「高知県の山村を歩く」 武吉孝夫 高知県立歴史民族資料館
11月。 土佐町・南川地区にて長きにわたってつくられていた『百万遍味噌』のお手伝いを数日させていただきました。 南川地区は早明浦ダムをどんどん奥へと進み、大川村も越えてまた橋を渡って山の中へと入っていく、秘境と呼ぶにふさわしい地区でした。
はじめどんな方々が暮らしておられるのだろう、ちゃんとお手伝いできるだろうかと山が深くなるにつれ不安も高まり…けれども迎えてくださったのは皆さん明るく優しい方ばかりでした。
にぎやかだった頃の南川地区での昔話や、海外旅行にみんなで出かけた思い出話、野生動物たちとの日々の闘いと共生するしかない畑の様子…いろんなお話を聞かせてくださいました。
山奥での生活は買い物や通院をはじめさまざまな不便があるなか、助け合って仲良く暮らす南川地区の皆さんの暮らしが今もこの山の向こうで営まれているんだと思うと、愛しく尊い思いになります。
味噌作りの手伝いも、山水の水源の水量が厳しくなり予定より一週間早く終わってしまいました。そうしたコントロールできない自然、天候、野生動物と隣り合わせで暮らすこと。それは人間もまた自然のごく一部であり、自然の恩恵なしには生きてはいけないことを常々思い知らされ、決して奢ることなく生きておられる山村の民の謙虚さはそこからくるのだろうかと感じました。
この写真展を観に行った時は南川地区に行く前の自分。こちらの写真集を買って帰り今、見返すとよりリアルに感じる。 山村に暮らす民の温かさは、寒さに震えながら明るい黄色の可憐な花を咲かせる福寿草が思い浮かびます。