「水上バス浅草行き」 岡本真帆 ナナロク社
俵万智さんの「サラダ記念日」以来の短歌ブームだと知り、四万十出身の岡本さんの短歌集を買ってみた。短歌集としては大変な売れ行きらしい。
『深すぎるお辞儀でひらけランドセル スーパーボールスーパーボール』
小学校1年生の時の出来事、病身な母はいつも寝ていて、私のお人形さんの服などを手作りしながら帰りを待っていてくれた。
ある日珍しく父親も側にいた。子供の扱い方が苦手な父親は、からかうかお説教が会話だった。
「ただいま」と言っていつものように母親の側にランドセルをおろすと、父親は「中に何も入ってない」と言った。その言葉を鵜吞みにし家を飛び出し学校へと引き返した。学校に到着する直前母が追いついて来た。心臓が悪く安静にしていなくてはいけなかった筈なのに、寝巻を着かえて追いかけ迎えに来てくれた。
私はだまされたのだった。切ない思い出が蘇った。
『水上の乗り物からは手を振っていい気がしちゃうのはなぜだろう』
隅田川の水上バスに小学生の孫と乗船した時、橋の下を航行する度に橋から見下ろしている人達に手を振っていたのをホンワカと思いだした。
自分の経験した事柄に近い短歌には、とても共感できる。