西野内小代

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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オーケストラの職人たち」 岩城宏之 河出書房新社

1998年~2001年「週刊金曜日」で「裏方のおけいこ」として連載、2005年文春文庫に収められ2023年11月に復刊本として出された本です。

日本においてクラシック音楽のファン層がいかに広がっていったか、手探りでコンサートを支えた人々の苦労を気さくな文章で綴る。人種差別、女性蔑視、楽団員の給料体制、著作権問題、当事者でなくては語れない内容がふんだんに盛り込まれ、野次馬的な気分になる。

有名オーケストラの一員の詐欺罪での逮捕劇なども挟み込まれ、人間臭さ満載である。

クラシック音楽に不案内な私ですが、とても興味深く読めた。

 

 

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「犬橇事始」 角幡唯介 集英社

偉大な探検家であり、数々の賞を獲得する作家でもある。「空白の五マイル チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」(複数のノンフィクション賞を受賞)を読んで以来のファン、今回も新聞で紹介されていたので、早速ネット注文した。

時々テレビ出演をされているが、探検家には見えない華奢なイケメンさん、そのギャップにも惹かれる。

過去の作品と同様、映像が目の前に展開しているかのごとく、臨場感溢れる文章で、地球最北の地グリーンランドへと読者を導く。13匹の犬との出会い、訓練、冒険へのスタート。それぞれの犬の個性を時には面白く、時には感情をむき出しに描く。読み終える頃には、名前を呼べば紙面から飛び出し、傍らに寄って来るかのような錯覚に陥る。

コロナウィルスのパンデミック真只中での冒険となった為に、計画の変更を余儀なくされる。犬たちの著しい体調変化・激しいボス争い等、様々な出来事を乗り越えて旅を続けていく様子が、軽やかにコミカルに描かれている。

冒険とは何かという命題にも哲学的に深く切り込み、犬橇の顛末の面白さ、内なる自分をきめ細かに分析する姿勢、ノンフィクションであるだけに説得力がある。

 

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なぜヒトだけが老いるのか」 小林武彦 講談社

2024年になり、早々に一つ年齢を重ねた。体力的な事、記憶力もしかり、色々な衰えを認識するお年頃である。「老い」がちらつき、少し弱気になってくる。

この本を読む限り、老化する事によって、人類は進化してきたらしいので、受け入れるしかない。そこには「シニア」としての役割もあるので、経験し受け継いできた知恵・知識を後世の人々に伝えていく義務がある。

「ゲノム」的見地からすると、55歳位が肉体の限界らしいが、現在の人類はそこを30年は優に超えている。寿命は総心拍数によりある程度決定されるという仮説もあるので、穏やかに生きたい。

また85歳を過ぎた辺りから、心がとても平安になるので、決して悲観する必要はないらしい。

総心拍数を使い切って、健康に寿命を全うするには、日々コツコツと動き続ける事が秘訣らしい。今後は庭の手入れにも積極的に取り組もうと、気持ちを新たにした2024年の始まりです。

 

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ガウディの遺言」 下村敦史 PHP研究所

ガウディ建築に心惹かれる私は、咄嗟にこの本を手にした。志半ばで事故により亡くなったガウディの遺言があれば世界中が大騒ぎになる。そんな心理を見事についた作品です。

主人公の女性は両親の関係に疑念を抱き、父親を敬遠し、サクラダ・ファミリアで石工として働く父親がのめり込む彫刻に嫌悪感を抱く。しかし、どうしようもなくガウディに引かれていく自分もいる。

そんな中、サクラダ・ファミリアの塔内部で殺人事件が起こる。

父親に犯人の嫌疑がかかり、様々な出来事が登場人物を翻弄し、誰もが怪しく見えてくる。思いがけない人物の犯罪、幼い時強盗により殺害された母親の事件も関係していたと判明する。ガウディの建築に対する意思も明確となる。

主人公は父親と和解し、新たな気持ちで人生を立て直す。ミステリでありながら、主人公の葛藤も見事に描写している。

 

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月の立つ林で 青山美智子 ポプラ社

「月」がキーワードとなって作品を構成している。タケトリ・オキナという人の『ツキない話』という番組のリスナーを巡ってストーリーは展開する。

看護師・宅配便の仕事をしながら芸人を目指す青年・二輪車の整備工場の経営者・母と二人暮らしの女子高校生、そしてハンドメイドアクセサリーをネット販売している主婦が各章での話の核となっている。

タケトリ・オキナと登場人物の中の一人が再会を果たしそうな余韻を秘めてラストとなる。

最後の最後に泣かされた。「最高傑作」という帯の紹介は決して誇張ではない。

 

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ミステリと言う勿れ」 豊田美加 著, 田村由美 原作, 相沢友子 脚本 小学館

映画化された脚本をもとに、著者が書き下ろしたノベライズ作品です。

テレビで放送された時に、主人公の大学生がブツブツ言っているうちに謎が解明されてしまうという、風変わりなミステリーがとても印象深く記憶に残っていた。

今回も相変わらずブツブツと違和感を口にしているうちに真相解明ができてしまう。観察眼の鋭さと知識の豊富さが謎解きのスパイスとなっている。

「犬神家の一族」を彷彿させる作品である。

 

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あなたが誰かを殺した」 東野圭吾 講談社

有名な別荘地で起きた連続殺人事件、犯人は直後に自首するが、黙秘を続けるために謎は解明できない。被害者の家族が集まり、真相を知るための「検証会」が開かれる。

集まった人々はそれぞれ「あなたが誰かを殺した」という手紙を受け取っている。集まった中に被害者家族以外の人が2人居る。1人は敏腕刑事、もう1人は自身を偽った人物として参加している。

刑事の導きにより真相が徐々に明らかとなり、犯人と共犯者の2人が確定され、これで事件は解決と読者は油断する。果たして刑事の推理はまだ続く、「あなたが誰かを殺した」という手紙の伏線が見事に回収される。3人目の容疑者が居たのである。

アガサ・クリスティーの作品を彷彿させるような構成に感じられたが、やはり東野圭吾ワールドが際立つ作品だった。

 

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「教育は遺伝に勝てるか?」 安藤寿康 朝日新聞出版

著者は行動遺伝学を専門とされている方です。果てしなく先祖へと遡るDNAが存在するなかで、どの因子がどの組み合わせで作用してくるか…。これは偶然の産物のような結果であって、丸ごと親のDNAが遺伝する訳ではない。

一卵性双生児と二卵性双生児の研究結果も載せられている。一卵性双生児の場合、無意識下での一致が数多くみられ、遺伝の一致が推論できる。二卵性双生児になると確率はやや落ちてくるそうだ。

環境と教育によって、遺伝された部分が伸びゆく可能性は強い、相互に作用すると考えられる。感じたり、考えたりするその仕方に、その子自身の遺伝的素質が反映されている。

両親から譲り受けた遺伝子を、新たに組み替えて出来上がった、その子独自の遺伝的素質により、学習・経験を通して能力を獲得していく。歳を重ねるに従い、遺伝の影響は強くなってくるらしい、共有環境の影響が薄れていくという行動遺伝学の結果と一致してくるそうだ。

歳を重ねた現在の私は、果たしてどのような遺伝の影響を受けているのだろうか…?と振り返ってみた。

 

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「黙示」 今野敏 双葉社

帯に書かれている「ソロモンの指輪」超古代文明の謎、この言葉に興味を引かれた。

高級住宅街で発生した奇妙な窃盗事件が題材の警察小説です。

謎の暗殺教団が、現代も組織として残っているかのような設定もあり、古代ミステリーの様相を呈してくる。

古代文明に精通した探偵と助手も登場、助手の名前が「明智大五郎」・・・ちょっと笑える。

窃盗にあったIT長者は命をも狙われると不安におののいている。

ほとんどが会話形式で描かれていて、読み手も参加しているような錯覚に陥る。

 

 

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「海神(わだつみ)の島」 池上永一 中央公論新社

舞台は沖縄、祖母に育てられた3姉妹が、祖母の最後の言葉「祖母の父親が残した秘宝を探し出した孫のみに相続権あり」という具体的には不明な秘宝を巡って話は進む。

少し滑稽味のある内容ではある。

弁護士の話から、年間5億円の地代収入がある土地の相続であることが判明するや否や、3姉妹の争奪戦のゴングが高らかに鳴り響く。

この3姉妹が、まるで現代社会を反映したかのような個性豊かなキャラクター(銀座の有名クラブのママ・水中考古学の学者・地下アイドル)に描かれていて、極端過ぎる嫌いもあるが、テンポのいい場面展開についつい夜更かしをしても読み進みたくなる。

そして、年間5億円の相続の行方は、想像もしていなかった着地となる。沖縄、米軍基地、尖閣諸島など政治的な話題も含まれており、盛りだくさんの内容です。

 

 

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