2019年11月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

川村房子

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「ひぐらし先生 俳句教えてください」 NHK出版 堀本裕樹

テレビ番組の「プレバト」の俳句コーナーが楽しくて、手に取ってみました。

師匠であるひぐらし先生と弟子で料理上手なもずく君との、ほんわりとしたやりとりが楽しい俳句入門書です。

「ひぐらしメモ」

・切字…一句の途中で、または末尾で強く言い切る言葉。「や」「かな」「けり」等も随所に載っています。

百首以上の俳句も載って、俳句に興味あるかたには是非おすすめです。

もずく君の旬のものを使った料理もいいですよ。

川村房子

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私の一冊

鳥山百合子

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「エルマーとりゅう」 ルース・スタイルス・ガネット 著, ルース・クリスマン・ガネット絵 福音館書店

以前紹介した「エルマーのぼうけん」の続編です。

動物島からりゅうを助け出したエルマーは、家に帰る途中に嵐にあい、カナリア島にたどり着きます。その島にはりゅうの大好物「スカンクキャベツ」と「ダチョウシダ」が生えているそうなのですが、「スカンクキャベツ」という文字面が面白く、そして「スカンクキャベツって何だか美味しそうだな」と子ども心に思っていました。

カナリア島は名前の通りカナリアが住んでいる島なのですが、カナリアの王様が代々知りたがっていることがあり(歴代の王様たちは皆「知りたがり病」で亡くなりました)、それが何なのかを知りたいと思っているカナリアたちみんなも「知りたがり病」にかかっているとのこと。

王様は何を知りたがっているのか?

王様はエルマーにその秘密を打ち明けます。

物語の後半にその秘密が明らかになりますが、白黒のイラストと手書き文字で書かれているそのページはとても魅力的です。白黒で印刷されているのに、まるでそこに色があるかのように見えてきます。

まさにお話の力。エルマーの世界はとてもゆたかです。

鳥山百合子

 

鳥山百合子

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笹のいえ

五右衛門風呂

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今更感がありますが、うちのお風呂は五右衛門風呂。

引っ越しにあたり、住む家の理想条件のひとつが薪風呂だったから、願ったりだった。ただ、もともとあった風呂釜はヒビが入っていたし、その他にも直したい箇所があったので、五右衛門風呂作成経験者の知人たちと改修することになった。

実際解体してみると、古い釜を取り出すだけでも重労働であることが分かった。周りのタイルやセメントをトンカチやドリルで打ち砕き、外に運び出して、釜の下にある釜戸も取り除いて作り直した。

釜戸はサイコロ状にした粘土で成形していく。粘土は柔らかいときは変形しやすく扱いやすい。そして乾燥すると硬くなり熱に強く、高温になる焚き口には適している。奥行きを80cmほど取り、長い薪も入るようにした。予め購入しておいた鋳物製小判型五右衛門風呂を二人掛かりで運び入れ、排水しやすいように少しだけ傾けて据え付ける。それからその辺に転がっていた大きめの石をセメントで固定していった。

煙道は作らなかったので熱効率は悪いが、浴槽の側面が熱くならず、子どもにも安心だ。

釜の下から熱するため、入浴時に直接底を触ってしまうと火傷する。蓋を沈めて、その上に座るようにして湯に浸かる。ただうちのは木製なので、ある程度の体重がないと蓋が浮かんでしまう。改修当初の五年前、親と一緒でないと入れないほど小さかったうちの子どもたち。今では体重も人数も増えて、自分たちだけで入れるようになった。こんなところでも成長を感じてしまう。

五右衛門風呂最大のおすすめポイントは、遠赤外線効果だ。

薪で沸かした湯は、身体の芯から温まる。時間を掛けてじっくり入れば、湯上がり後もしばらくぽかぽか、じんわり汗をかいてしまうほどだ。だから夏はお湯を浴びる程度にしてる。薪がもったいないので、近くの川で水浴びして、お風呂がわりにすることも多い。

笹に引っ越す前に住んでいたアパートはガス風呂だった。真冬は、いくら長風呂をしても湯冷めをしてしまって困った(体質によるのかも知れない)。寒い日が続くと、車を何十分も走らせて温泉に行くのが楽しみだった。けれど、五右衛門風呂にしてから温泉欲がピタッとなくなった。熾火から発生する遠赤外線が心も身体も温めてくれた。

冬の気配を感じる季節となり、お風呂に入るのが嬉しい季節だ。

翌朝の贅沢な楽しみが、朝風呂。夜、皆が入り終わってから薪を一本加えておく(この辺が贅沢)と、翌朝も温かい風呂に入れる。窓を全開にして、湯気の立ち昇る浴槽から、夜が白々と明けていく向かいの山々を眺めるのもオツなものである。子どもたちにも人気で、いつもは布団から出たがらないくせに、「お風呂あったかいよ」と声を掛けると、飛び起きて来る。釜戸の火はすでに消えているので、蓋なしで入れるのも、子どもたちにとって嬉しいらしい。蓋がない分いつもより深くなった浴槽で潜ったりして遊んでる。

残り湯は洗濯に使っている。冬の山水は、とびきり冷たいので、この湯温はありがたい。最後の最後までこの温かさを利用させてもらう。

 

写真:2014年撮影。脱衣所の床に柿渋を塗るお手伝い。弟に刷毛を取られて不満顔の姉。

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私の一冊

西野内小代

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「テンプル騎士団」 佐藤賢一 集英社新書

映画などでもとても印象深い「テンプル騎士団」とは何ぞや?(世界史で少し習った記憶はあるけれど)

少人数で任されていた警備の依頼から始まった組織が、みるみる組織だった軍事力と豊富な資金により強大化していき、銀行のような財務管理まで任されるようになりフランス王家や教会をも掌握して行く過程が詳しく記されています。

巨大化し過ぎたが故に弾圧され、悲惨な末路を遂げ、世界史から葬り去られたけれども、テンプル騎士団の卓越した航海術によりヴァスコ・ダ・ガマやコロンブスの偉業が達成された事はあまり知られていないようです。

西野内小代

 

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くだらな土佐弁辞典

ひだるがつく

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ひだるがつく

ひだるは西日本やこの地域に伝わる妖怪・憑き物。人間に空腹感をもたらすと言われています。

山の中を歩く際に、ひだるがつくと体が動かなくなるそうで、そのための対策としてお弁当の中身を全て食べ切ってしまわないで、帰り道のために少しだけ残しておくように、という教えがあったそうです。

*これは、土佐町社会福祉協議会の上田大さんが教えてくれた土佐弁です。「おじいちゃんが言ってた。ひだるが来たらいかんき、一口(お弁当を)残しておく、って」。

 

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私の一冊

田岡三代

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 「やっぱり高血圧はほっとくのが一番」 松本光正 講談社

「クスリ」は下から読むと「リスク」。血圧を下げるために自分のすべき点。

①体重を落とす
②睡眠不足を解消する
③塩の摂り過ぎに注意する
④ストレスをストレスと感じないようにする(何があっても笑い飛ばしましょう)

こんなことを書いてました。
…わかってるんだけど…。

田岡三代

 

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2019年11月10日、今年で35回を迎えた土佐町「さめうらの郷湖畔マラソン大会」が開催されました。

晴天に恵まれ、紅葉で色づき始めた早明浦ダム湖畔をたくさんのランナーの皆さんが走り抜けました。

遠く栃木県や東京都、大阪府や広島県、そして高知県内から1000人以上のご参加をいただきました。ランナーの皆さん、本当にありがとうございました。

 

写真提供:澤田智則

大会委員長の高石清賢さんは「走ったランナーの皆さんが満足感いっぱいで帰って頂けることが、我々の至宝です」と話します。

このマラソン大会は、ランナーの皆さんはもちろん、たくさんの人たちの協力のもと成り立っています。事前準備、申し込み受付、駐車場への配慮、コース整備、当日の運営、ランナーさんの安全管理、ランナーの皆さんへのおもてなしなど、たくさんの地域の方々もボランティアとして参加してくださっています。

まさに町をあげてのイベントのひとつと言ってもいいでしょう。

 

写真提供:澤田智則

今年も「ブレイク」の皆さんが自転車で伴走しながらランナーさんの安全を守ってくれました。保育園から小学生、中学生、高校生、大学生。あらゆる世代の子どもたちが、大会審判長で「NPOさめうらプロジェクト」の辻村幸生さんの元、頼もしく育っています。

 

 

私たち「とさちょうものがたり」は、今年も大会記念Tシャツを製作させていただきました。今年はグリーンの生地に、土佐町に生きる自然を描いたデザイン。土佐町の障がい者就労支援施設どんぐりと大豊町のワークセンター・ファーストのメンバーが、手で一枚ずつシルクスクリーン印刷したものです。

多くのランナーさんに大会参加応募の際にご購入いただいていましたが、当日会場でも購入できるようにブースを出させていただきました。

同時に土佐町オリジナルTシャツやとさちょうものがたりZINEの販売、土佐町役場で毎月1枚発行しているポストカードも並べました(土佐町役場で無料配布しています)。ポストカードを手にして「この場所に行きたい、これはどこですか?」とか「持って帰って玄関に飾ります!」という声をいただき、ひとつのものが誰かの元へ届く喜びを感じました。

昨年お会いしたランナーさんが「今年もきましたよ」とお店をのぞいてくださったり、昨年製作したブルーのTシャツを着てくださっていた方もたくさんいて、とても嬉しいことでした。

 

 

同じ職場で参加してくださった皆さん。「このサイズがいいんやない?」と互いの背中にTシャツを当てながら選んでいる姿はとても微笑ましかったです。

 

早明浦ダムの上からスタート!

 

司会の谷泰久さんがゴールした人を迎えます。谷さんは土佐町の人たちや子どもたちにスポーツの楽しさを伝える活動を長い間続けています。「やっちゃん!」と街角で声をかけられることもしばしば。子どもから大人まで、たくさんの町の人に愛されています。

 

走り終わったあとは「おもてなし」。土佐町湖畔りんご園のりんごや、土佐町の銘酒「桂月」が待っています。地域のボランティアの皆さんがこのブースを支えてくれています。

 

 

ランナーの皆さん、土佐町に来てくださってありがとうございました!

また来年もお会いできることを心から楽しみにしています。

 

 

*2019.11.11~2020.1.22まで、参加ランナーさん限定で湖畔マラソンの写真がダウンロードできるようになっています。当日配布されたパスワードを入力してご覧ください!

さめうらの郷 湖畔マラソン2019 P1

 

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土佐町ストーリーズ

竈ヶ森と粟神楽(峰石原)

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現在の芥川が十郎丸と呼ばれていた養老年間のこと、兄九郎丸は黒丸に住み、弟十郎丸は十郎丸(芥川)に住んでいた。

ある年のこと、不作で食べる物もなくなったことがあった。十郎丸の子(一説には九郎丸の子)粟丸が三宝山に行きお願いしたところ、どこからともなく老人が現れ「粟を汲み切り、一升まけ。そうすれば秋には、三石三斗三升の収穫があるであろう。そのお礼に粟の神楽をしなさい。粟神楽とは、清浄な所に竃を作り、三升炊きの羽釜に三升三合三勺の粟を十二回洗ってコシキに入れて蒸し、湯の沸き上がる時に神々を招けば、神々が喜んで召し上がる。もし粟神楽をしない時は、命はないと思え」と告げて、姿を消してしまったという。

そして、秋の取り入れをむかえ、その年は豊作だった。それで約束通り、粟神楽を行った。その竃を作った所が、竈ヶ森(へっついがもり)である。

 

また、竈ヶ森には次のような話もある。

清水村(現在の吾北村清水)に名剣を持った浪人が、度々山へ行って殺生をしていた。

ある日のこと、二羽の山鳥が激しく浪人に襲いかかってきた。浪人は名剣で斬りかかるが、山鳥は刀先をかわし、尚も襲いかかる。半時ぐらい争ったであろうか、やっとのことで一羽の山鳥の片羽に切り込んだ。そして、その山鳥は竈ヶ森で傷ついた羽を休めていた。そのことを知った浪人は、その山鳥を追って山に入り、行方不明になったという。大神は、もう一羽の山鳥に乗って、竈ヶ森に着いたという。

傷ついた山鳥は、水を欲しくて飛ぼうとするが羽ばたけず、周りが六尋の杉の大木に喰いついた。すると、その杉の根元から泉が湧き出て、山鳥はその水を飲んで傷を直したという。

この泉からできる湿田には、夏になると蚊にくわれないために、泥まみれになりに猪が来る。

ある時、そこに現れた猪を殺生人が待ち構えて撃った。泉は血で真っ赤に染まった。大神は怒り、たちまち暗闇になったかと思うと大雨となり、稲妻の光に恐れをなした殺生人は、家に着くと間もなく息絶えてしまったという。

町史

 

筒井賀恒 (東石原)

 

*賀恒さんのことを書いた記事はこちらです。

高峯神社の守り人 その1

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私の一冊

鳥山百合子

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「心ふるえる土佐の味」 小島喜和 高知新聞社

高知県出身の小島さんが“K+”というフリーペーパーに連載した高知県の料理の数々、お母さんの味が詰まった一冊です。

小島さんは高知県の海沿い町で育ったとのことですが、山沿いのこちら土佐町の食卓にのぼる料理や食材も色々登場します。海沿いも山沿いも、「高知」という土台でつながっていることを感じます。

きし豆茶、東山、リュウキュウと茄子の酢の物、四方竹と油揚げの煮物…。

中でも驚いたのは「冬苺の三角寿司」。ちょうど11月頃から日陰に実る赤い冬苺。子どもたちはこの苺が大好きで、手のひらにいくつか集めてから一気にパクッと食べる、甘酸っぱい冬苺。その葉っぱを使ったお寿司があるなんて知りませんでした。冬苺の葉で寿司飯を包むそうですが、こうすることで葉の表面にあるチクチクとした小さな棘が、すし飯が崩れぬよう守ってくれているのではとのこと。なるほど!どんな味がするのかな?今度冬苺を見つけたら葉っぱにも注目してみようと思います(表紙の写真が「冬苺の三角寿司」です)。

それからもう一つ「新生姜の天ぷら」!夏の新生姜をスライスして粉とあえて揚げるだけ。なんて美味しそうなんでしょう!来年の夏、試してみようと思います。

その土地ならではの食材や調理方法を知ることは、ちょっと新しい自分になるようでとてもうれしい。

高知の食材のゆたかさに出会うたび、高知県に来て良かったと感じています。

鳥山百合子

 

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笹のいえ

新米

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毎年お世話になっている地域の農家さんに乾燥と籾摺りをしてもらって、ついに新米が食べられるようになった。

11月上旬、よく晴れる日が続いたので、稲はすでに十分乾燥していた。しかし、天日干し米は場所によって、乾燥具合にムラが出るので、保存性を良くするために機械でも乾燥させることにしている。

今年は天候の影響で、全国的に豊作とは言い難いシーズンだったらしい。笹の田んぼも例年に比べるとだいぶ収量が少なかった(うちの場合、栽培方法などにも改善点があったのだけれど)。それでも、主食であるお米を自分で育て、収穫し食べられると言うのは単純に嬉しいことだ。

新米が入った真新しい米袋を、よいしょよいしょと縁側に運んだ。所狭しと積まれた袋を眺めて、これから一年間このお米を食べていくのか、と実感が湧いてくる。文字通り、僕ら家族の血となり肉となるのだ。

早速新米を味わいたいところではあるが、ありがたいことに去年のお米がまだ残っているので、もう少し先となりそうだ。

ちなみに、今シーズンの収量は、約十俵(約600キロ)。反当たりの収量だとおよそ四俵と言うところだ。一般的な米農家さんの七〜十俵と比べるとだいぶ少ない。より収量が上がるよう、さらなる精進が必要である。

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