2020年9月

笹のいえ

稗取り

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少し前の出来事。

出穂した稲穂に少しずつ実が入り頭を垂れはじめたころ、周りと異なる葉っぱと実が付いている株があることに気づいた。近づいてみると、稗だった。

稗は田んぼで出会いたくない草のひとつで、大発生すると、お米の収量が著しく減ると言われる。また、たくさんの種を付け、それが落ちると翌年以降に大量発芽する。雑穀として栽培されているものとは種類が異なり、この稗は美味しくないらしい。

見つけたときは、穂がまだ緑で若かった。種は熟すと色が濃い黄土色になり、遠目でも米と見分けがつきやすいので、普段はもうしばらく経ってから刈り取る。だけどこのときは、数日後に大型の台風10号が近づくと言われていて、強風に煽られ、稗の種が田んぼにばら撒かれてしまったら大事(おおごと)と考え、ぬかるむ田んぼへ稗退治に入って行った。

稗を見つけては、地際から手鎌で刈っていく。少しでも茎が残っていれば、そこから生えてきて再び種を付けてしまう。足元が悪い中、稲を倒したり踏んだりしないように気をつけつつ、稗を刈り取るのは集中力が必要で、終わったときはグッタリと疲れていた。

田んぼによって状況は異なるが、ある田んぼには三抱えくらいもあった。集めた稗は種を落とさないよう慎重に持ち出して、処分した。

さて、この稗はどこから来たのだろう。

去年まで、僕がお借りしている田んぼで稗を見ることはほとんど無かった。あっても稚苗のうちに除草してしまうか、穂を付ける時期まで見逃していても種がこぼれる前に刈ってしまう。それでも、実をつけ種を落とした稗があるかもしれない。落ちた種は土の中で何年も生き延びることが可能で、気候や土の状態などの条件が合ったときに一気に発芽すると言う。

今回、稲株と同じように条に並んで生えていたから、田植えのとき稲と一緒に植えてしまったんだろう、と言うことは想像がつく。苗が小さいと稲も稗もよく似ているから、苗取りで間違えてしまったと言うこともあり得る。しかし、なぜ苗床に稗が生えていたのだろう(今年の苗床はこんな感じでした)。種もみは農家さんから譲っていただいたもので、別の種が入っている可能性はほぼゼロ。もし万が一、稗の種が混じっていたら播種のときに気づいていたはずだ。そして、苗床のあった田んぼには稗が生えていない。

田んぼで起こったミステリー、なのだ。

 

写真:刈り取った稗。ツンツンとした種が特徴だ。

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私の一冊

鳥山百合子

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「在来植物 高知嶺北F 」 山中直秋

いつもお世話になっている山中直秋さんが作った本「在来植物 高知嶺北F」。

山中さんが、高知県嶺北地域の野山に根を張る在来植物を探して道々を歩き、コツコツと撮影した写真が全5冊にまとめられています。これはそのうちの4冊目、8月から9月編です。ちょうど今の季節にいいなあと思い、こちらを購入しました。

ページを開くと「星みたいな形のあの黄色い花は、“ヒメキンミズヒキ”という名前だったのか!」とか「地面を這うように葉を巡らせていたのは、“スベリヒユ”っていうのか!」と、まるで大発見をしたような、懐かしい友達に会ったような気持ちになります。

これだけの植物と出会うために、山中さんは一体どれだけの時間を費やしてきたのでしょう。

いつも庭先から、新しく見つけた植物のことや今取り組んでいることを話してくれる山中さん。それはそれは楽しそうで、私は元気をもっています。

山中さん、素敵な本をありがとうございます!

 

*山中さんのこの本は、土佐町の青木幹勇記念館で購入することができます。
(青木幹勇記念館:〒781-3401 高知県土佐郡土佐町土居437 TEL.0887-82-1600)

 

 

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読んでほしい

三足の下駄

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今から50年ほど前に建てられたという家を片付けている。

瓦屋根で、和室が南に2つ、北に2つ並ぶ平家の家である。この家には大きなものから小さなものまで、山ほどの荷物が残っていた。洋服ダンスや布団、衣装ケースやマッサージチェア。人のことは言えないが、人が生きていく上でこんなにも荷物が必要なのかと思うほどだった。

納屋には皿鉢やお餅を並べるもろぶた、野菜を干すえびらや火鉢があり、納屋の隣にある壁には畑を耕す鍬や草刈り鎌がかけられている。

片付けていると、その人がどんな暮らしをしていたのかが感じられるものに出会う。

 

この家に住んでいたのは、最後にはおばあちゃん一人だったそうだ。お風呂や廊下、玄関には手すりが取り付けられている。手作りなのだろう、台所の作りつけの戸棚の扉の内側には「昭和47年○○製作」と黒いマジックで書いてある。「○○」はおそらく、大工だったという連れ合いさんの名前だろう。それはひとつやふたつではなく、茶箪笥の引き出しや玄関の靴箱の扉にも書いてあった。作った年と名前が書いてあるだけなのだが、その文字はそれ以上のことを語りかけてくる。

家の中には明かりが2つ付いた6畳の部屋がある。どんな部屋でも大抵そうであるように、ひとつは天井の真ん中についている。もうひとつは、縁側に面したその部屋の天井の隅についていて、紐を引っ張ると電気がつくようになっている。なぜひとつの部屋に明かりがふたつもあるのだろう。

その謎は、息子さんと話しているときに解けた。

おばあちゃんは洋裁の仕事をしていたのだ。和室の天井の隅から下がる灯りの元に座って、いつも仕事をしていたそうだ。なるほど、庭に面した縁側の隅には鉄製の足踏みミシンが置いてあったし、近くには小さな文机があって引き出しには色とりどりのマチ針や糸がしまわれていた。頼まれて着物を仕立てたりもしていたそうだ。

手元を照らしながらちくちくと針を進めていただろうおばあちゃんが、すぐそこにいるようだった。生きているうちにお会いしてみたかった。

 

靴箱を片付けていたら、奥から下駄が三足出てきた。それは女性用の下駄で、桐でできていてとても軽い。鼻緒の色は紅色やオレンジ、紫がかった桃色で、はっとするほど可愛らしい。きっとおばあちゃんが履いていたのだろう。

近所の人が言っていた。

「おばあちゃんは料理がとても上手な人で、よくおかずを持ってきてくれた。とてもようしてもらった」

おばあちゃんは、もしかしたらこの下駄を履いて近所を訪ねていたのかもしれない。

この下駄を、今度は私が履かせてもらおうと思っている。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ポリぶくろ、1まいすてた」 ミランダ・ポール文 エリザベス・ズーノン絵  藤田千枝訳 さ・え・ら書房

7月1日から始まったレジ袋有料化。大量のプラスチックごみ削減に対する貢献度はささやかなものだとも聞きますが、意識改革のとっかかりとしては有効なのではないかな、と思います。

ポリぶくろ(プラスチックバッグ)は便利なふくろです。けれどもすてられたポリ袋を食べた動物が死んでしまったり、庭に埋めたら草が生えなくなったり、大量の蚊の発生の原因になったりと様々な問題を引き起こしています。できるだけ使用しないことはもちろんですが、すでにあるポリ袋はどうすればよいのか?

ゴミにするのではなく、リサイクルすることで、環境改善に貢献するだけでなく、女性の収入の道を切り開き、女性の地位の向上の一助となった活動がありました。

ガンビア共和国(西アフリカ)のンジャウ村から始まったポリ袋のリサイクル活動は、近隣の住民の環境問題への関心を喚起し、公共図書館開館にも繋がったそうです。 小さな取り組みが、大きな流れを生み出すことにつながることを示してくれる絵本です。

 

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さめうらカヌーテラス・オリジナルTシャツを作りました!

毎年、土佐町オリジナルポロシャツの絵を描いてくださっている下田昌克さんが、カヌーのロゴを描いてくださいました。実際にカヌーを見て「こんな感じかな?どうかな?」と何枚も描いていた下田さん。クレヨンで描かれたこのロゴからあたたかさが伝わってきます。

印刷は、どんぐりの石川寿光さんと川合希保さんがシルクスクリーンで一枚ずつプリントしました。

 

Tシャツは、さめうらカヌーテラスで販売しています。

Tシャツは綿100%、全部で4サイズあります。XS(160)・S・M・Lサイズ。各3000円(税込)です。

 

9月19日オープン!さめうらカヌーテラス

2020年9月19日にオープンしたさめうら湖畔の「さめうらカヌーテラス」。併設されている「さめうら荘レイクサイドホテル」と共に「湖の駅 さめうらレイクタウン」として、さめうら湖でのカヌーやSUPなど、水があるからこその体験を提供していく施設です。

 

19日のオープン当日は、カナディアンカヌーやSAP、湖畔でのサイクリング体験が行われ、多くの人たちで賑わっていました。

湖面の風と光がとても気持ち良さそう!

土佐町の方はもちろん、町外の方、多くの方たちに親しまれる場所となりますように。

ぜひ、さめうら湖ならではの体験をしてみてくださいね!

(さめうら湖でのカヌーやSUPの体験は、10月までです。)

 

 

湖の駅さめうらレイクタウン  高知県土佐郡土佐町146-1    Tel:0887-72-9919

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「シュナの旅」 宮崎駿 徳間書店

「シュナの旅」は、宮崎駿さんがチベットの民話「犬になった王子」を元に描いた短編漫画。「風の谷のナウシカ」と同時期、1983年に出版されています。どうしてもナウシカと重ねて読んでしまうのですが、宮崎さんの根底に流れるものは、いつも揺るぎないのだとあらためて感じます。

黄金色の穀物の種を探して西の果てへと旅に出たシュナが、人の愚かさや醜さ、生きる厳しさと出会いながら何度も立ち上がり、自分の信じるものへと向かって歩いていく。

市場で売られていた少女・テアに出会い、最後、生きる希望を見出すシュナの姿は静かに胸に響いてきます。

「行くか 行かぬか それは そなたが決めることだ」

旅の途中に出会った老人が話す一言が心に残ります。

宮崎駿さんにとってこの漫画をアニメーション化するのがひとつの夢だったそうですが、今からでもぜひその夢を実現させてほしいです。

 

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笹のいえ

台風と結

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道に倒れた木や竹を片付け、車が通れるようになった。そして、優先順位の二番目、止まっている山水を復旧させるため、山に入ることにした。台風の間は節水を心がけていたから、水瓶にはまだ数日分の水があった。最悪すぐに復活しなくとも問題ないが、どうせいつものように水の取り口に枯葉などが詰まっただけだからそれを掃除すればいいと思っていた。

取水口まで歩いていく途中、大きな杉の木が三四本倒れていることに気がつく。ある木は中程から折れて沢に落ち、ある木は根っこを剥き出しにして転がり、別の木に引っかかっていた。ここに7年住んでいるが、こんなことははじめてだった。余程強い風がこの沢を走り抜けたに違いない。「爪痕」と言う言葉がぴったりなほどワイルドに倒れている木々は素直に怖かった。普段通っている道が、倒れた木で迂回しなければいけなかったり、崩落している箇所もあった。足を置く場所を間違えれば、土砂とともに落っこちて、木や泥の下敷きになってしまうかもしれない。ひとりで山にいる僕がもしそんなことになっても、しばらくは誰も気がつかないだろう。

一歩一歩慎重に進みながら、取水口に繋がる黒パイプを辿っていくと、一箇所、倒木の下敷きになっていることが分かった。引っ張ってみてもビクともしない。手鎌以外何の道具を持って来なかった僕に、これ以上できることはなかった。急に不安の雲が心を覆いはじめ、「このまま水が復活しなかったら、どうしよう」。少しずつ焦りはじめた頭をリセットしようと、一旦家に戻ることにした。

翌日、飛んで行った支柱や屋根を片付けるため、友人たちが手伝いに来てくれた。彼らに山水のことを相談すると、皆で見に行こうということになった。午前中に片付けを終わらせてから、再び山に入った。

だいたいの位置関係を説明して、それぞれアイデアを出し合う。ああしてみよう、こうしたらどうだ、と動き出した。下敷きになっている部分を切り取り、別のパイプを継ぐことにする。径違うパイプが必要な場所には、その辺の竹を切って応急処置。あれよあれよと作業が進み、自分ひとりでは修復不可能ではないかと思えた山水が、約一時間後にはまた蛇口から出るようになっていた。パイプから勢いよく出てくる水でびしょびしょに濡れながらも嬉々として作業をする彼らの笑顔を見て、持つべきものは友なのだと心の底から思った。

この地域には昔から「結(ゆい)」と呼ばれる風習がある。人と人が繋がる、助け合いというイメージが一番近いだろうか。これまで幾度となく、地域の方たちの結に支えられてきた。今回、友人は皆地域外から来た者たちであるが、相手が誰であれ、僕はまたしてもこの「結」に助けられたのだった。ひとりで悶々と時間を掛けるより、いっそ周りを頼ってしまった方があっさり解決することもある。ひとりでする作業があってもいい、そして皆で助け合いながら進める作業があってもいいのだ。

山から戻り、すっかり気を良くした僕たちは、その勢いのまま、落ち葉と枝が散乱する道の清掃までこなしたのだった。

心の友よ、本当にありがとう!

 

 

この台風の記事はこちら。

台風10号

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私の住んでいる南泉の集会所の下から山に続いている小道があり、それを進んで行くと、子供達が「だいこん山」と呼んでいる山に辿り着く。

その頃は、南泉地区で所有している山で、木を植えているのではなくて、ソバを植えたり大根を植えたりしていたので「大根山」と呼んでいたのだろう。低い山で、その山の頂上には、大きい大きい(子供の私たちには舞台のように広く大きく思えた)平らな岩があった。

休みの日に子供達だけで、簡単なお弁当を作り、それと空きビンと梶ガラで作った三十センチ位の棒と少しの砂糖を提げて、大根山へと登って行くのだった。

途中の道端のそこここには、赤い丸い野イチゴがたくさん実っていて、それを採ってビンに入れながら三十分位かけて頂上まで辿り着く。イチゴは、小さいツブツブがいくつも集まって丸くそのツブには毛のような細い線がついていてすっぱい味だったので、親に内緒で貴重な砂糖をちょっと持って行き、ビンの中のイチゴを梶ガラでツンツンつきながら、ジャム状になったら砂糖で甘くして、ちょっとずつなめながら甘く楽しいひとときを過ごすのだった。

舞台のような石から北をみおろすと、馬場や森の家や田んぼが絵の様に美しく見えた。

今では大根山は杉や桧の植林となり、山道には野イチゴを見つける事は少なくなったけど、頂上の平らな大きい石はそのまま残っている。その石も、子供達が座って弁当を食べる事はなくなっただろう。

秋になり道端に赤い野イチゴを見つけると、小学生の頃、里山で遊んだ記憶が、鮮やかによみがえる。

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私の一冊

川村房子

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「嘘をつく器  死の曜変天目」 一色さゆり 宝島社

ミステリーはあまり読まないけれど、NHKの朝ドラの影響で「曜変天目」の器ってどんなものだろうと思って読んでみた。

「曜変天目」とは、鉄分を多く含んだ釉薬を鉄釉というが、なかでも黒、黒褐、茶色といった釉調を持つ焼き物は、一般的に天目と呼ばれる。天目という名前は、中国浙江省天目山の禅院で使われていた什器を日本の禅僧が持ち帰ったというところから由来するらしい。うーん、なるほど、と思いながら読んでいくけれど、ひと月もすると、中国からきた焼き物位にしか覚えてないのが悲しい…。

京都鞍馬の山中にて、人間国宝間近と目された陶芸家西村世外の他殺体が見つかった。世外は「曜変天目」を完璧に作っていた。この幻の焼き物を巡る殺人事件を、世外の弟子である町子と保存科学の専門家大学助教授の馬酔木で、一転二転する殺人犯を追ってゆく。

ミステリーは、結果が知りたくて最後が一気読みとなり、夜のふけるのも忘れてしまう。

ちなみに「馬酔木と書いてアシビと読む」。はじめて見る名字で、何度もページを前に戻して確認した。パソコンですぐに漢字がでるのでスマホで調べると、あせびの木の事でした。

 

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2020年の土佐町オリジナルポロシャツのデザインである「地蔵堂の木龍」が、掛け軸になりました!

 

土佐町・早明浦ダム湖畔にあるさめうら荘レイクサイドホテル。さめうら湖を臨む和室の床の間に飾るものがほしいとご依頼をいただき、龍の掛け軸を作りました。ホテルの和室2室に、阿行と吽行の龍がそれぞれ飾られています。

 

 

どんぐりの石川寿光さんと川井希保さんがシルクスクリーンで龍を印刷。シルクスクリーンの作業を手伝ってくれている重光さんが「この古布を使ったら雰囲気に合うかも」と古布でバイアステープを作ってくれました。帆布と古布の相性がバッチリ!

 

 

掛け軸の上下を支えるのは、2018年に開催したとさちょうものがたり編集長の石川の写真展のときに使った竹をリユース。「自分たちの身の周りにあるものを使って、自分たちで作る」ことが、とさちょうものがたりの基本姿勢です。

 

ちょっとおもしろい和室になったと思いませんか?

土佐町地蔵堂の龍や土佐町にある文化の存在が、宿泊するお客さまへ伝わるひとつのきっかけになれたら嬉しいです。

 

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