「風の谷のナウシカ」 宮崎駿 徳間書店
ご無沙汰しております、皆様お久しゅうございます。私の1冊のレアキャラ、沈黙のゆかりでございます。
COVID-19も第1波をなんとか落ち着き、薫風を背に梅雨前の湿気を肌に楽しむ日々です。ナウシカの世界でも、火の7日間の前も後も、過ぎさる季節をそれぞれの形で味わっていたのではないでしょうか。
COVID-19の緊急事態宣言により、都会ではテレワークや休業で休みとなり、普段家族と過ごす時間の少ない人も多くの時間を在宅で過ごさざるを得なくなりました。まさかまさかそれによって、DVや虐待が増加し、ネットでの誹謗中傷の件数も増えるとは、考えつきもしませんでしたが。先日はネットでの誹謗中傷により、女子プロレスラーの方が自殺に追い込まれてしまいました。心よりお悔やみ申し上げるとともに、ネットで何かを発信する1人の人間として改めて責任を感じることとなりました。
土佐町ではその頃、ほとんどいつもと変わらない暮らしがおくられていました。もちろん、保健・衛生 ・医療・接客に関わる方々等は細心の注意を払っていらっしゃいました。小中学校、高校も休校でした。私達も不要不急の外出は控え、常にマスクを着用し、手洗い・うがいと消毒を欠かしませんでした。でも普段と同じく朝を迎え迎え夜は寝る。野も山も春。山菜を取り、農床をし稲の芽は出て、田には水がはられ、田植えをする。各家庭の畑や庭に手入れをし花が咲き乱れ、八十八夜のお茶を摘む。今日は私の部屋から蛍が飛んでいるのが見えました。私はCOVID-19が、初めからそこにいたような錯覚に囚われました。確かに病というものは幾千幾万とあり、その中に人間が罹ってしまうものがある。とすると、共存していくしかないじゃないか…と思うのです。そして何よりも恐ろしいのは、COVID-19といった病でなく、人そのものだと気づいた時、ナウシカの中に似たシーンがあったことを思い出したことでした。まだそのシーンは先なのですが…(笑)。
さて、前回のつづきから、3巻の真ん中あたりのお話からです。ユパ、アスベル、ケチャが乗った船が墜落した場所を土鬼の戦艦が発見し、蟲使いに生死を確かめさせています。そこに現れたのは"森の人"。蟲使いにとって森の人は尊び敬う貴人のです。土鬼の上官の命令を無視して退散してしまいました。そして、ユパ、アスベル、ケチャは森の人に保護され、彼らの生活に腐海のことを知っていきます。
一方ナウシカは、トルメキア軍最南端拠点土鬼サパタ土侯国の都城の、原隊に合流します。戦場の様子は圧倒的にトルメキアが不利、進路も退路も絶たれ、籠城を余儀なくされている状態でした。この拠点に配属された兵は、元々クシャナ子飼いの最速の機動力を誇る精鋭騎兵たちです。父王と兄皇子の謀略によって、己のことしか見えていない将軍の元に配属され、最前線のこの都城の守りを任されたのでした。守りより攻めることに重点を置かれた彼らにとって、それは暗にそこで死ねという露骨な厄介祓いでした。そこにクシャナが合流したことで、彼らの目には生気が戻りクシャナ自身もまず目標への1歩を踏み出せたようで瞳に強さが漲ります。
一方ナウシカは捕虜にされたサパタの人々を目にします。トルメキア兵は、捕虜を本国で売り、奴隷として労働力にすると言います。そこにはどんな正義もなく、ナウシカはクシャナにサパタの捕虜を解放するよう直訴します。クシャナは解放する旨の書類になんの躊躇いもなくサインしますが、『手を汚すまいとするお前の言いなりになるのは不愉快だ 戦友としての忠告ならきかぬでもない』と言い放ちます。私ここで(さすがクシャナ殿下!!)と感動してしまいます。サパタの人々を捕虜にしたのはクシャナの部下たちです。そこにどんな正義があろうともなかろうとも、何かしらの代償をはらわなければ、今まで戦った部下たちに申し訳がたちません。クシャナ自身が部下2000人の命以外に興味が無くとも、戦友の忠告という大義名分が必要だったわけです。しかしながら、ナウシカの類まれなる戦闘力や不思議な力を知るクシャナが、サパタ攻略にナウシカを出陣させないはずはないので、冷酷無慈悲な"白い魔女"の異名は伊達ではないなと感心しきりです。
さて、戦闘シーンは割愛します。理由は簡単。私ごときの文章力で説明するとめちゃくちゃダサいからです。無粋です。
ただナウシカは、ここで正気のまま人を殺し(以前は怒りで我を忘れていました)、今まで共に居たカイを失い、深く傷つき心に晴れることのない影を抱くこととなります。そして4巻の冒頭で、ナウシカは深い悲しみに溺れてしまう前に、テトと共にメーヴェで舞い上がりました。ナウシカは人の醜さを自身の罪深さを知ってなお、まだ先を見すえて命と向き合って進んでいきます。王蟲の言う南の森の謎と大海嘯を鎮めるために。この先で多くの命が失われることがないように。自分の心の奥底に影を抱きつつも、前に前に飛んでいきます。
ではこの辺で、筆を置きます。また次でお会いしましょう。
何時になるかは…悪しからずお待ちくださいませ(笑)
最後に…
COVID-19と戦う様々な分野の方々に深い感謝を。失われた命にどうぞ安らぎを。