「繕う暮らし」 ミスミノリコ 主婦と生活社
靴下やズボンの穴、どこかで引っ掛けてしまって裂けたシャツやエプロン。いつか縫おうと取っておいても次から次へ溜まっていくばかり…。「そういったものをチクチク縫うことで、ちょっと楽しいものにしませんか?」と伝えてくれているこの本を開くと、時々やる気が出てきます。針と糸を手にする時間はなかなかいいものです。当たり前ですが、縫ったら縫ったぶんだけ、縫い目ができていくのがうれしい。
まだ息子が保育園か小学校の低学年だった頃、「一体どうしたらこんなに穴が開くのか?!」と首をかしげるほど、何度もズボンの膝やおしりに穴を開けて帰ってきました。「縫わないといけないズボン」が次々重なっていくのを見て見ないふりをしながら時間を過ごすのは、結構モヤモヤするものです。
ある日、やっと重い腰を上げてチクチク縫い出すと、息子が本当に嬉しそうに「母さん、縫ってくれるんだ!」とせっせとお茶を運んできてくれたことを思い出します。
布を当て色々な色の糸で縫ったズボンを息子はたいそう気に入って、洗濯して乾いたところからすぐに履いていました。
そのズボンはもうとっくに小さくなってしまったけれど、大事に取ってあります。私にとって、そして、多分息子にとっても、特別なズボンとなりました。
鳥山百合子