「はなのすきなうし」 マンロー・リーフ文, ロバート・ローソン絵, 光吉夏弥訳 岩波書店
昔、スペインの牧場にフェルジナンドという子牛がいました。フェルジナンドは一人静かに草の上にすわって、花のにおいをかいでいるのが好きでした。他の子牛たちはいつか闘牛で活躍したいと飛んだり跳ねたりしていましたが、フェルジナンドはそんなことには全く興味がありませんでした。
それから数年後、体の大きな立派な雄牛に成長してもフェルジナンドの好きなことは、花のにおいをかいで静かにいることでした。ところが…。
この絵本がスペインで発行された1936年は内戦の最中で、平和主義者の象徴として国内で発禁になったこともある作品です。それでも名作として世界各国で読み継がれているのは、自分らしく自然体で、周りに流されることなく穏やかに生きるフェルジナンドの個性が、人々の心に何かしらの善きものをもたらしてくれるからではないでしょうか?