「ゆうこのあさごはん」 やまわきゆりこ作,絵 福音館書店
きっと多くの人が、この本の作者・やまわきゆりこさんの絵を目にしたことがあると思います。やまわきさんが絵を、やまわきさんのお姉さんである中川李枝子さんが文章を書いた「ぐりとぐら」や「そらいろのたね」はあまりにも有名です。お二人の著書は懐かしい思い出と共に、私の本棚に何冊も並んでいます。
この「ゆうこのあさごはん」は、やまわきさんが文章と絵の両方を担っています。
このお話は簡単に言うと、朝寝坊をしたゆうこが朝ごはんの「ゆでたまご」と冒険に出かけて帰ってくるという内容なのですが、このお話を面白くしているのは、ゆうこが卵と同じ大きさになるためのおまじないの存在です。小指に塩をほんの少しつけてぺろりと舐めると、あら不思議!ゆうこは卵と同じ大きさになりました。そして、卵はにっこり笑って言うのです。「“びゆことおし”のまほうさ!」。
少し前にこの本を読んだ時、このセリフを聞いて「???」となった末っ子。最後まで読んで「“びゆことおし”を反対から読んでごらん!」と伝えると「し・お・と・こ・ゆ・び…。塩と小指!そっか!!」。謎が解け、晴れやかな顔をしていました。
冒険から帰ってきた後、元の大きさに戻る時には「びゆやおとおし」。そう、今度は親指に塩をほんの少しつけて、ぺろりと舐めるのです。
出かけて、ちゃんと帰ってくる。この安心感はなんでしょう。やまわきさんの子どもたちへの優しいまなざしが伝わってきます。
この本は、私が幼い頃にも母が繰り返し読んでくれました。何十年も読み継がれている本の底に流れているのは、作者の愛情そのものではないかと思っています。
鳥山百合子