2022年7月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「おとなってこまっちゃう」 ハビエル・マルピカ作, 宇野和美訳, 山本美希絵 偕成社

メキシコは日本と同じく、男は男らしく、女は女らしくという考え方が伝統的に強い国だそうです。とはいえ、2021年1月の列国議会同盟のデータによると、メキシコは国会議員の女性比率が48.4%で、世界で6番目に高い国でもあります(ちなみに日本は9.9%で166位)。このように女性の社会進出が進んでいるメキシコで、現役の弁護士として活躍している母親を持つ女の子・サラが本書の主人公です。

人権派弁護士のママは世間の偏見に真っ向から挑み、サラの叔父(母の弟)のサルおじさんがゲイだということにも誰よりも早く理解を示しました。友だちの悪口を根拠もなく言えば即座にたしなめてくる、自慢のママです。 ところがおじいちゃん(ママの父親)が再婚することにしたと聞いた時、ママはかんかんになって反対します。ましてや相手がママと同じくらいの年齢の女性だと知ると、まったく聞く耳を持ちません。 なんとかしてママがおじいちゃんの結婚を受入れてくれるよう、別れて暮らすパパやおじさんを巻き込んで奮闘するサラの姿に、ハラハラさせられたりニヤリとしたり…。

とても楽しいコメディータッチの物語でありながら、性別や世代にとらわれず、自由な価値観や多様性を大切に生きていくことの素敵さも伝わってきます。

 

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4001プロジェクト

岡部忠利・真紀 (田井)

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田井に建つ岡部百貨店の岡部さんご夫妻です。忠利さんと真紀さんのおふたり。

岡部百貨店は昔から町の人々が必要な日用品を販売しているお店です。おふたりの左後ろには、どことなく郷愁を覚える品々の棚が見えますね。

町育ちの30代・40代の方々に聞くと、やはり子どもの時にとてもお世話になったという声が多く、町の方々の暮らしに根付いているお店であることが感じられます。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「小春日和にぽっかぽか」 砂浜美術館

美しいキルトが掲載されたこの冊子は、1996年11月に高知県黒潮町の砂浜美術館が発行したものです。砂浜美術館が地元の女性たちと企画した「こどもたちが選ぶ・潮風のキルトコンテスト」への思いを残しておきたいと作った一冊だそうです。

掲載されている受賞作品の中に、土佐町の山中まゆみさんの作品があります。

藍色の布を一つずつ繋ぎ合わせた「旅立ちの時」。

「早明浦の湖底に眠る柿ノ木の部落。山里のその小さな集落には、秋になると赤い実をたわわにつける柿の古木があり、いつの頃からかそう呼ばれるようになっていた。

大きな柿の木をいつでも見ることのできる段々畑には藍が穫れ、綿が育った。庄屋が住む広い屋敷の一棟は機屋になっており、おまつばあさんが主人の寝床をぬくめるために藍染の布を織った。

百年を経ても変わらぬ藍の青。柿ノ木の部落は古木と共に人造の湖の底に沈んでしまったけれど、女たちに愛された藍染はまるで誕生を繰り返すかのように女から女へと手渡され、その度に昔を語りながら生きてきた。」

まゆみさんは、おまつばあさんが藍を育て染めただろう布を川村千枝子さんから手渡されたそうです。川村千枝子さんは、さめうらダムに沈んだ集落の記録を「ふるさと早明浦」と題し、一冊の本にまとめられた方です。まゆみさんは、千枝子さんに聞いたお話と受け取った藍色の布からイメージを膨らませ、このキルトを縫い上げたとのこと。

まゆみさんがこの冊子を見せてくれた時、ちょうど編集部では、連載「さめうらを記す」を始めたところで、不思議なご縁を感じたことでした。さめうらダムに沈んだ集落の人たちの元を訪ね、話を聞き記録する連載で、柿ノ木集落の方からもお話を伺いました。その中の一人、川村雅史さんは川村千枝子さんのご主人です。

ご縁というのは本当に不思議で、尊いものです。この冊子が、実はつながっていたご縁の糸をもう一度結び直してくれました。

 

川村雅史さんの場合

*「秋になると赤い実をたわわにつける柿の古木」はこちら

「柿の木」の由来

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読んでほしい

朝の挨拶

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「おはよ〜」

早朝、玄関先から不意に朝の挨拶が聞こえてきた。その時、私は台所で朝ごはんとお弁当の準備をしていた。パジャマだったけれど「おはようございます〜!」と出ていくと、そこには大きなカボチャを抱えた人が立っていた。

「まだちょっと早いかもしれんけんど」

ずっしりツヤツヤのカボチャを受け取る。

「はい、これも」と手渡された袋の中にもカボチャ、きゅうり。

「わあ〜!ありがとうございます!」

お礼をまだ言い終わらないうちに、その人は「あ〜!今日もぬくいぬくい!」と言いながら玄関から出ていった。

 

軽トラの荷台にはチェーンソーやロープ、私には分からない山仕事の道具が積んである。これから山へ仕事に行くのだろう。

「熱中症に気をつけて!」という声に手を上げて、軽トラはあっという間に去っていった。

 

連日の猛暑、朝から仕事へ向かう途中に立ち寄ってくれたことのありがたさを噛みしめた。

今日も頑張ろう。そんな気持ちにさせてくれた出来事だった。

 

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「とさちょうものがたりZINE」の記念すべき10号目!

2017年の創刊以来、1年に2冊のペースで刊行してきた「とさちょうものがたりZINE」の10号が7月20日に発刊です。

今号は「土佐町のかたち」と題して、とさちょうものがたり編集長である石川拓也が撮影した写真約2年分をまとめました。

 

ZINE 10 56p フルカラーA4

 

02号と07号の、そのつづき

この10号は2018年発刊の02号、そしてその続編である2020年発刊の07号の2冊の「つづき」です。

この10号も前2作同様、「ポストカード」と「4,001」の2章からできています。

 

土佐町ポストカードプロジェクト  「土佐町の風景をポストカードに」と月に一枚撮影・製作をしています。ポストカードは町内の各施設で無料配布。住民の方々が遠方にお便りを書くことがそのまま地域のPRになるというプロジェクトです。現在6年目に突入し、70枚近くのポストカードを制作してきました。

 

p4-p5 土佐町ポストカードプロジェクト

 

4,001プロジェクト  「土佐町の住民を全員撮影する」ことを掲げ始まったプロジェクト。可能な限り、その方々の人柄や暮らし方などが表れるような写真を撮りたいと考えています。撮影した写真は当ウェブサイト「とさちょうものがたり」での公開・そして今回のようにZINEでの発表をしています。

 

 

p28-p29 4,001プロジェクト

 

 

住民の方々のお手元に

いつも通り、住民の方々にはこの時期に全戸配布されます。みなさまに少しでも楽しんでいただけたらうれしく思います。

町外の方々は、いつも配布をお願いしている施設に絶賛発送中です。お近くの施設で手に取っていただければ幸いです。

ZINE

 

 

 

 

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私の一冊

山門由佳

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「畑の一年」 向田智也 小学館

この春、畑で苗から育てて立派なキャベツができた! はじめての収穫体験は想像以上にうれしかった。もしかして、子どもを立派に大人に育て上げたような達成感に似ている‥のかな?? まだ育児は道半ばで、その達成感を味わうにはまだまだ時間が要るけれど。

しかしキャベツは立派に育ってすっかり食べ去り、こんなわたしでもあんなものができるんだ!とおおきな歓び、ちいさな自信へとつながった。またせっせとさつまいもやら生姜やら頂いたスイカ、オクラ、ナスの苗を畑に植えた。

元気がないとき、草むしりをする。 むしりまくっているうちに、元気が出てくる。土がわたしのなかのマイナスの氣を吸ってくれているように感じる。そしてありありと目に見えてわかる草むしりの成果も爽快。 あとごぼうを種から育てているけれど、なかなか成長がゆっくりで、どうなっていくのかこちらもまた目が離せない。やっぱり、畑は子育てに似ているかもしれない。大変だけど、興味深い。手間も時間もかかるが、大きくなるのが楽しみで、その過程こそ愛着の湧く源であり。

こちらの一冊は、季節とともに移り変わる畑の地上と地下の様子が描かれていて一目瞭然でわかりやすい。畑にたくさんの生き物たちが密接に関わり合いながら暮らしているのがよくわかる。人間の世界もおなじ。いろんな年代、いろんな性格の人が暮らしている多様性。畑を通して、人生や社会を感じられる。そんな壮大な話になってしまいました。

 

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「御神木に手を当てて、目をつぶってごらんなさい」

輪抜けさま」の取材の帰り、白髪神社の宮司である宮元序定さんが声をかけてくれた。

白髪神社の御神木は樹齢600年ほど、今まで何十回もの落雷を受けているそうだ。

 

御神木を見上げると木の幹同士がつながり、途中から二つに分かれ、上へ上へと伸びている。木肌は苔に覆われ、触れるとしっとり柔らか。苔と木肌の間をアリが動き、カナブンのような虫がゆっくりと歩みを進めている。

そのまま目を閉じた。

木肌の呼吸を感じる。頭上には蝉の鳴き声。山の水がかまちを流れる豊かな水音。頬を涼しい風が通り抜けていく。それまでざわざわとしていた胸のうちが、だんだんと鎮まっていくのが分かった。

この御神木は、この場所に立ちながら何を見てきたのだろうか。

そんなことを考えながら目を開けると、ふうーと深い息を吐いた自分に気付き、そのことに小さく驚いた。深い呼吸を意識したのは久しぶりだった。

ふと、来た道を見ると、しめ縄に結ばれた紙垂が揺れているのが見えた。そのもとには青々とした稲が広がっている。

 

宮元さんは言っていた。

「お白髪さまは見ていてくださっていますよ」。

来た時とは少し違う心持ちで白髪神社をあとにした。

 

 

輪抜けさま

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私の一冊

古川佳代子

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「ヴァイオリニスト」 ガブリエル・バンサン作,今江祥智訳   BL出版

プロ、アマを問わず、試合勝者へのインタヴューで時々「期待や声援を力に変えて頑張りました」という趣旨の言葉を聞くことがあります。そのたびに、すごいな~、強いな~と感じ入ります。

けれど気にかかるのは同じように努力し、期待され、応援されながら勝者にはなれなかった数多くの人たちのことです。違う場面で勝者となる人もいるでしょうが、勝者とならないまま舞台を去っていく人は大勢いることでしょう。周囲の期待を裏切ってしまうこと、そのなかでも親の期待に応えられないのは辛いことです。

それに囚われ、和解しがたい確執になってしまうこともあるでしょう。そんな厳しい状況で、生きあぐねているヴァイオリニストの青年が、世間一般の成功とはちがう視点で自分の音楽をみつめなおし、自身を認め、受け入れ、生きがいや居場所を見つけるまでを描いているのがこの絵本です。

たぐいまれなデッサン力を活かしたモノクロの画面と、孤独な青年のつぶやきが見事に調和し、素朴な、けれども力強い物語の世界を創りあげています。

 

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笹のいえ

一票への想い

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7月10日、人生初めて選挙の開票立会人になった。

集合時間は19時半、場所は役場となりにある町民ホール。

中を覗くと、ホール中央にある机上には町内各投票所から集められた投票箱が整然と並べられていた。その周りに票数をカウントする機械、記録用のパソコンなどがあり、準備はすっかり整っている様子だった。イベントなどで利用するときの雰囲気とは違い、緊張感のある場の空気に、僕は少々尻込みしていた。出入口でウロウロしている僕に気づいた知り合いの役場職員に手招きされて、所定の場所に座り、説明を受けた。

職員や関係者が次々と集まり、開票開始時刻を待つ。

開票立会人とは、票が適切に扱われているかをチェックする人たちのことだ。票数は正確か、記入された内容が有効か無効かを確認する。今回、立会人は7名。まとめられた票の束が問題ないかどうか、見落としがないように複数人で確かめ、持参した印鑑を押す。その後、票は別の職員に渡り、記録集計されていく。

開票時刻である20時の合図とともに、投票箱から一斉に票が取り出され、即座にまとめられていく。担当者たちによって、投票用紙はスピーディかつ正確に、政党ごと、候補者名ごとに仕分けられる。さらに専用の機械で数えられて束にされ、途中幾度もチェックを受ける。

ほどなくして、僕のところにも投票用紙の束が回ってきた。この地点で枚数間違いや候補者名が混ざっている可能性すでにほぼゼロだが、正確性をより高めるため内容を確認をする。クリップで留められた用紙には、同じ候補者の名前が異なる筆跡で書かれている。パラパラめくってみると、文字がアニメのように動いて見えた。

開票が後半になると、文字の判別が難しいものや白紙票、得票率に応じて比例配分される按分票(あんぶんひょう)など、特別な判断が必要な投票用紙がある。票はカテゴリー分けされた理由ごとにまとめられ、僕たち立会人は、その票が無効か有効かを選択。その判断を参考にして最終的に選挙長が決断を下す。

一文字でも間違っている票は当然無効票になるのだろうと思っていた僕は、職員の様子を見て驚いた。これらの投票用紙たちを机の上に並べ、ある人はその文字をどうにか解読しようとしていたし、またある人は資料と見比べて投票者の意思を理解しようとしていた。投票用紙一枚一枚が尊重され、投じられたその票をどうにか有効にしようと全力で向かい合っていた。一票の重みとはこういうことなのか、その姿に胸を打たれた。

その後も開票作業はまだ続いていたが、立会人としての一通りの作業が終わると、退室することになった。時計を見ると21時過ぎ。開始から一時間そこそこしか経っていないが、そうとは思えないほど濃厚な体験だった。

 

 

写真:蒸し暑い日の午後に、散歩がてら、近くの川まで水浴びに行くことにした。この時期はアブや蚊などがまだ少ないので、河原にいても快適だ。日々の平和な暮らしを、次の世代にも繋げたいと思う。

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私の一冊

西野内小代

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「世界の王室うんちく大全」 八幡和郎 平凡社

華やかな英国王室、美しいモナコ王妃(正確には公妃らしい)、王室離脱の醜聞等報道機関からの情報は限られている。

世界各地の王室の成り立ち、終焉等の詳細な経緯が記述されている。

王室の起源、変遷を可能な限り遡り現代へと繋げている。似たような名前がズラリと並び混乱してくるが、お勉強をしている訳ではないのでサラリと読み流す。

王室の内幕を垣間見た感ありの一冊です。

 

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