「スティーヴ・マッカリーの『読む時間』」 スティーヴ・マッカリー 創元社
ベンチに座って、車の中で、窓辺で、人は読む。
美術館の入り口で、歴史的な寺院の前で、芝生に寝転がって、商売の合間に、人は読む。
地下鉄で、カフェで、土の上に座って、ベットの上で。太平洋上空でも、雪の中ででも、料理をするお母さんの隣でも。
列車を待つプラットホームで、布と木の枝でできた家の中で、人は読む。
人はなぜ読むのだろうか。写真を一枚ずつ見ていて、しみじみと思う。それはひとつの楽しみであり、知らなかったことを学ぶためであり、時には現実逃避することでもあり、どこか祈りにも似た行為なのかもしれない。世界中の人々が同じように読むという行為をするのが興味深い。
この写真集の冒頭に、こんな言葉がある。
『何かを読むと、私たちは自分がひとりではないことを知る。C・S・ルイス』
私は本を読むこと、活字を読むことが好きだ。今まで知らなかった世界、新しいことを知るのは楽しい。前向きな時だけじゃなく、悩んだ時、迷った時、時には暇で何もすることがなくて本を開いてきた。そんな時はいつも、ちょっとした希望のようなものを探しているのだと思う。本の中に自分の「片割れ」や「相棒」を見つけて安心もした。まだ言葉にならない自分の気持ちを、言葉にしてくれていると感じることもある。
自分はひとりではない。人間はひとりではない。
そのことを忘れないでいたいと思う。