住み馴れた相川を出て
初めて見る高知の街、昭和11年4月の初めでした。現在の様にテレビ、新聞、ラジオも無い時代。
85年も昔の事、思い出さえも薄れかけた中での一人暮らし、頑張って書きました。
田舎で育ったので足には自信があって、両親が思ったより早く着いて、その夜は愛宕町の親戚の家で泊ることになっていたのです。
椎野の峯から下の秦泉寺まで三人で駆け降りて、周囲を見ると一面の田園でした。稲が青々と伸びているのを見て驚きました。
相川では、まだ田仕事は始まっていなかったのです。半日歩いて山を越しただけで、気温がこんなにも違うのだろうかと感じたのでした。
初めて履いたゴム靴もだんだん慣れて来たのでした。
その夜、親切なおばさん達のお世話になりました。
高知での初めての夜、自分達の住む所、家はどんな所だろうと気にしながらの一夜でした。