「かわ」 加古里子作,絵 福音館書店
絵巻じたてになっているこの本。蛇腹折りになっている絵をぱたぱたと広げて伸ばしていくと、その長さ7メートル40センチ!(巻尺で測ってみました。)
山から流れ出る水が『たかいやまにつもったゆきがとけてながれます。やまにふったあめもながれます。みんなあつまってきて、ちいさいながれをつくります』。
そして谷間を通り、畑や田んぼに水を満たし、川沿いの牧草を食べる牛たちの喉を潤す。この風景はまるで高知県嶺北地方を流れる吉野川のようです。
そしてさらに大きな流れになり、港を抜け、海に出ます。『ひろいひろいうみ。ふかいふかいうみ。おおきいおおきいうみ。どこまでもどこまでもみずのつづくうみ。うみをこえていこう。ひろいせかいへ』。
その一連の流れが一枚の絵になっています。
山登りをしている人たちや田畑で仕事をする人たち、河原でお弁当を食べている人たち、海の近くの工場。川と共にある生活の様子が細かく描かれていて、見るたびに新しい発見があります。
作者である加古里子さんがこの本の向こうにいるだろう子どもたちの姿を思い浮かべながら絵を描き、お話を作っただろうことがしみじみと伝わってきます。
鳥山百合子