「通天閣」 西加奈子 筑摩書房
どうしょうもない人々が醸し出す得体の知れないエネルギーが溢れている大阪。帯に「えらいこっちゃ!」と書かれているのを見て、つい手がのびました。
夢を失いつつ町工場で働く中年男の俺。恋人に見捨てられてしまっても、まだすがりついていたいスナックで働く若い女。ある雪がヒラヒラと舞う夜、通天閣で自殺しようとしているダマー。俺は「死ぬなー」と言いながら、その言葉を俺に言って欲しいと思った。お互い気付いてはいないが、スナックで働く女は、昔、子連れの女と所帯を持った時のガキ。
ドラマチックかと思いきや大阪らしいオチもある。通天閣を舞台に起こった大騒動。
お正月明け、次男の家に冬休み中の孫の守りにいったとき、大阪のローカル番組だったと思う。通天閣下の立ち食いうどん屋さんが放映されていた。一杯170円。出汁のきいたうどんで、16年間値上げなしだという。一日も休み無く6年間通っている男性など、さまざまな生き様をもつ人ばかりで、コロナの間も閉めることはできなかったと店主。
本を読み終えたばかりだったので、身につまされた。
今、通天閣では耐震工事とあわせて、地上から4メートルの滑り台を造っているらしい。「えっ!そこにすべりだい」と思ったけれど、大阪らしいといえば大阪らしいと思いませんか?