カンピンでお酒を買いに
父はお酒が大好きでした。相川にいる時も、近所のお祝い事に呼ばれて行っていました。
始めの内はいい機嫌で、歌を唄っています。だんだん酔ってくると理屈を言い出して、人が理解してくれないと怒り出す癖があるので、時間を見計らって迎えに行ったと母から聞いたことがあります。家にいても、仕事に行った日も、晩酌を楽しんでいました。
一升瓶で買っておけば良いのにお金が高いので、買うときは、二合位入り、湧かすことも出来る「カンピン」ガラスに入れてもらいました。
江ノ口小学校の赤レンガの堀に沿って南へ、日赤通りへ出て、学校の正門前を過ぎ愛宕町迠の中程の左側に井上酒店があって、「玉緑」という看板がありました。
綺麗なおばさんが、大きな樽の栓を抜いて「ダップダップ」と入れてくれました。カンピンは薄いガラスなので、少しでも物にあてると割れるため、帰り道が心配でした。
おいしそうに飲む父の顔を見て、ホッとしたことでした。
小学校五、六年生の頃、八十年余り昔の思い出です。