「おつきさまこんばんは」 林明子 福音館書店
ページのあちこちが折れ、背表紙は今にも剥がれ落ちそう。裏表紙には鉛筆でぐちゃぐちゃっと描いたいたずら描きもある。もうボロボロのこの一冊は、我が家の3人のこどもたちが何度も何度も読んできたお気に入りの一冊です。
「おつきさまこんばんは」を開くと、色々な思い出が蘇ってきます。
夜になり、空が暗くなる。屋根の上がぼんやりと明るくなり、お月さまが顔を覗かせます。
「おつきさま こんばんは」
子どもたちが、ほわっと顔をくずし、にっこり笑うのがとてもかわいかった。
このあと雲が出てきて、お月さまが隠れてしまうのですが、その場面では子どもたちは困り顔に。まさにお月さまと一心同体。
そして雲が去り、またお月さまが顔を出す。
「あー よかった おつきさまがわらってる まんまるおつきさま こんばんは こんばんは」
優しげに、にっこりと笑っているお月さま。最後のこの場面が子どもたちも私も大好きで、みんなで笑顔になります。
ゴロンと横になって顔の上で絵本を広げた私の横で、少しでも近くへと身体を寄せて絵本を覗き込んでいた子どもたち。その子どもたちも大きくなり、もう押し合いへし合いはしません。
けれど先日、中学3年生の長女が、ふと本棚からこの本を取り出して「懐かしいー」と呟いているのを見た時は、ああ、一緒に読んできてよかった、と心から思いました。
きっと、もっと大きくなっても覚えてくれているんじゃないかな。
そんな風に思っています。