる便利な商品やプラスチック製の安価な商品が溢れています。自然素材でつくられた昔ながらの道具をひとつでも取り入れたら、きっとその使い心地になにか気づきがあるかもしれません。

わたしはこの本を読んで、火鉢をはじめてみました。 −『わたしは宝石よりよい鍋が好き。鍋なら家族みんなが温まるから』

 

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「高知 アヴァンギャルド」 東京ニュース通信社

書店に入ってすぐの一番目につく棚にバーン!とずらずら並べられたこちらの雑誌?いやガイドブックに手をとらないでいるほうが難しいほどに冴えたデザインに目を奪われました。そしてページをめくると、なみなみと溢れる高知のディープな面白さ… そう!わたしはこのラテンで濃厚な感じに惹かれて引っ越したんだったってことを思い出しました。

高知県はすばらしい大自然と共に生きる人々の温かさ、細かいことは気にしない器の大きな県民性に魅力を感じています。そんな高知県人の方々がつくりあげた場所やお店に商品、カルチャーがたくさん紹介されています。

なかには訪れたことのある場所や店、食べたことのある品、話したことのある人が載っていました。まちがいなくその方々、品々、場所場所はどれもナイスで素晴らしいので、きっとこのガイドブックの情報に間違いはございません…。

さっそくこのガイドブックを手に南国市にある『白木谷国際現代美術館』を訪ねました。載っていた写真の作品は想像をはるかに上回るスケールで、そこからたちこめる熱量に圧倒されました。 館外にある作品群は、山や川の自然と共生&共鳴しながらもびんびん伝わってくる生命力の塊のような作品でした。

鑑賞し終わったあと、作者でいらっしゃる武内光仁さん御本人が作品とは裏腹に穏やかにたたずみ、そのそばでやさしく微笑まれている奥様はガイドブックの写真どおりでありました。そして淹れてくださった珈琲をいただくひとときに、まさに《高知》をひとしお感じました。高知県は自然と、情熱と、やさしさでできています。

 

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「セツローさんの随筆」 小野節郎 信陽堂

 高知県香美市のお山に暮らす布作家・早川ユミさんのお舅さんにあたる小野節郎さんの著書です。

早川ユミさんの文章を読んでいるとたびたび出てくる『セツローさん』のお名前。いったいどんな方なのかしらと前々から気になっておりましたら、なんとありました。土佐町図書館に『セツローさん』の著書が。

岡山に生まれ愛媛で長くレントゲン技師をなさっていたそう。子どもの頃の懐かしい思い出話や、家族や親戚のよもやま話をのんびりとした語り口でありありと情景が浮かびます。読みすすめながら私もおもわず『セツローさん』の隣にいて一緒に時を過ごしてるような気分になっていました。

載っている挿画や木彫り、手びねりでつくられた土人形はどれも『セツローさん』がつくられたもので愛らしくそばに置いておきたいなぁとおもう作品ばかりでした。お会いしたこともないのに、親近感を感じる不思議な『セツローさん』。お会いしてみたかったです。

−幼かった日、私は幾度か垣間見たことがある。 寒い夕暮れ、漬け終わった糠の上を、母がひたひたと、手のひらで、優しく、愛おしむように叩きながら、「おいしく漬かっておくれ」「いいダイコだから、きっと、おいしく漬かっておくれね」 と、漬物に話しかける姿を。

 

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「絵本 はだしのゲン」 中沢啓治  汐文社

8月、広島平和記念資料館へいきました。近頃、元来の乗り物好きが高じて戦争や戦艦、戦闘機に興味をもちはじめた息子に戦争の凄惨さ、非道さを伝えたいと思い‥ 今の日本の多くの人が戦争を未経験であり、わたしももちろん未経験。阪神大震災を体験したから、地震の恐ろしさは伝えられるけど、戦争は経験したことないゆえにどうやって伝えればよいのか改めて「伝える」側になってその難しさを思い知りました。

ただただ【戦争はダメ!】だけでは、小さな子には伝わらない。何が起きて、何がどうダメなのか。自分自身がよく知らないとそのことを伝えられないこと痛感して、私も学ぶために広島を訪れました。

この絵本は平和記念資料館の売店で手に入れたもの。 すべての展示を見終えたあとに選んだもの。本屋さんで買うよりもっと、重い思いが詰まっています。

元気いっぱいの小学二年生のゲンの日常が戦争によって壊れていき、原爆によって家族が目の前で苦しみながら死に別れる様子、地獄のような光景を迫力のある絵と文章で綴られています。

地震は自然現象だけれど、戦争を起こすのは人間同士。今後も平和を守りつづけるには「戦争を知る」こと。まずはそこから始まると思いました。平和記念資料館、原爆ドーム、平和記念公園を歩いて、呉市の大和ミュージアムでも戦艦大和やたくさんの写真や映像を見て、われわれはもちろん息子も【なにか】を感じ得たようでした。

一ゲンのお父さんは時代や世論に流されず戦争を反対し続けたひと。 どれだけ拷問を受けようとも、考えを変えなかったひと。 「いいか、ゲン。 せんそうは、いえも 人も、すべてをやきつくし、あとにのこるのは、くるしみだけなんじゃ。日本は、せんそうを やめて、せかいの国と はなしあって、みんなが あんしんして くらせる国に しなくては いけんのじゃ」

 

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