新年になって最初に目にした野の花はムラサキカタバミでした。
淡い紫紅色の花で、直径は2~3㎝ほど。中央部に濃色の条線が入っています。
葉っぱは花茎にはつきません。全て根生葉(※こんせいよう)で、3個の小葉からなる大きな掌状複葉(※しょうじょうふくよう)です。
南アメリカ原産、カタバミ科カタバミ属の多年草です。
江戸時代末期に観賞用として導入されて以降、日本各地へ広く帰化(※きか)しています。
ふつう花期は5~7月ですが、1月7日の七草摘みをしていて見掛けたものです。
土佐町の大谷から中村、上ノ土居方面へかけて数ヵ所で、日当たりの良い石垣の間から顔を出しているのに出会いました。

ムラサキカタバミ
ムラサキカタバミという和名の語源は「カタバミに似ていて、花色が紫色を帯びる」ことによるのですが、カタバミには二つの漢字表記があります。
一つは「酢漿草」。「酸っぱい汁の草」の意で、茎や葉にシュウ酸が含まれていて食べると酸っぱい味がすることに由来するそうです。
もう一つは「片喰」。カタバミは、日中は葉を開き、夜は閉じてしまいます。閉じた葉が食いちぎられたかのように見えるということからついた名前です。

ムラサキカタバミ
とは言え、昼間でも葉が閉じることはあります。
小道の石垣の狭い隙間にぎっしり詰まったムラサキカタバミは、開いた葉と閉じた葉が同居していました。
葉が開閉する条件は、光だけでなく温度も関係するようです。
ムラサキカタバミは繁殖力が強いため生態系を壊す恐れがあるとされ、環境省から「要注意外来生物」に指定されています。
そんなことを知るとなんとなく質の悪い植物みたいな感じになるのですが、よく見掛けるハルジオン(春紫苑)やセイヨウタンポポ(西洋蒲公英)、セイタカアワダチソウ(背高泡立草)なども同じような扱いです。
セイタカアワダチソウは、いまだに花粉症の元凶という大誤解を受けている気の毒な存在ですが、ハルジオンにしてもタンポポにしても、開花の季節になるとみんなから親しまれる外来植物です。
要注意云々といっても、それほど深刻になるようなことではありません。

カタバミ
石垣を、もしやという思いもあり、隈なく探してみたところカタバミの花もありました。
直径1㎝に満たない小さな黄色い花です。茎から長い柄を出して葉をつけています。葉のふちには白い毛があります。
茎や葉の色が赤っぽいので、アカカタバミあるいはウスアカカタバミと呼ばれる品種かもしれませんが、史前帰化植物のカタバミです。
葉っぱは閉じて「半分になってしまった」というような状況です。
カタバミは、有史以前(※ゆうしいぜん)に稲や麦などの栽培植物とともに大陸から日本にもたらされた植物の一つで、史前帰化植物と呼ばれ、外来種としてではなく在来種と同等に扱われます。
余談ですが、図案化されたカタバミの葉は、徳川四天王の一人である酒井忠次や関ヶ原の戦いに敗北して八丈島に流罪となった宇喜田秀家など、昔の武将の家紋としてよく使われています。
土佐では長宗我部元親が「七つ片喰」(ななつかたばみ)といって、円の中央に片喰が一つ、それを囲むようにして6つの片喰が描かれた家紋を使用していました。
※根生葉(こんせいよう):植物の根元から生えてくる葉のこと
※掌状複葉(しょうじょうふくよう):小葉が1ヵ所から指を開いた手のひらの形に出てくる葉のこと
※帰化(きか):外国から伝来し、日本で野生状態になること
※有史以前(ゆうしいぜん):人類が文明を持って生活を始める前の時代