『検証 ナチスは「良いこと」もしたのか?』 小野寺拓也, 田野大輔著 岩波書店
戦後教育を受け、平和憲法の素晴らしさを学んだ身にはとても残念なことですが、「ナチスは良いこともした」という議論が時々繰り返されています。なにをバカなことを、そんなこと誰も信じないでしょう、と思ってはいても「良いことをした」と主張する人は少なくなく、これは一体どういうことなんだろうと思っていた時にめぐり合ったのが本書でした。
ナチズムをプラス評価する際に例として挙げられる「アウトバーンの建設」、「フォルクスワーゲンの開発」、「手厚い家族支援策」、「歓喜力行団の旅行事業」等など。これら一見先進的に見える政策の不正や搾取・略奪と結びついていたことを、公に認められている資料から検証し、多角的な視点による考察を述べています。
2022年の学習指導要領施行により高等学校では「歴史総合」がはじまりました。指導要領では「近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え、現代的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を理解するとともに、諸資料から歴史に関する様々な情報を適切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする」ための科目であると定められています。
今を生きる若者たちに手渡したい1冊です。