渡貫洋介

笹のいえ

呼び名

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土佐町に暮らしはじめ、地域の人たちとお付き合いするようになって驚いたことのひとつに、「年齢に関係なく、愛称で呼ぶ」ことがある。

小さい子が年配者をあだ名で呼ぶのは、可愛らしいし、よくあること。加えてここでは、年の離れた大人同士でも愛称で呼ぶことが珍しくない。例えば二十代の人が、30歳年上の先輩を「ちゃん付け」で呼ぶこともある。

この慣習が地域独特のものなのか分からないが、住んでみて納得した。

集落に暮らす人たちが、家族のような付き合いをしてるのだ。

たくさん採れた畑の野菜をお裾分けしあったり、近くを通れば「元気かよ?」と立ち話したり、困ったことがあれば手を貸したり。きっと何代も続いている関係が、親しみを込めてお互いを呼び合うことに繋がっているのだと思う。その会話は相手への信頼を感じさせ、聞いていて安心感がある。ある人との何気ないおしゃべりで、僕の名が「渡貫さん」から「洋介くん」に変わった時は、地域の一員になったような気がして嬉しかったのを覚えてる。

僕ら家族が土佐町にやって来て六年目。仲良くさせてもらっている人が増えるにつれ、その人をあだ名で呼ぶことがある。

けれど、年上の方々を愛称で呼ぶことに、僕は未だ少し抵抗がある。

親の年齢ほどの方に対して「〇〇ちゃん」と声を掛けるのは、やっぱりどこか照れがあり、声が若干小さくなってしまうのだった。

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笹のいえ

主夫ニ美学アリ

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日々の洗濯と食器洗いは、なんとなく僕がすることになってる。

どちらも嫌いではないし、場が片付くのは気持ちがいい。

洗濯は特に干すのが好きだ。

好きなのを通り越して、こだわりというか、自分で決めたルールがある。

まず、カゴに入った洗濯済みの服などを素早くチェックし、頭の中でカテゴリー分けする。

そのカテゴリーに、干し場(物干し竿やハンガー、ピンチハンガー*など)の広さや数量が対応しているかを計算する。前日に洗濯したものがまだ乾いていないようであれば、その分を差し引いておかなければならない。

そして「布おむつ」とか「お兄ちゃんのズボン」とか、同カテゴリーを隣り合わせで干していく。取り込んだ時に畳やすく、タンスに片付けやすいからだ。

ピンチハンガーを利用するときは、干し物の重さのバランスが取れ、最終的に左右釣り合っているようにする(これが気持ちいい)。また、生地の厚いものは陽の当たる外側に干すなどの気遣いが必要だ。

作業スピードから乾きやすさ、収納までを考えて、自分ルールが成り立っている。「乾けばいーじゃん」と言われればまあその通りなのだが、「主夫にも美学あり」なのである。

他にも「子ども服には小さめのハンガーを使用」「複数のハンガーを干すときは間隔を等しく」「部屋干しで乾いていても、一度は天日に当てる」など語りはじめるとキリがないのでこの辺にしておきます。

ちなみに、うちの奥さんは干し方を全く気にしない。僕としては指導したいところではあるが、家庭が円満に過ごせるよう、黙ってる。それでも、気になる干し方を見つけると、コッソリ直してるのは秘密です。

 

*洗濯バサミのたくさんついたアレです。

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笹のいえ

笹の夏休み ーうちの子らの場合ー

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「笹の夏休み2018」はこちらから。

 

うちの子たちも「笹の夏休み」に参加する。

でも、彼らに参加するという意識はないだろう。ある日、自分たちの家に小学生たちがやってきて、一緒にいつもの暮らしをする。この状況をどう理解しているのだろう。「毎年夏に数日間家にやって来る友達のような親戚のようなお兄ちゃんお姉ちゃん」という感覚だろうか。ともあれ、賑やかな夏休みの出会いを毎回とても楽しみにしている。

参加条件が小学校三年生から。四人いるうちの子の一番上の子が小二なので、参加者は皆先輩だ。滞在中、調理や掃除を子どもたちでやってもらうことになるが、文字通り「ホーム」となる我が子たち。ここぞとばかり、笹のいえ流・野菜の切り方を説明したり、コンポストトイレ使い方を教えたりする。その口調や身振りが両親(僕と奥さんのことですね)に似てて、微笑ましい、と言うより、自分を見てるようで気恥ずかしい。

ラフティングや川遊びなどのアクティビティにもできるだけ同行する。年上の参加者に比べると体力面で不安があったが、どっこい負けじとついて行っていた。去年できなかったことが今年できたりして、一年間の成長を感じるときだ。

夜は夜で嬉しくてしょうがない。男子や女子の布団に転がり込んで「一緒に寝る!」と宣言した。優しいお兄ちゃんお姉ちゃんは、快く娘と息子たちを受け入れてくれた。普段とっくに寝てるはずの時間になってもおしゃべりは続き、なかなか寝付けないようだったが、皆が寝てしまうと寂しくなるのか父母の部屋に戻ってきた夜もあった。一日中テンション高めなので、さすがに疲れたようだ。横になるとすぐに寝息を立てていた。

こんな感じで、イベント二回合計九日間を過ごした。

参加者との日々を過ごした後は、特に精神的な前進がある。行動に変化があったり、口調が大人びたり(つまり、生意気になったり)もする。イベント後、家事も積極的にお手伝いしてくれた。が、あまり長く続かなかった。

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笹のいえ

笹の夏休み2018

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笹のいえに泊まりながら、日中は自然の中で遊び、食事作りから掃除洗濯など、ここでの暮らしを体験するイベント「笹の夏休み」が今年も無事終了した。台風の影響で帰りの飛行機便を変更したりなど多少のハプニングもあったが、大きな怪我や病気もなく、参加者全員をご家族の元へ送り出せてホッとしてる。

かまどで料理して、五右衛門風呂を沸かし、コンポストトイレを使う。笹の「むかし暮らし」は子どもたちにとって、いろんな刺激があったようだ。心配していた天候にも概ね恵まれ、よく遊び、よく食べた毎日だった。

四年目の開催となるこのイベントで、これまでは関東からのリピータが半数以上だったのだが、今年は四国や関西圏からの参加が増えた。初めて高知県内から参加があったことも、地元への広がりが感じられて嬉しい。

兄弟や友達同士で来た子もいたが、ほとんどの参加者は、ここで初めて顔を合わせた。

イベント初日、笹に到着した彼らは一様に緊張気味で、「山奥の古い家に連れて来られて、しかも知らない人たちだらけで、どうなっちゃうんだろう」と顔に書いてある。

それでも、自己紹介やスケジュール、班などを決めていく中で、場と仲間たちにすぐ慣れていった。日を追うごとに(本人たちは無意識なのだろうが)、それぞれのキャラクターを理解し、自分を出していく。頭で考えるよりも先に他者を受け入れ、グループを形作っていく。隣で彼らを観ていて、その柔軟性とスピードには毎回驚かされる。

参加者とスタッフ、そしてうちの子たち、総勢15名。ひとつ屋根の下、寝食を共にしていると面白いことが見えてくる。

虫が嫌いな子がいれば、暇さえあれば虫網片手に生き物を探してる子がいる。

かまどで火起こしするのが得意な子がいれば、煙が苦手な子がいる。

調理が楽しくてしょうがない子がいれば、恐る恐る包丁を扱う子がいる。

滞在中、自分と反りが合う子、合わない子がいただろう。

数年前まで、参加者には同じように体験させなければいけないと考えていた。苦手なことも頑張らせて、「皆がやっているのだから、一緒にやろうよ」と伝えていた。が、最近はそうでなくともいいと思うようになった。得意なことやりたいことはそれぞれ違う。スタッフは子どもたちとコミュニケーションを取り、その子からのメッセージを受け取る。必ずしも全員同じことをしなくてもいい。作業が終わって手が空いたのなら、他の子を手伝ってもいいし、遊んでもいい。ひとり息抜きが必要なときもあるだろう。皆違う、それでいいと思う。スケジュールや時間的に多少の促しが必要なときは、スタッフは最小限のフォローでサポートするように心掛けている。

今年は二回開催し、合計14名の子どもたちとの出会いがあった。

参加してくれた子どもたちにはもちろん、可愛い我が子に旅をさせてくれた親御さんにも感謝したい。

 

写真提供:川原将太

 

去年のイベントの様子は、こちらからどうぞ。

笹の夏休み(前編)

笹の夏休み(後編)

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笹のいえ

母ちゃんのとなり

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布団を敷いていざ寝るぞというときに、「今日は誰が母ちゃんのとなりで寝るのか」という問題が持ち上がる。

両脇あるうちの一方は、赤ちゃん専用と決まっているから、空いているのは反対側のみ。この場所を三人の子どもたちが狙う。少し前までこの場所をめぐって毎晩争いが勃発していたのだが、最近は平和的に日替わりで決まっているようだ。しかしながら、当番の子が寝入った隙に、その子と母ちゃんとの間に入り込むという高度な技が開発され、おちおち寝てもいられない。また、まだ小さい次男は、「泣く、ぐずる」というスキルによって特別待遇を得ることもあり、姉兄は油断できない。

その様子を横で見てる僕は、「父ちゃんのとなり、空いてるよ」と、声を掛けてみる。大抵無視されるか、「ひとりで寝るよりは、まし」と、こちらにやって来ることが稀にある。

そして、これはもう自慢の域に入るくらいなんですが、うちの子たちは皆相当に寝相が悪い。寝息が聞こえると同時に、あちらこちらにゴロゴロと転がりだし、結局、母ちゃんのとなりには赤ちゃんだけ。当人たちは、朝の自分たちの状態に疑問を呈することもなく、寝相が改善されることもない。

それでも、家族6人が布団を並べて寝られるのは、有り難いなあと思う。

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笹のいえ

夏休み、はじまる

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夏休みがはじまった。

しっかり者の長女はすでに宿題をはじめていてる。毎年8月31日に泣きながら手付かずの宿題をやっていた父ちゃんとはエライ違いだ。

保育園大好き長男は、夏の間も通いたいと言う。幼少のころ、少しでも家でゴロゴロしたかった彼の父親とは、これまたエライ違い。地元保育園に夏休みの設定はなく普段と変わらず登園できる。働くお父さんお母さんの強い味方。ありがたい限りです。

毎日が夏休みみたいな次男はいつも通り、今を生きている。でも、いつもは学校や保育で居ない姉ちゃん兄ちゃんと一緒だから嬉しそう。

生後三ヶ月となった末娘は、母ちゃんとの蜜月な毎日を送っている。まだ夏休みとは無縁の乳幼児。

四者四様の夏休み。どんな日々が待っているだろう。

大人の事情であちこちして、なかなか時間が取れないでいる父ちゃんだけど、本当は君たちと遊びたい。今年の夏は一度限り。仕事はほどほどにして、僕も夏休みを満喫することにしよう。

 

写真提供:川原将太

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笹のいえ

オケブロ

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各地で記録的な降水量と被害をもたらした台風7号と梅雨前線。

ここ土佐町では、一部大雨による避難指示が発令され、一時緊迫した状態だった。しかし幸いにも大きな土砂災害や怪我人もなかったと聞いている。雨の多い場所柄、地域の防災に関する意識と知恵の賜物なのだろう。

笹のいえの水は、山からパイプで引っ張って来ている。大雨になると水の取り口に落ち葉やらが詰まり止まってしまうことが多い。その度にえっちらおっちらと山を歩き(と言っても200mくらい)、掃除をする。今回も雨が降りはじめて数日で止まってしまった。かと言って、この雨の中パイプを掃除してもまたすぐ詰まるだろうし、増水した沢に近づくのは危険だ。

長雨になることは天気予報で知っていたから、その前に風呂桶に水を貯めておいたし、貯水槽には数日分の水がある。とはいえ、雨がいつ降り止むかわからない状況で、多量の水を使うのは気が引ける。

なので、何度かオケブロをした。
大量に水を使うお風呂の代わりに、桶にお湯を注ぎ、最小限の水で体を綺麗にしようというわけだ。
いつもは乳幼児のためにするのだが、なぜか兄弟たちも大好きなオケブロ。
かまどで羽釜にお湯を沸かしておいて、桶にあけ、水を足し温度を調整する。

一番上のお姉ちゃんは手と足を温めて満足するが、下の兄弟はがっつり「入浴派」。入浴と言っても、桶であるからして当然、浅い。それを我先にと二人で入るものだから、お湯は溢れるわ、狭いわ、「もうちょっとそっち行け」と喧嘩ははじまるわ、もうカオス。

親に「もう出なさい」と十回くらい言われると、渋々お湯(すでにぬるま湯になっているが)から上がる。ビショビショになって飛び出してくるので、タオルで受け止めてやる。着替えて、そのまま布団へ直行。そして、母ちゃんにお気に入りの本を読み聞かせてもらい、いつの間にか爆睡。嗚呼、子どもになりたい。

写真は、お互い「せまい」と文句を言っているところ。順番に入るという発想はまだ、ない。

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笹のいえ

長雨

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台風7号と梅雨前線の影響で、6月の終わりから毎日雨だった。

梅雨に雨が振るのは当たり前だけど、これほど降り続くと予定していた作業が滞り、とても困る。

雨の日は内作業をすることが多いが、こうも連日雨だとそうもいかない。

田んぼや畑には、やることがゴマンとあるのだ。

雨の中、気が焦りつつ車を運転していると、ご近所さんが草刈りをしているのが目に入った。そうか、草刈りだ。

「草刈り」は、実は雨の日にはもってこいの仕事。

晴天のときこれらの作業をすると、暑すぎてすぐバテてしまう。小雨くらいなら、楽しいくらいだ。

上下に分かれている合羽を着込む。その下はTシャツと海パン。蒸れて汗もかくけど、すでに雨に濡れているから、気にならない。風邪を引かないように、Tシャツは休憩毎に着替える。海パンは濡れても作業が終われば、合羽と一緒に軒の下に吊るしておけばすぐ乾く。

雨の日に外作業が進むってのは、何となく得した気分になる。

でも、さすがにこの長雨では、土いじりができない。

7月に入っても、大豆が蒔けない。家の前のネムノキの花が散りはじめてるというのに。

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笹のいえ

麦秋

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米は秋に収穫だけど、麦は梅雨時期に刈り取りをする。

小麦畑が黄金色に染まり、秋を思い出させる。麦秋とはよく言ったものだと思う。

雨の多い季節に収穫なので、天気予報とにらめっこしながらタイミングをうかがう。

収穫後も脱穀や天日乾燥があるので、気が抜けない。長雨はカビの原因となるし、干す期間が長すぎても実が日向臭くなったり、どこからやって来るのか蛾が湧いてしまうことがある。畑で実の完熟を待つより、早め早めに作業を進める方が失敗が少ないようだ。

今年は下草が多いためにバインダーが詰まってしまったりして、半分くらいは手鎌で刈った。束になった麦わらを、地面に打ち込んだ支柱の周りに立て、上からシートを被せて縛る。このまま数日乾燥させた後脱穀し、晴れた日に玄麦をシートに広げる。麦を歯で噛んで、カリッと割れるくらいを乾燥の目安にしてる。

今回の収量は去年の三分の二ほど。畑の低いところに蒔いた種が雨に浸かり、発芽率が悪かったからだと思う。それでも、しばらくは自家製小麦粉を楽しめそうだ。

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笹のいえ

堆肥置き場

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笹のいえの畑に、堆肥置き場がある。

日々の排泄物や生ゴミ、刈った草や畑の残渣などを積んでいる。

年に一、二度天地返しをして、分解を促す。発酵しやすくするために、生活で出た米糠や大鋸屑を投入することもある。内部の風通しを良くして微生物を活性させようと、去年から節を抜き、側面に穴を開けた竹を堆肥の間に置いてる。

これだけの手間で、ほとんどのものが土に還ってくれる。

ふるいに掛けると、落花生の殻や栗の皮などの固い物が残る。発芽してる種もある。それらを観察して、「そういえば、こんなもの食べたんだっけ」と思い出すのも楽しい。

ここは微生物や虫たちの住処として居心地が良いらしい。トタンの屋根を取ると、いろんな種類の生き物を見ることができる。モグラの穴もある。長男にカブトムシの幼虫がいるよと教えると、飛んでやって来た。容器に移して飼うらしい。

堆肥は培土として利用することもある。トイレで使ったくん炭は分解されず、そのままでは水保ちが悪いので、畑の土と混ぜる。畑に撒くこともある。自然界で土壌ができるのは長い年月が必要だが、こうすると必要な場所に土を増やせるので嬉しい。

完全に分解された堆肥は、土の良い匂いがする。

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