(仮)鹿の角商会

(仮)鹿の角商会

第6話 あるよ。

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いいことがあれば、立て続けにいいことがある。

嫌なことがあれば、立て続けに嫌なことがある。

そうやって在るところに集まってくる。

 

 

みたいな感じで、ナゾの連鎖に巻き込まれている。

 

 

あるよ。

鹿の角でいろいろやりたいなーということで、『できるだけ数がほしい!』みたいな感じのことをFacebookでアピールしていたら【あるよ】と連絡をもらった。

どこかにはあるだろうと思ってお願いをしておきながら、『あるんや!』と謎にテンションがあがる。

 

わざわざ連絡をくれたのは、土佐町の中でもかんなり奥地に住んでいる【高橋通世】さん。

 

鹿の角をもらうハイ(ランナーズハイみたいなことが言いたい)になっている僕らは、さっそくもらいに行くことに。

 

茅葺屋根

通りかかった茅葺屋根の家

 

たぶん、何か理由を見つけてきては、遊びに行きたいのだと思う。

【鹿の角をくれる】ということはもちろん嬉しいのだけど、それをきっかけに新しく誰かと繋がったり、

心がほっこりする場所に出会ったり。

 

 

そんなことを思いながら車を飛び降り、きれいな景色に見惚れて、最高にリラックスしまくっていたこのとき、

少し道に迷ったりもして待ち合わせ時間に遅刻していた。

 

ようやく(散々楽しんで)高橋さん宅へ到着したとき、『家、わかりづらいと思って』とわざわざ道まで出てきて待ってくれていた。

さっきのリラックスと今の罪悪感とで、無になった。

 

高橋さんのところへ到着

 

『ようきたね』と笑顔でおっしゃる高橋さんの絶大な優しさに、
道に迷ったあげく素敵な場所を見つけたから寄り道してバカみたいにニヤニヤして、その間ずっと道で待たせていたことに許しを得た(気になった)ので、さっそく鹿の角を見せてもらった。

 

鹿の角を見せてもらう

彼は真面目に説明をしてくれているのであって、決して怒ってなどいない。

 

なんでも猟師の勲章として、狩った獲物の角を保管していたよう。

『そんな大切なもの、もらっていいんですか⁉︎』って聞いたら、

『なんとなく取っておいてるけど、あっても使わないし』みたいな感じのことをおっしゃって…

 

このゆるさ最高だなと思いました。

たぶん、物事が進まないときは【ゆるさ】が足りないんだろうなと思う。
と言うか、いろんなことを足しすぎて動けなくてなっていくんだと思う。

結局どうなるかわからないんだから、あれやこれやピーチクパーチク頭の中で騒ぎ立てるその前に、
感じたままにやってみたらいい。

良いことも悪いことも、頭の中だけで想像するだけのそれは、どうせその通りにはならないし。

(いい感じのゆるさを持っている高橋さんは僕らのために、埃をかぶってた鹿の角をわざわざ綺麗に洗ってくれていたりする、愛しさと切なさと心強さとを兼ね備えた人です)

土佐町の奥地を案内してもらう

愛しい話しと、切ない話しと、心強い話しを聞きながら散歩した(石川さんが)

 

やっっっぱり、あるよ!

高橋さんに別れを告げ、このあとご近所さん宅へ遊びに行くことに。

『最近どう?』みたいな、内容なんてどうでもいいコミュニケーションが目的みたいなご近所トークをしてたら、

その話しの中でぼくが『工具を探しててさー』みたいな話しをしたとたん、

【工具あるよ】の一言。

大工さんだしあって当たり前なんだけど、『あるんや!』とやっぱり謎にテンションがあがる。

 

森岡拓実

近所で大工さんをしている【森岡拓実】くん(ぼくが撮った写真)

 

ぼくが撮った写真でも十分に拓実くんの良い感じなのが伝わると思うのですが、ほんのちょっと暗いので、
あくまで参考程度に、この日一緒だった写真家の石川さんが【4,001プロジェクト】で撮った明るい写真も載せておきます。

 

『何がいるの?』と言ってくれるので、とりあえず必要なものを片っ端から言ってみました。

 

『ハンマー!』【あるよ】

『ノコギリ!』【あるよ!】

『ヤスリ!』【あるよ!!】

『ドリル!』【あるよぉぉっ!!!】

 

だんだんテンポが早くなっていく笑

 

言ったものが次々あるもんだから、おもしろくなって笑っちゃってたら、

拓実くんも途中から笑いながら『あるある笑』って、なんかようわからんけど最高に楽しい。

 

拓実くんに工具をかしてもらった

一瞬でぜんぶそろった。

 

 

ちなみに『作業台!』って言ったら、

今はないからつくっちゃるわ!

ですって。

神かよ。

 

 

 

2日後。

木で机をつくってもらった

作ってもらった木の作業台の、最初の使い方。

 

モノが良すぎてビビる。

 

 

 

『あれがない』とか『これがない』とか、そうやって【やりたいこと】をやらない言い訳ばっかりならべてないで、

やりたいようにやってみたら、それをおもしろがってくれる人たちが【ある】を起こしてくれる。

 

写真家の石川さんは『いい被写体に出会うのも写真家の仕事だ!』みたいなニュアンスのことを言っているけれど、

この日の夜、鹿の角をくれた高橋さんから石川さんに電話がかかってきて

『家に鳥が巣をつくってて、雛が生まれたんだよ!言うの忘れちゃって…』

やっちゃう人のところにはある。

 

 

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鹿の角でダーツの旅をするイメージ図
(仮)鹿の角商会

暇を持てあました鹿々の遊び

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うるうるやぁいやぁいよ~ぷいぇ~♪

 

うるうるやぁいやぁいよ~ぷいぇ~♪

 

 

 

とにもかくにも、前回つくっ(てもらっ)た鹿角USBの試作品がコレだぁ!

鹿の角USBの試作品

サイズは適当、感じは重要!

 

いろんな形の、鹿の角USB

いろんな種類(のイメージ)

 

鹿の角にUSBを埋めこんでいく作業をちゃんと書こうと思っていたけれど、
ちゃんとしようとすればするほど、なんだか勝手に疲れてきちゃったので、
結果の写真を貼り逃げ。

 

鹿の角USB報告会。

 

つくった試作品の数々を、プロカメラマンの石川さんに見せる。

 

鹿の角USBの試作品を見せる

撮り慣れてるけど、撮られ慣れてない人

 

「いいね」「いいねっ」「いいねー」「これいい!」………エンドレス。

 

こんな中身がない、試作品をいじくりまわして、ただただ爆笑する報告会なんて初めてだなーなんて思いながら、
あっ、ただ遊んでるだけだった!と我にかえる。

 

 

こんなふうに鹿の角で遊んでいると、すぐに足らなくなる。

最初にもらった鹿の角は2本と半分

最初にもらったのは2本半

 

 

どこかに鹿の角ないやろか?ってことで、このあと【鹿の角をください】という態度を全面に押し出しながら、
しばらく生活してみることに。

 

後日。

さすがはプロカメラマン。
撮りたい写真のために普段からアンテナをはり慣れているのか【どこどこの◯◯さんが大量に持ってるらしい】という情報を、
さっそく掴んできた。

 

ぼくには【よく田んぼに落ちてるよ】っていう、なんとも言えない情報しか入ってこなかった。

 

 

あの郵便局まで、いってらっしゃい!

 

ぼくは基本的に暇だ。石川さんも根本的に(フットワークが軽くないとできないお仕事なので)暇だと思ってる。

 

ブゥーー。ブゥー。携帯のバイブがなる。

『もしもーし』

「あっ、今なにしてる?」

『暇してるよー』

「いいねー、なら今から鹿の角もらいに行ってみよう」

『オッケー!!』

 

暇LOVE暇

 

暇を持て余すことに最高の価値を感じているあたり、たぶん世間的には最低で、個人的には最高の人生だなと思う。

 

鹿の角でダーツの旅をするイメージ図

ダーツの旅みたいなやつ。

 

うるうるやぁいやぁいよ~ぷいぇ~♪

 

うるうるやぁいやぁいよ~ぷいぇ~♪

 

鹿の角を大量にもっているという人を訪ねて

『第一村人発見!』とかはしゃいだのは、言うまでもない

 

鹿の角を大量に持っている人は【この辺りで目印は郵便局】という、だいぶフワッとした情報なので、
所ジョージのTV番組【笑ってコラえて!】に染まりまくってるぼく(ら)は第一村人に聞こうと思ったんだけど、

後ろから車が来ていることに気づきつつ(振り返って目があったからね!)それでもしばらく道のど真ん中を歩き続けるこのおじいちゃんの強者っぷりにビビって聞けなかった。

 

 

 

それからしばらく車を走らせると、

『あっ、これちゃう!?』となり、

『覗いてみよう!』となり、

『キャッフー♪』となった。

 

鹿の角を大量に持っている方のお宅を発見した

キャッフー♪

 

めっちゃあるやん!壁にめっちゃ掛かってるやん!何頭分?何頭分なん!?

とかやってるこの時、このお宅のご主人からすれば、
【かってにやってきた見知らぬ男ふたりが、テンション高げに騒いでいる】という、
非常に怪しい状態なので、さっそく挨拶をしに行くことに。

 

こんにちわー!と言いながら玄関を探したんだけどわからず、
ズケズケと庭先に入っていき、窓ごしに『こんにちわー!ぼくたち鹿の角で〜』とこちらの都合を一方的に話した上で
『車庫の鹿の角、見せてください!』と無粋なお願いをしたにも関わらず、
「ええで!」と案内してくださる山下さん、神かよ。

鹿の角をもらう

鹿の角の説明を、聞いていないようにみえて聞いている。

 

「この鹿は大きいてなー」

『あのー』

 

「こっちの角はなー」

『もしー』

 

「ほんでこっちの角のこの色はなー」

『いらない角があればー』

 

「この鹿の角なんてそりゃーもうー」

『ください!』

 

「ええで!」

『ありがとうございます!』

 

それぞれは全くバラバラなこと話しているんだけど、全体的に見たら同じ会話をしていて、
それが急にギュンっ!って繋がるときのあの感じ、なんて言ったらええねやろ。

 

「これやるわ!」

『(1本…)他にもあります?』

 

「んーこれもやるわ!」

『(2本…)もう一声!』

 

「ほなこれとこれと!」

(くれるペースが早くなっていく)

『もっともっとー!』

 

鹿の角を大量にもらう

大 量 に も ら っ た 。

 

ぼくはただ、楽しく遊びたいだけ。

 

この記事を書くにあたって、余計な気を使ってしまった。

今回、鹿の角をくださったのは、本山町の汗見川に住んでらっしゃる【山下文一】さん。

【とさちょうものがたり】で本山町の方の話を書くのはどうなのか?なんてことが頭によぎって筆が進まなかった。

 

だけどよくよく考えてみれば、ぼくは【土佐町】ってものにこだわりなんか全然なくて、
好きなところは好きだし、嫌いなところは嫌いだし。

そうやって好きなところに住んでたらそれが土佐町だっただけの話で、
そこには【町】の違いなんてどうでもいい。

 

【あるひとつの視点】から見れば、たぶん【町】の違いは大きな違いなのかもしれないけれど、
そんなことはぼくには関係ないし、頼まれてもいないのにかってに気を使って、かってに自分を縛ってたらバカみたい。

 

ってことでこれからも、余計な気は使わないでいこうと思います!

 

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ペッパーくんとアタッシュケース
(仮)鹿の角商会

第4話 アタッシュケースと鰹節

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前回のあらすじ。

鹿の角のUSBをつくるってことになったけど、何から始めたらいいのかわからないから、近所に住む康富さんにヘルプを求めてみた。

 

鹿の角をノミで削る様子

削ってみたり(康富さんが)

 

ドリルで鹿の角に穴を開ける様子

ドリルで穴を開けてみたり(康富さんが)

 

つまり他力本願であれこれやってもらう、その続きです。

 

計画的なんてつまんない

 

あまりにも何も決めずに康富さんの工房へ突撃したので、『イメージを具体的にしよう』ってことで会議。

 

飲みながら会議をする

(居酒屋さんで)会議!

 

 

 

夜桜を見ながら会議

(夜桜で)会議!!

 

 

そうやってあまりにも完璧に仕上がってしまったイメージ図がこれ!

 

鹿の角USBのサイズイメージ

まさに完璧。

 

と、こんな写真を載せてみて『何をバカ正直に、わかりやすい写真を選んでるんだ!』と心の声がする。

『世の中演出だろう!いかにも“やってます”アピールを自然な感じで見せる写真を出せ!』って声に従ったやつがこれです。

作業場で鹿の角の設計図を広げる

(場所の力ってすごい)

 

この図の詳細を説明しようと思っていたけれど、そんな事務的な説明なんておもしろくないし、

この暑さで気がのらないのでやめておきます。

 

と思ったのだけど『説明はあったほうがいいよー』って言われてしまう気もするので、

あとから人に言われて書くのはさらに気が滅入っちゃうから、

『つまらないなー』って気持ちを誤魔化しながら書くことにします。

土佐町役場のペーパーくん

まったく関係ないですが、気が滅入ってるイメージです。土佐町役場のベッパーくんです。

 

【持ち心地を考えて、長さを3パターン(50mm・80mm・120mm)】

迷ったときの3パターン!

 

両極端な答えに挟まれた、みんな大好きその真ん中のふわっとした答え。

『やるorやめる』みたいな選択をせまられたとき、自分を正当化させる理由をあれこれ並べて…

つまり、ブーブー言いながらやる気もないままやり続けちゃうあれ。

ぼくも例にもれず、80mmが良い理由をあれこれ考えながら、このサイズがいいなと思いました。

鹿の角を切って、長さによる持ち心地を確認する

自分の手のひらに合わせた、自己中サイズ

 

【鹿の角を切った面の加工を5パターン(カドをとる・尖らせる・革を張る・金属で蓋をつくる・鹿の角で蓋をつくる)】

なぜこれは5パターンかと言うと、たまたまそうなったから!

 

思いついたことを、わざわざ説明しようとすればするほど、なんだか濁っていくような感覚があるので、ここはざっくり流します。(正直、説明するのに飽きてきただけです)

 

この日はカドを磨ききれなかったので、持ち帰って磨いたり、

鹿の角を紙やすりで磨く

色は紙ヤスリの色がうつってる(これはこれで好き)

 

このペースで磨いて尖らせるのは無理だなと、潔く諦めたり、

 

案の定、康富さんが

皮を鹿の角に合わせて切る

革を切って

 

鹿の角に皮を貼って、さらに切って整える

張ってまた切って

 

皮に糊をぬって、磨く

超高速で磨く!

 

ふだんはスローリーな彼が、いきなり超高速で動きはじめたときの衝撃さえ伝わっていればそれでいい。

 

そしてぼくが

鹿の角に革を張った

手柄を横取りする

 

ふーっ、決めたとおりのことをただ説明しようとすると楽しみきれない…

 

ワケがわかんないほうが素敵

 

ブレイクタイム!(このまま楽しい気分で終わります)

 

「鰹節いる?」

ふと投げかけられるこの言葉。

目の前に豆腐がないのにこの言葉を言われたのは、人生で初めてだ。

さらにそう言われながら目の前にアタッシュケースを置かれることは、前世でも経験がなければ、たぶん来世でもないと思う。

 

アタッシュケースの中から鰹節

アタッシュケースから鰹節

 

問いなのか?

答えばかりが求められているこの世の中で、問いに生きるのか?

 

アタッシュケースとは何なのか?

そもそもカバンとは何なのか?

そこに入れるものなんて決まってないはずなのに、ぼくらは無意識に『カバンに鰹節はいれない』と思い込んでいた?

鰹節は豆腐にしか使わないと、今まで真実だと思っていたことは真実ではなかった?

鰹とサザエさんのカツオとは違う…

鰹節の『節』って何?

どうして昔の人は、とれたての鰹をわざわざ節ったのか?

海は生命のカバン…⁉︎

鰹節…お前はいったい…

 

鰹を削って鰹節

すんごくいい感じに削れる

 

うますぎるっ!!

ペッパーくんとアタッシュケース

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軽やかに小走り
(仮)鹿の角商会

第3話 鹿角パラダイス

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前回の記事の翌日のこと。

昼すぎに工房にいきます!と伝えた。

この感じが大好きだ。

 

朝日が昇ったら活動して、日が沈んだらゆっくりする。

そんな(自然とともに生きてる)生活のこの地域では、時間の縛りがゆるい。

 

昼過ぎが何時かは知らんけど、お昼を食べてちょっとゆっくりしたら、それが昼過ぎ。

どこかでは決めてないと許されないことも、ここじゃ決めなくていいことが沢山ある。

 

決めなくていいから『決めなきゃ!』『守らなきゃ!』って負担がないから、かってに決まっていくことも沢山ある。

【ノリ】とか【勢い】とか、そうやってマイペースに決まっていくことの中に、自分が表れている気がする。

 

真面目な不真面目

 

久しぶりにこうやって書いたりすると、つい肩に力が入って【いいこと】言っちゃいたくなる。

狙って書く【いいこと】ってだいたい狙ってる感が伝わるから、『あーバレたら恥ずかしいなー』とか思っちゃうんだけど、

恥ずかしいことって案外おもしろいから、そのままにしちゃおう!

っていう言い訳をしながらこうやって『恥ずかしくないための先手』を打ってる自分…

 

たぶんぼくは、もっともっとふざけたいのだと思う。

約束とか平気ですっぽかすくらいのマイペースなら、もっとおもろいことが起きそうだなーなんて思いながら、

『昼過ぎ』に合わせてせわしなく用意をする(急ぎながら、ちょっと遅れるパターンのやつ)

 

『今から出ます』とだけ伝えて家をでる。

急に『今から』と言ったもんだから、当たり前だけど到着してからしばらく待つことになった。

 

ぼくは待つことが嫌いじゃない。

待つのが好きって言うとなんか違うけど、ただ待っているだけの、ただ【暇な時間】はけっこう好きだ。

いつもの町を雨ごしに、雨音を聞きながらぼぉーっと眺めて『雨だなー』とか、

山に霧がかかってるのをみて『どこまでが雲なんやろ』とか、

待ってるあいだは何の予定もないもんだから、まったく用事がない方角をみては『あっちの道は行ったことないなー』とか。

【とうでもいいことを、どうでもいいままに楽しむ】そんなつかの間に、贅沢さを感じて嬉しくなる。

(だから待たせたときも、きっと楽しんでるだろうなーって思っちゃうから、そんなに罪悪感ないですごめんなさい)

 

近所の神社

暇を楽しんでいるときに撮ったやつ。

 

大人の玩具箱

思ったままのことを言葉にしただけで、なんか下ネタっぽくなる病気があるなら治したい。

 

『お待たせしましたー♪』

坂道を康富さんが下ってくる。

軽い、軽すぎる。

表情、声のトーン、体のしぐさ。その全部が軽い。

 

軽やかに小走り

この軽やかさが最高。

 

【軽そうに見えて、実はやる奴】みたいなんがあるけど、

そうやって『フットワークが軽いから、やって(その中のどれかが当たって)あたりまえやな』みたいなことを思う。

 

ぼくはこの日、はじめて康富さんの工房にいったのだが、工房っていうより【大人のおもちゃ箱】って感じ。

レトロな電化製品や長ーいスケボー、軍隊もののあれこれに、でっかいエアガン。

手が届くところに好きなものが、ところせましと密集してる。

 

彼がつくった『何コレ?』と思わずニヤニヤしちゃうおもしろグッズに、

作りかけの皮の財布(皮の財布つくってるとこ見たことなかったから、ここぞとばかりにイジイジした。誰のか知ってるけど)

そんなモノ達が、仕事用の工具とごちゃまぜに置かれているもんだから、そりゃーもうぜんぶが遊び道具にみえる。

 

差し入れしてもらったお菓子

いいんですか!奥さん!(お菓子の差し入れをいただいた)

 

『好きなものに囲まれてると幸せだよね』

何あたりまえのことをあたりまえにやっちゃってる場所で言っちゃってるんだか…その通りです!!

 

好きなものに囲まれて、好きなものを作っちゃう場所。

好きな人が作ったものなんて【いいもの】に決まってるんだから、それが仕事になっちゃってる場所。

 

こういう空気に触れると、上手くは言えないんだけど『やっぱりこうだよなー』って思う。

無理してる感じがひとつもない、彼自身が自然体であれる場所だから、自分もついつられて自然体になってしまう。

ようわからんけど『自由』ってことばが頭に浮かんだ。

 

そして彼はいつも笑顔です。

 

鹿の角フェス2017!

で、本題の鹿の角。

何をどうしたらいいか、まったくわからないもんだから、とりあえず持ってきた鹿の角を工房の床にぶちまけてみる。

んでもって、

『こんなことがしたくて!』

『こんなイメージで!』

自分でもつまり何が言いたいのか分からなくなるくらい、ふんわりした球を投げまくる。

 

そしたら、

「それはこんな感じ?」

「ここはこんなん?」

みたいな感じで、鹿の角で作ったあれやこれやを持ってきてくれる。

 

普段使っている工具の持ち手が鹿の角

皮を切る工具の持ち手が、鹿の角(湾曲がかっこいい!)

 

ナイフの肢が鹿の角

こっちはナイフの肢(光沢がきれい!)

 

ナイフの鞘を鹿の角で。

康富さんの知人がつくった、開けるとナイフになってるやつ(クールビューティー!←なんじゃこりゃ)

 

こんなに鹿の角に囲まれたの、人生ではじめて。

 

『試しにちょっと削ってみたいです!』

「やっちょみや!」(なんかこんなんじゃなかった気がする土佐弁って)

 

鹿の角の中心部って、空気を意図的に含ませることによって独自のサクサク感を生み出し、歯ごたえと共に口どけまでいい感じにしてしまうあのお菓子みたいになってるのね。

 

鹿の角の断面には無数の穴がある

まぁまぁ気持ち悪い

 

中心部を削るのはサクサクだから簡単なんだけど、外側はけっこう硬くてなかなか削れない。

普通サイズのUSBを埋め込むための穴を削るのは大変そうだから、

とりあえずイメージを伝えるための試作品は、小さいサイズのUSBでつくろうと思います。

 

まとめ方がわからなかったので…

 

拝啓、母上様。

お元気でしょうか?

ぼくは鹿の角の臭いにやられています。

初めて知りましたが鹿の角って、削るととんでもない刺激臭がいたします。

正直、なにをしてるんだろう?と思わなくもないですが、何をしてるかよくわからないときほど自分のことなのにおもしろおかしくなり、なんだかんだ楽しんでおります。

絶対ないとは思いますが、万が一、鹿の角を加工する機会がありましたら、くれぐれも臭いにはお気をつけください。

敬具

滝に行ったときの記念写真

関係ないけど、Facebookにあげがちな充実してそうな写真。

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金の斧、銀の斧
(仮)鹿の角商会

第2話 おもしろいことウェールカムっ!

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仕事で気合がはいりすぎて、空回りしてる人をみつける方法がある。

USBが鹿の角か、そうでないかだ。

 

なんもわからんから、遊べる。

 

(仮)鹿の角商会。

勢いだけで走り始めてしまったこの企画(前回の記事を見てくだされば!

いや、企画っていうにはあまりにもずさん。

むしろ『無謀な挑戦』みたいなほうが合っている。

 

と、書いてて思ったんだけど挑戦って何か『意味がある』とか『何かのために』みたいな感じがする。

【(仮)鹿の角商会】には意味なんてないし、たぶんおそらくきっと役には立たない。

そう、ぼくらは唐突に、遊び始めたのだ。

あっ、楽しくなってきた。

 

とまぁ、こんな感じだから計画みたいなものは何もなくて、何からどうはじめていけばいいのか、まったくわからない。

鹿と、鹿の角で作ったUSB

鹿にバカにされてる気がする。

 

 

鹿の角が酒屋の入り口から降ってきて、

袋に入った鹿の角

日常(ビニール袋)と非日常(鹿の角)のコラボ…

 

急に『あなたが落としたのは金のUSB?それとも鹿の角USB?』みたいな気分になる。

 

金の斧、銀の斧

普通のUSBとこたえたい。

 

こんなふうに、わからないまま進む展開って最高だなーと思う。

わからないから『どうなるんだろう?』って好奇心がわくし、何にも決まってないからやりたいようにやれる。

ぼくらは遊ぶために、わからないことに突っ込んでいきたいんだと思う。

 

どどすこ進む。

 

都会は窮屈だった。

何をするにしても何かしら決まってるし、何かしら決めなきゃいけない。

やりたいことよりも『やる理由・意味』をさきに決めなきゃ進めない。

思いついただけの、やりたいことの小さい種は、そんなうんざりするようなもの達に簡単に負けてしまう。

 

ぼくにはそれを乗り越えていけるような【信念】みたいなものは、なんにも持ち合わせていないから、

ただただ感覚に従っていかなきゃ、いともたやすく自分を見失ってしまう。

 

ここ土佐町は、そんなぼくにとっては本当に良い環境だ。

わからないことは、わからないまま、やっちゃってOKな空気で満ちている。

 

組織に属している人が圧倒的に少ないから、

誰の許可も必要なく、やりたいことやっちゃってる人が圧倒的に多い。

 

そんなことが!?みたいな、賢い人(皮肉です)が考えるビジネスモデルの外側に、

バカな人(褒めてます)の小さい商売が無数にある。

 

理由とか意味を捏造するから、いざやめたいと思ったときに『やる理由をちゃんと否定する、やらない理由』をつくらなくちゃいけないし、『やる意味を否定してしまう、なんか過去の自分を否定するような苦しさ』をあじわうことになる。

たぶん、みんな【はじめられない】んじゃないと思う。

【やめられない】そう思い込んでいるから、はじめないだけ。

 

やってみて違ったなら、やめちゃえばいい。

気分でやりはじめたんだから、気分でやめたらいい。

 

RっPGぃーー!!

 

ここ土佐町は、ほんとRPGみたい。

ゲームかっ!が口癖でした(ウソです)

 

近所付き合いといえば、

地元(大阪の田舎)にいたころは『すでに出来上がったもの』を与えられている感じだったし、

東京に住んでいたころは『知らない人にいきなり話かけない』が生きやすい方法だった。

 

ところがどっこい。

ここ土佐町の人は、いきなりぼくみたいな【見知らぬ奴】が声をかけても笑顔で話してくれる。

(移住者が多いって状況もあるし、ぼくのキャラもあるし、一概には言えませんが)

 

そうやって話した内容はまたたく間に【土佐町情報ネットワーク】通称“口コミ”によって広がっていく。

(ネットより早いって比喩されるけど、たぶんほんとにそう。そして『れいほく田舎暮らしネットワーク』みたいなこと言いたかっただけ)

で、『こんな奴がきたらしい!』みたいな情報が出回って、いざぼくを見つけたときに声を掛けてきてくれる。

(たぶん、たぶんね、確認したい欲求と新しいネタを仕入れるため)

 

ちなみに、【土佐町情報ネットワーク】の頭脳は地域のおじいちゃん・おばぁちゃんなので、

精度が非っ常ぉーにゆるいです。

なのでいろんな情報がごちゃまぜになって、とっぴょうしもないことを急に聞かれることがあります。

例題。

・『君がカメラマンか』→ちがう。

・『おまえがいっつも着物きてる奴か』→このときぼくはスエットを着てる。

・『あなたが自分探しをしてる方?』→もしそうだとして、そんなキャッチコピーが付いちゃったら、消えてなくなりたい。

 

そんな感じの場所なので『ぼくは鹿の角をどうしていけばいいのか?』をいろんな人に聞きました。

おそらく、普通なら『知らんがな(笑)』で終わるようなことでしょう。

ですが、【土佐町情報ネットワーク】は違います。

どんなことでも親身になって、あなたが求める情報をなんとか提供しようとしてくれます。

そして『これはさすがに無理でしょう』程度のことなら、だいたいなんとかなります。

(保存機能が弱いので、会うたび聞きます)

 

ピーマンじゃないよ、キーマンだよ!

板金職人の【康富さん】(田中邦衛に似てるのはアングルのせい)

 

【土佐町情報ネットワーク】とか書いてて思い出したけど、康富さんとの出会いは飲み会だったかも(笑)

ほんまいろんなとこで、いろんな人とつながるから、最初とかわからん(笑)

康富さんは板金職人さん(いや、ほんとうにすごい人!)なんだけど、

それ以外に皮小物とか、すでに鹿の角でナイフの肢とか、とにかくいろいろつくったりしてる人!

『パソコンって何ができるの?』

「なんでもできるよ」

の、パソコンポジションの人なので、説明するのは正直めんどうです。

 

で、で、で!

『今、鹿の角でUSBをつくろうとしてるんですが!』

「いいねー、すごいねー、やるねー!」(康富さんのお子さんのあいだで、このときから少しさきの現在、絶賛大ヒット中のネタ)

 

『工房に相談がてら、遊びに行っていいですか?』

「いつでもおいでや!」

 

『じゃー明日行っていいです?』

「かまわんよ!」

 

鹿の角をきっかけに、こうやって人と接点ができるってほんと最高だと思います。

【鹿の角】に限らず、なんでもこうやって人とつながって楽しく過ごすための材料だと捉えるなら、

成功するかどうかみたいな結果はどうでもよくて、やってる今がすでに報われてるんだろうなと。

 

おもしろそうならいつでもウェルカム!

そんな人がここ土佐町には多い気がします。

 

それはつまり、自分がおもしろいと感じたことに素直に反応する、人間くさい人が多いってことで、

そりゃー楽しくなっていくわけだわ。

 

さすが土佐町クオリティー。

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鹿の角のUSBのイメージ
(仮)鹿の角商会

第1話

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ある日の土佐町。

 

ぼくらはいつもと変わらない、平和な時間を過ごしていた。

 

川田ストア。

 

ここは酒屋さんなんだけど、その奥に机と椅子が置かれた小さなスペースがある。

ぼくらはよくここで勝手に集まっては、バカな話を楽しんでいる。

 

ちなみにこのスペースは、いっさい公開されていなくて(だからって秘密でもない)、

完全なるプライベート空間なわけだから、

店主である【のぼるさん】と【れいちゃん】が気に入った人だけが出入りしている。

 

ここに来る人はほとんど顔見知り。もし知らない人がいたとしてもすぐ仲良くなれる。そんなところ。

 

川田ストアの店主

のぼるさんの口癖「ほぇ?」

 

 

踊るれいちゃん、かっこいい!

 

 

川田ストア

ぼくらのかわどぅわぁぁぁ!!!

 

 

そんないつもの場所での、いつもな感じ。

「ねぇ、このまえ出張に行ってきたんだけどさー」

『うんうん』

 

「そこのホテルでね、資料を渡されたんだけども」

『うんうん』

 

「その資料をクリップでとめててね」

『それからそれから?』

 

「そのクリップがUSBになっててさ、資料の中身がぜんぶデータになって入ってるのよ!」

『まー便利!!!』

 

書いてて『だから何?』って思うくらいの、つまりは中身なんてあってないような…

そんな【話を楽しむことが目的!】みたいな雑魚い話題で、

土佐町にいるプロカメラマン【石川さん】ともりあがっていた。

 

撮り慣れてるけど(たぶん)撮られ慣れてない


「それでね、土佐町の素材を使ったUSBつくったら、おもしろくない?」

『あー、たしかに!』

 

『たとえば、鹿の角とかさ!』

「ほぉーー」

酒のつまみとしては、まぁまぁなネタだ。

 

 

いつかの大都会。


さっそうと横断歩道をわたるビジネスマン。

髪をキレイに整え、ダークグレーのスーツに光沢あるブラックレザーの靴を履き、

まるで街の全てをそこに映し出しているかのような、ガラス張りのビルに入っていく。

入口の自動ドアが開き、まだ新しいそのビルの匂いを味わいながら、さっそく受付をすませエレベーターで38階へむかう。

この日のために入念に資料はつくってきた。わずかな緊張を感じながらも彼の表情は自信にあふれている。

チン!と音がなり、エレベータの扉がひらく。

真っ青なジュータンがガラスの向こうに見える空まで続いているようだ。

足音は床に吸い込まれ、分厚い扉たちの向こうからは何の音も聞こえない。

自分の心臓の音だけが鳴り響くこの世界で、『大丈夫』そう自分に言い聞かせる。

コンコン、『失礼します』。

一番大きな扉の向こうには厳しい表情をした自分の父親ほどの男性たちが数名、すでに席についている。

冷たい視線を横切り、セッティングされているスクリーンの前に立つ。

鞄からパソコンを出し、これからはじまる一世一代の大勝負の準備をする。

「我々をこうして集めたからには、さぞ良い話が聞けるんだろうね?」

この日のために数ヶ月もかけて、彼はこの資料を仕上げてきたのだ、負けるはずはない!

左手でそっと鞄のふちを持ち、それとは対照的に右手を力強く中につっこみ、全てのデータが入っているUSBをつかむ。

「もちろんです!」

そうして彼は、すでに勝ったことを確信しているかのように、高々と右手を掲げる。

その右手には、鹿の角。

 

もはや説明なんて不要でしょう

 

 想像したらフフッ♪ってなる。

決して爆笑はしないけれど、ニヤニヤしちゃう。

 

 

ぼくらはそれだけでお腹いっぱいだったのに。

 

パッとアイデアが思いついて、酒のつまみとしてその場で消費されて終わる。

アイデアの大半はそんなもん。

だからそれ以上は、とくに何も望んじゃいなかった。

 

だ・が・し・か・し

(「お・も・て・な・し」ってやりたかっただけ←ここまで書いて、急になんか恥ずかしい…)

 

ここは土佐町!!!

(『土佐町だから』ってのが理由になっちゃうの!!っていう伝わらない思い…)

「鹿の角か?持ってきちゃるわ!」

川田ストアによくいるダンディー&キュートな笑顔のおじ様【アキラさん】がそう言いながら、すでに出口に向かって歩きはじめている。


「えっ、あっ、えぇ⁉︎」

戸惑う。

急すぎる展開にただただ戸惑う。

「やばい!」

何がやばいのかわからないけれど、とりあえずそんなとき口から出てくる言葉No1は、やばい!

 

今起こっていることにザワザワしながら待っていると、アキラさんが鹿の角を数本、ビニール袋に入れて戻ってきた。

「やるわ!」

いきなり粋に手渡す鹿の角。

ちょっと話したことが、すぐ、ほんとその場で現実になり始める。

これが土佐町クオリティー!!

 

『鹿の角で何かやりたい』なんて、そんな思いはまったくなかった。

けれど、土佐町のものを使って、土佐町の人たちと一緒に何かできたら楽しーだろうな。

 

ただみんなで楽しみながら作るだけでもいいんだけど、せっかくなら【土佐町グッズ】をかってにつくって、

あわよくば旨い汁をすすろうと思います。

 

というわけで、【(仮)鹿の角商会】ゆるーくやっていきます。

文・写真 Kawano Akinori

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