土佐町溜井の道路を歩いていて藪の中にふと目が留まりました。ふつうの草花なら目につかないようなヒノキの造林木と雑草に覆われた薄暗い場所です。
ツチアケビです。
70㎝ほどの高さの茎に真っ赤な実がびっしりついています。
ラン科ツチアケビ属の腐生植物(菌従属栄養植物)で、葉がなく、葉緑素を持たないため光合成を行わず、ナラタケの菌類から養分をとって育つそうです。
多年草ですが毎年同じ場所で開花するわけではありません。
環境が良ければ数年に1度ぐらいの頻度で出現するそうですが、私が見掛ける場所はいつも違っています。
土の中から出てアケビのようだということで「ツチアケビ」の名が付いていますが、アケビというよりもウィンナーソーセージの方に似ています。
別名をヤマノカミノシャクジョウ(山ノ神の錫杖)といい、実をつけた姿が山伏の持つ錫杖(魔除けの杖)に似ているというものです。確かに振ったらシャン、シャン鳴りそう気配があります。
毒々しい赤い実がぶら下がる姿は奇妙ですが、古くから疲労倦怠に効く薬草として用いられてきたそうです。果実を天日乾燥させたものは土通草(どつうそう)と呼ばれる生薬で、ネット検索してみると、なんと「100グラム2,500円の予約販売」の広告にヒットしました。
花期(6~7月)のツチアケビは全体が黄褐色です。果実同様に花の咲く姿も風変りです。
写真は2022年6月に別の場所で撮影したツチアケビです。
花を拡大してみるとツチアケビがランの一種であることがよく分かります。
ラン科の花は左右相称で6枚の花被片を持ち、外側の3枚をがく片、内側の3枚を花弁といいます。花弁のうちの1枚は他の被片と色も形も異なり、唇弁(しんべん)と呼ばれて昆虫を誘引するのに役立っています。
ツチアケビの唇弁は黄色くなります。縁にはフリルがつき、虫媒花らしい美しさが備わっています。
これを見ると、「なるほどランだ」と思えるのではないでしょうか。