古川 佳代子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

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「線は、僕を描く」 砥上裕將 講談社

生きていく気力を失うほどの痛手を負ったとき、人はどうやって生きのびていくのでしょう?

どのくらいの時間をかければ、再び生きていく気持ちを取り戻せるのでしょうか?

大学生の青山霜介の場合は“水墨画”との出会いが“それ”でした。全く水墨画の知識はなく、興味関心もなかった霜介でしたが、アルバイト先で出会った水墨画が、恢復へと導いてくれたのでした。

水墨画とは筆先からうまれる「線」の芸術です。そして線が描くのは題材である草木の命です。草木の「生」に寄り添い、有りようを探り、描きながら、霜介は再び生きる力を取り戻していきます。

霜介を取り巻く登場人物も魅力的ですが、なかでも師匠である湖山先生の言葉は含蓄にあふれています。「できるのが目的じゃないよ。やってみることが目的なんだ」「挑戦と失敗と繰り返して楽しさを生んでいくのが、絵を描くことだ」などなど。これらの言葉は主人公にかけられた言葉ですが、読み手の私にも響く言葉の数々に出会えた本でした。

 

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「みずをくむプリンセス」 スーザン・ヴァーデ文 ピーター・H・レイノルズ絵  さくまゆみこ訳  さ・え・ら書房

ジージ―はアフリカのプリンセス。ジージ―の王国はアフリカの空。野良犬と歌い、草と踊り、風とかくれんぼすることだってできます。

そんなジージ―でも、水をよびよせることや水をきれいにすることはできません。まだ夜が明けきらない暗い朝。ジージ―とお母さんはずっとずっと遠くまで水を汲みに行かなくてはなりません。 水を汲みに行くジージ―の一日からは、水問題についての現状が端的に伝わってきます。

またあとがきでは、この絵本が生まれたきっかけや、清潔で安全な水を手に入れることが困難な人々が現在も多数いることを伝えてくれます。とても大切なさまざまなことを考えさせてくれる絵本です。が、それとともに、絵の素晴らしさも味わってほしい作品です。

歌い踊っている時のジージ―のしなやかな体。頭に壺をのせたジージ―と母親の堂々とした足取り。水くみに行く人々のシルエットの美しさ…。過酷な現状を伝えるとともに、生活を楽しみ、お互いをいつくしみ合っている家族の豊かな日常の感じられる絵本です。

 

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「児童文学の中の家」 深井せつ子 エクスナレッジ

こどもの頃楽しんだ物語には、美味しい食べものがたくさん出てきました。タフィー、チョコファッジ、木イチゴのタルト、レアケーキ、クランペット、ジンジャ―ビスケット…。どれも未知のお菓子ばかり。端っこでいいからかじってみたい!と、どんなに願ったことでしょう。

それと同じくらい憧れたのが主人公たちの部屋や設え、衣装などでした。異世界に通じる衣装ダンス、ふくらんだ袖、グログランレース、丸太を組んだログハウス、干し草の匂いのベッド、星の見える屋根裏部屋…。どれもすてきで、畳敷きの自分の部屋をとてもつまらなく思ったことでした。

この本では『ライオンと魔女』、『床下の小人たち』、『大きな森の小さな家』、『ハイジ』、『赤毛のアン』など計27作品が取り上げられており、家の間取りや家具や道具等が柔らかなタッチで描かれています。もう少し詳細に描いてほしかったと思うところもないでもないのですが、それはそれ。「想像の余地」があるのもすてきです。

しばらくぶりに、アンやハイジ、ローラたちにあいたくなりました。

 

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「ガチガチの世界をゆるめる」 澤田智洋 百万年書房

物心ついてから今に至るまで一度もたりとも運動が得意、あるいは楽しいと思ったことのない「運動能力不自由」者、それが私です。

大きいのもちいさいのも、どんなボールとも仲良くできないから球技は全滅だし、早く走れず高くも飛べず強くもないですから、やってみたいスポーツはありません…。でも、この本にでてくるゆるスポーツならやってみたいかも!?

500歩しか動いてはいけない5対5でやる「500歩サッカー」。はらぺこあおむしみたいなイモムシウエアを着て行う「イモムシラグビー」。中央にブラックホールが空いたラケットで卓球をする「ブラックホール卓球」…。どれもとても楽しそう! 自分の得意なことや強みもたいせつだけど、強み以外の「何気ない自分らしさ」も大切ですよね。「私これできません」と堂々と言える世界ってきっと誰にとっても居心地がいいはず。まずは自分のガチガチの常識を緩めると頃から始めてみようと思います。

作者の澤田さんは、「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」などのコピーを世にだしているコピーライター。そして、世界ゆるスポーツ協会代表理事、(一社)障害攻略課理事として福祉領域におけるビジネスのプロデュースなども手掛けているそうです。

 

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「男の子でもできること~みんなの未来とねがい~」 国際NGOプラン・インターナショナル文 , 金原瑞人訳 西村書店

男女平等といわれて久しいですが、家で、組織で、社会で、男の子と女の子の扱いはまだまだ違います。でも、一度刷り込まれた価値観を変えるのはなかなか大変なこと。世界を変えるなら、今を生きる男の子たちの価値観こそ大事!と、希望を託して生まれた写真絵本です。

「男の子に生まれてよかった」と思うことがあったら、「あ~、女の子でなくてよかった」と思うことがあったら、ちょっと待って!

その「女の子」は妹やお姉さんかもしれないし、お母さんやおばあさんだったかもしれないよ。自分ができることなら、妹にもお姉さんにも、あるいは未来の自分の娘にもできるような社会にしたいと考える男の子が増えることが、世界を変えることにつながるのですよね!

 

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「水を縫う」 寺地はるな著 集英社

日々のくらしのなかには、たくさんの「なのに」が存在しています。いわく日本人なのに(…)、外国人なのに(…)、高校生なのに(…)、男の子なのに(…)、女の子なのに(…)、親なのに(…)…。

男の子なのに刺繍が好きな高校男子の清澄(きよすみ)。女の子なのにかわいいものが苦手な水(み)青(お)。母親なのに子どもよりも仕事を優先するさつ子。父親なのに子どもっぽく頼りない全(ぜん)…。 お互いを思いやっているのに、うまく伝えられないもどかしさ。家族だからこその、決めつけや見くびり。

「なのに」に傷づけられながらも、自分の生き方を変えることはよしとしない家族の姿が、結婚を決めた水青をキーパーソンに描かれています。

章ごとに語り手(視点)を変えて語られる物語は、いつしか家族にしか織ることのできない複雑なタペストリーとなり、読み手に新しい家族の在り方を見せてくれます。

 

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「兄の名は、ジェシカ」 ジョン・ボイン著 原田勝訳 あすなろ書房

ある人の性的指向や性自認が大多数を占める人びとと同じでない場合、その人は差別や虐待の対象とみなされることがよくあります。まだまだ、LGBT(レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー)の人びとの権利が守られているとは言い難いですが、理解を促す素晴らしい文学が書かれています。今日紹介する物語もそんな作品の一つです。

大好きな自慢の兄ジェイソンが、トランスジェンダーだと告白した。弟のサムはどう受け止めてよいかわからないし、それは両親や周囲も同じこと。サムの目線から語られる告白以降の状況は、なかなか厳しい。

リベラルな政治家である母とその秘書である父は、LGBTやその他もろもろのマイノリティな存在を差別することは愚かしいことだと公言している。しかし、それが自分の息子のことになると、冷静に受け入れ偏見なく対応することは難しい。

その葛藤がリアルに表現されており、読み手にはストレスとなる部分もあるが、そこを逃げずに描いたことで深見のある作品となっている。特に、息子に付き添ってカウンセリングに臨んだ母親の「…私たちがどう思っているかは別にして、この件に関わっていたいのです。関わっていなくてはならないんです」という言葉は印象深い。

今はまだトランスジェンダーだと表明することには勇気が必要ですが、勇気など必要としない日をつくる責任は当事者だけでなく私たちも担っていることが伝わってくる物語です。

 

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「すてきな子どもたち」 アリス・マクレラン文 バーバラー・クーニー絵 北村太郎訳

小学生のころ、公園の木の一つを自分の秘密基地に定めていました。木にまたがって本を開く時の嬉しさと言ったらありません。木の葉の匂いや風の心地よさ、いつもよりも倍、読書を楽んだことでした。そんなことを思い出させてくれたのがこの絵本です。

大人の介入しない子どもたちだけの場所で、思う存分想像力を働かせてダイナミックに遊ぶ楽しさ。毎日毎日出かけて行っては遊びに興じ、頭と体をフルに使って過ごす時間の豊かさがクーニーの美しい絵で描かれており、読み手にも子どもたちの幸せな気持ちが伝わってきます。

 

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「エイドリアンはぜったいウソをついている」 マーシー・キャンベル文, コリーナ・ルーケン絵, 服部雄一郎訳 岩波書店

今年1月に出版されてから何人もの友人に薦め、何度も読み返している絵本。絵本ならではの仕掛けはみごとで“魔法”と呼びたくなるくらい素敵な仕掛けです。

まじめで嘘が許せない主人公の女の子は、同じクラスのエイドリアンが「うちには馬がいるんだよ」という度にいらついてしまいます。小さな家におじいさんと二人で住んでいるエイドリアンが馬を飼っているはずはないからです。

いつものとおり、エイドリアンが馬のことを話し出した時、女の子は思わず「それ、ウソだよ!」と叫んでしまいます。そのときのエイドリアンのすごく悲しそうな目…。正しいことをした女の子でしたが、気持ちは晴れません。

ここからの展開と物語に寄り添う絵が秀逸で、読み返すたびに幸せな気落ちに包まれます。

自分とは違う価値観を受け入れた瞬間にパッと世界が広がる、驚きとうれしさ。自分で自分の周りに作っていた壁を突破らった時に見える豊かな世界の美しさ。様々なものを伝えてくれる絵本です。

 

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「ハナミズキのみち」 浅沼ミキ子文 黒井健絵 金の星社

東日本大震災から10年が過ぎました。けれども、復興にはまだまだ時間がかかりそうに思います。

震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市に小さな図書館「にじのライブラリー」があります。その現地責任者でいらっしゃる荒木奏子さんが出版に尽力されたのが『ハナミズキのみち』です。

震災で息子さんを亡くされた浅沼さんの思いのたけの詰まった文章をお読みになったとき、とにかく浅沼さんを慰める本を出そう、出さなくてはいけないと思われたのだそうです。

荒木さんや浅沼さんたち「陸前高田『ハナミズキのみち』の会」の活動が実り、避難路に沿って2019年にハナミズキの木が植樹されました。

再訪を約束した陸前高田市の皆さんや、ハナミズキの花に会いに出かけられる日が早く来ることを願っています。

 

 

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