「日本を寿ぐ」 ドナルド・キーン 新潮社
日本人は「島国根性ではない!」と帯に書かれています。
江戸時代の鎖国のイメージが強烈なので、外国を拒否してきたかのように思いがちですが、古代より海を越えての往来は盛んで色々な文化を移入してきている日本です。
鎖国という言葉は1690年9月から1692年10月まで日本に滞在したケンペルが、帰国後日本に関する論文をラテン語で著し、これを英語で転載、そのオランダ語訳から「鎖国」という日本語が造語されたそうです。そもそも日本語には存在しない単語だったのです。
日本人以上に日本語を大切に扱うキーンさん、とても柔らかい丁寧な日本語で講演されたのがよくわかります。「寿ぐ」という言葉自体普段耳にすることはありません。義母の100歳のお祝いに町長の代理で来てくださった役場の職員の方が、読みにくそうに何度か言い直していたのを思い出します。
俳句を音で解釈したり、伝記の資料がほとんどない明治天皇の思想を短歌から読み解いたり、興味深い講演の選りすぐりです。