「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン 新潮社
前回の続きです。この本は一貫してスマホ(とタブレット)の危険性を訴えているわけですが、その理由を人類の本能レベルからひも解いていることが説得力を強くしています。
人類が種として生き延びるために身につけてきた肉体的精神的システムの数々が、現代の社会の構造と「ミスマッチ」を起こしている。そしてそのミスマッチが様々な病を引き起こしているという主張です。
例えば。常に食料供給が不安定な状態の中で生存することに特化してきた人類は、食べ物を目にした時点で「お腹いっぱい、食べられるだけ食べろ」という指令が脳から出るようになっているわけです。
それはドーパミンという脳内物質を大量に分泌するというやり方でなされます。
次に食べ物が見つかるのはいつになるかもわからないような環境においては、いつだって体内に可能な限りのカロリーを蓄積していた方が生存の可能性が高まります。
「お腹いっぱい、食べられるだけ食べろ」という、ドーパミンを使った指令は、その環境下においては生存の可能性を高めるための仕組みであって、実際にその仕組みでもって人類はこれまで生き延びてきたのです。
しかし現在。人類の歴史の中でも、かつてなかったほどに食料や物質が豊富に手に入る時代。
コンビニやレストラン、スーパーに行けばありとあらゆる食べ物が安定して供給されるような社会を、人類は作り上げてきて、それはもちろん一つの大きな成功といえるのでしょう。
しかし、ここに「変わっていない脳」と環境とのミスマッチが起こる。
脳は相変わらず「お腹いっぱい、食べられるだけ食べろ」という指令を出す。いつだって食べ物が豊富に手に入る時代に、その指令通りに行動すれば、それは結果として様々な病を引き起こすことになります。肥満、2型糖尿病、高血圧。。。
「脳の仕組み」と「現代社会の構造」が、こういったミスマッチを引き起こしているところに問題がある、「人間は現代社会に適応するようには進化していない」というのがこの本の主張の土台です。
また次回にもう少し続きます。