「愛の領分」 藤田宜永 文藝春秋
この本を読んで数日後に、高知新聞のメモリアル欄に藤田氏の訃報が掲載されていた。
冒険・恋愛小説の名手で直木賞作家。はじめての作家でしたが、直木賞受賞作品につられて読み始めた小説でした。
待望の恋愛小説と書かれていた。不倫でもないのに秘密のにおいがする。愛を信じられない男と女。それでも出会ってしまった彼らの運命。交差する心と身体、複雑に絡み合う男女4人。すべてをかなぐり捨てた中年男女がゆきつく果ては…。
新聞に、常に完璧さを求める母親から愛情を感じられずに育ったという。そのためか「女の人へのこだわり」が人一倍強かった。作風はひろいが共通するのは主人公が皆どこか寂しげであることだと書かれていた。本当にその通りで、恋愛小説を読んだあとの幸せ感ではなく、寂しさやせつなさを感じた。
川村房子