「もりのなか」 マリー・ホール・エッツ 福音館書店
「保育園で “はんかちおとし”、したよ」。
5歳の娘がある日、保育園から帰ってきた時に言いました。
あ、確かこの本にも“はんかちおとし”が出てきたはず。そう思って一緒にページを開きました。
「ぼく」が森へ散歩に行くといろんな動物がついてきて、一緒に歩いて、ひと休みして、誰かがピクニックをしたあとのピーナッツやジャムやアイスクリームを食べたり、かくれんぼしたり…。
そして、
「それから、“はんかちおとし”を ひとまわり しました。」
その文章で「一緒やねえ」と嬉しそうに笑った娘の顔を見たとき、絵本の世界と娘の生活がつながった瞬間に立ち合ったような気がして、何だか感慨深いものがありました。
マリー・ホール・エッツの描く線はとても温かい。もう亡くなっているので会うことはできませんが、エッツの残した作品から本人の人柄や大切にしていたことが伝わってくるようです。
作品を残すことは、私はこのように生きた、というひとつの証でもあるのだと思います。
鳥山百合子