「一切なりゆき」 樹木希林 文藝春秋
とても味のある女優さんだったことはいうまでもなく、言葉のひとつひとつがユーモアがあって楽しくて力強い。
『亭主と顔を合わせるのは年に一回か二回。スーツを新調したいというから付き合ったら「お前もなんか買え。お店の人にも生活があるのだから」って怒るの。3万円しか財布に無くても100万円使う。人のお金と自分のお金の区別がつかないだけで私よりずっとノーマルな人です』
そう思って言いきれるのが不思議。
「全身ガンなの」とはテレビでも聞いたことがある。ガンは逃げたって追いかけてくるのだから、やっつけようとすれば自分の体もへたばっちゃう。だから逃げることもせず、やっつけもできないからそのまんまいるって感じ。
私にそんなことできる??大声で泣き叫びながらあがいて戦う。力尽きてしまったとしても。
母から娘への言葉として「おごらず、他人と比べず、面白がって平気に生きればいい」。
その言葉が、心に残る。
川村房子