南国高知と言われておりますが土佐町の冬は雪も降るなど寒い地域です。
主に夏秋栽培(夏・秋に出荷物を栽培する)の地域であり、夏には米ナス、ししとう、カラーピーマン等を中心とした野菜が多く栽培されています。それに比べて冬場は寒さも厳しく生産物は夏・秋に比べて極端に少なくなります。
今回はそんな冬場でも、地元で愛されている秦泉寺夫妻の愛情のこもった手作り『干し芋』を紹介したいと思います。
丸一年かけてつくられる
土佐町の中心地より山を登ること15分、土佐町の南東に位置する溜井地区。
集落のほとんどは山間部斜面に位置しており、秦泉寺ご夫妻のご自宅もそんな山々に囲まれた標高500mほどの場所にあります。
護さんで3代目となる農家さんで、お米や四季折々の様々なお野菜を栽培しています。その中の冬のメインの出荷物が干し芋。
製造・出荷時期は冬場の1-4月までの約4か月です。
しかしながらこの絶品の干し芋は、商品になるまで実に一年の期間を要します。
春に旦那さんの護さんと息子さんが土佐町産のたい肥や有機肥料を使い、しっかりと土づくりをした圃場(野菜を作る場所)に紅はるかという品種のさつま芋を、ご夫婦で一本一本丁寧に手作業で定植します。
雑草対策やしっかりとした栽培管理をしながら暑さの厳しい夏を乗り越え、秋にいっきに掘り上げます。そのお芋たちを冷暗所でじっくりと2か月間寝かせます。
お芋からじんわりと芋蜜が出始める年の瀬になると次は奥様の操さんの出番です。
寝かせることで甘さが増したお芋を冬の寒さで手先がかじかむ中、地域のお母さん達と手作業で一つ一つ余分なところを切り落とし、皮を剥き、釜に入れます。
この釜の作業にも秘密があり、水以外に一切何も入れません。しかしながら芋からでる蜜が水に溶け、お芋に絶妙な味付けをするのです。釜で一晩じっくりと煮詰めたものを取り出し、手切りをして乾燥させる。
そうしてできた干し芋たちを、朝早くからの芋の加工作業で疲れている操さんが、皆さんの手に取ってもらいおいしく食べてもらう事を想像しながら、夜中に一つ一つ袋に詰めていくのです。
干し芋に込められた想い
こうして春に植えた、芋の苗たちが一年をかけ、秦泉寺夫妻の手によって『干し芋』という形になっていきます。
食感は固すぎず、柔らかすぎず、噛めば噛むほどお芋本来の甘味が広がる干し芋。黒くなった干し芋は、甘みの凝縮の証です。
地元ではお子さんから年配の方まで幅広い世代に愛されております。
ご夫妻の想いは、地域の良い商品をもっと知ってもらいたい、農業でしっかり稼いで地域の雇用を生み出し、次の世代につないでいきたい。そんな様々な想いがこの絶品『干し芋』には詰まっています。
そんな秦泉寺夫妻が作る、干し芋は地元の直売所や高知市内のスーパーで販売しています。県外の方には、インターネットでの購入やふるさと納税でも手に取って頂くことができます。『干し芋』を食べる機会がある際には、そういった想いも一緒に食べて頂けるとありがたいです。