この日は土佐町小学校2年生と絵を描く日。
大きな紙を目の前にして「何を描こうか?」と下田さんが聞くと「恐竜がいい!」という声があがる。「恐竜!いいね!」下田さんはクレヨン一本で大きな恐竜を描いていく。
「裸足になろうか!大きいものを描いてもいいし小さいものを描いてもいい。上から描いてもいいし下から描いてもいいよ。」子どもたちは軽やかに画用紙の上に飛び乗ってクレヨンの箱を開く。
「自由に描いていいよ、となかなか言ってあげられないから…子どもたち、すごく楽しそうです。」と担任の先生が話していた。
真っ白だった大きな紙がどんどん色づいて、にぎやかに楽しげになっていく。
よいしょ!と寝っころがって子どもたちの間に飛び込んでいく下田さん。
絵を描きながら一人ひとりに声をかける。
下田さんと子どもたちの足と手は、たくさんの色で染まっていった。
完成した絵を持ち上げて、壁に貼った。
「なかなかめちゃめちゃだね!いいね!大人に好きにやっていいって言うと全然まとまんないけど、子どもに好きにやっていいって言うと、みんな好き勝手にやるんだけど、何となくまとまるんだよね。何でかわかんないけど。」 と下田さん。
下田さんにサインを求める行列ができた。中には色紙を持参している子も。
リクエストに応える下田さん。 みんな大切そうにサインをぎゅ、と抱えて持ち帰っていた。
下田さんは言った。
「こうやって一緒に絵を描くことで、常識だと思っていたことが別の角度から見たら違ったりするのかもしれないなあ…と。そんなことをちょっとでも感じてもらえたらと思う。」
下田さんは子どもたちに囲まれながら給食を食べた。
40年ぶりに小学生になった下田さんは、この日の日直さんに「姿勢のいい人を言います。……下田さんです!」と褒められました(笑)
2年生から手紙のプレゼントがあった。
うれしかった、楽しかったという気持ちがたくさんつまっていた。
『ぼくも大きくなったら絵かきさんになりたいと思いました』
『下田さんといっしょにかける日をまだかなとまっていました』
『またいっぱいきれいな絵をたくさんかこうね。やくそくできるならやくそくしましょうね。またやりましょうね』
「子どもたちはこれから何度もこの日のことを思い出すやろうね。」と言った人がいた。
本当にその通りだと思う。
夜は、役場近くの川田ストアへ。
川田昇さん・礼子さんと雑談しながら夕ご飯をご馳走になり、ゆっくりとした時を過ごした。
そうして1時間ほど経ったあと、下田さんは「じゃあ描いちゃおっかなぁ」とスケッチブックを取り出した。
まずはお父さん(昇さん)が前に座るが、すぐに「あ、Tシャツ着ようか」と一度店を出て、川田ストアオリジナルのTシャツに着替えて戻ってくる。
スケッチブックにはたちまち紺色の川田ストアTシャツを着て、焼酎のグラスを持ったお父さんの姿が現れる。
「うわあ似てるねえ」と横から覗いたお母さん(礼子さん)の感嘆の声。
「そういえばポスターで見たのと感じが違うねえ」とお母さん。
実はこれは土佐町の色々な場所でたくさんの人から言われた言葉。このイベントのポスターに掲載している下田さんは丸坊主。実際に土佐町を訪れた下田さんはオレンジ色のモヒカンになっていた。
「ここに来る前の日に散髪に行ったら、『今日の朝なに食べた?』って話になって、『バナナと、、、沖縄でもらったパイナッ プル』って言ったら、『じゃあパイナップルみたいにしようか?』ってこうなっちゃった。」
わっはっは、とみんなで笑いながらも下田さんの手は着々と動いている。
昇さんの絵が完成したら、すぐさま礼子さん。
どうやら礼子さんは下田さんと面と向かって座るのがだいぶ照れくさいようで、下田さんの顔を見てはなんども笑いをこらえていた。
テレビからは夜のニュースの「今年35才になった広末涼子さんが、、、」とナレーションが聞こえる。
下田さんが「もう35才?」お父さんは「まだ35か?」
見解の相違にまたみんなで笑ったのだが、「時の経つのは早いもんやね。」という言葉にはみな頷くしかなかったのであった。
川田ストアのごはんで満腹になったお腹を抱え、「またいつでもいらっしゃい。」と笑顔で見送ってくれる二人に手を振りながら帰り道を歩いた。
つづく