(「南川のカジ蒸し( 前編)」はこちら)
4時間ほど蒸し続けていたカジが、蒸しあがる時間になりました。
棒の反対の先には甑が繋がっています。上にいる人の声を聞きながら棒を左右に動かし、甑をちょうどいいところへ動かします。息がぴったり!
昔からこれが楽しみの一つだったそうです。カジの皮をむいている時、甘いお芋のような匂いがすると思っていたのですが、その源はこのお芋だったのか?それともカジ自身の匂いだったのか?一体どちらなのでしょう。
再び石田美智子さんが下へ降り、甑に繋がる棒を動かしてちょうどいいところを調節しながら、甑をカジへかぶせます。
「ええろ!こんなもんじゃ!」
そして、また皮を剥ぎます。
冬の間にこの仕事を何度か繰り返し、乾かした皮を出荷することで収入にする。山にあるものを使い、工夫し、協力して生きてきた山の人たち。今、カジ蒸しの仕事がここにあるのも、この仕事を引き継いできた人たちが確かにここにいたからです。あと5年後、10年後、山のこの文化はどうなっていくのでしょうか。
作業中、軽トラックが何度か通り、カジ蒸しの仕事をしている人たちと話しては山へ向かって行きました。
しばらくして山から帰ってきたトラックの荷台に乗っていたのは、イノシシの子ども!
山の人たちは自分たちの力で生きてきたのです。その軸足の強さは、机上や作られたコンクリートの上ではなく、土の上で培われてきたものです。土に根ざした南川の日常には、長い間この町を支え続けてきた、この町の暮らしの土台があるのではないでしょうか。その土台があるからこその「今」です。
これから私たちは何をどのように選び、暮らしをつくっていくのでしょうか。それを自らの内側に問うていきたいと思います。