2023年6月

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「70歳からが本物の成長期」 和田秀樹, 花田紀凱  サンマーク出版

「幸せ」について述べられた対談形式の本です。
伝説的な雑誌編集者で、80歳を過ぎた現在も現役の花田紀凱さんと、「高齢医療」の専門医師として、日本一人気の和田秀樹さんとの対談をまとめたもの。

・「脳の若さ」と「身体の若さ」は完全にシンクロしている
・「意欲」の有り無しが老後のすべてを決める
・ ルーティーンではない新しいことをやる
・ 終活にこだわらず生きている間のことを考える  等々

脳を老いさせないコツ、今を生き生きと生きるコツが盛りだくさんです。「日本人の幸福度のピークは82歳以上」という調査結果もあるそうです。年齢を重ねるのも悪くないと勇気をもらえる内容でした。

 

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 2

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

灯り

12年前、土佐町に引越して来てから、近所のおじいちゃんとおばあちゃんに大変お世話になってきた。2人は軽トラックにお米や野菜を載せ、たびたび家に来てくれた。土地勘もなく知り合いもいなかった時分、2人と交わすあいさつやおしゃべりにどんなに助けられてきただろう。

息子と山師であるおじいちゃんは年の離れた友人のようだった。一緒にタケノコを掘り、ビワやアケビを採った。学校から帰るとすぐ2人の家へ走り、一緒にテレビで時代劇や相撲を見るのを楽しみにしていた。

おばあちゃんが藁を綯う手は美しく、その技はまるで魔法のようだった。綯った縄に吊り下げられて揺れる柿と澄み渡った冬の青空。その光景は、高知の原風景の一つとなっている。

ある夕暮時、息子が「おじいちゃんちに灯りがついたねえ」とつぶやいたことがあった。そのことを伝えると「わしらあも同じことを思いゆう。(筆者宅に)灯りがついたなあって」。その言葉を思い出すたび、心に灯りがともる。違う土地で生まれ育った者同士が出会い、人生が重なる不思議と尊さを思う。

息子をかわいがってくれたおじいちゃんは4年前に亡くなった。でもきっと、今もどこかで見守ってくれている気がする。

(風)

 

2023年4月26日に、二本目の記事「灯り」が掲載されました。

「とさちょうものがたり」でも何度かお伝えしてきた、近所のおじいちゃんとおばあちゃんのことを書きました。
人こそ違えど、人はこういったつながりに助けられているんじゃないかなと思います。

先日、久しぶりにおばあちゃんに会いに行きました。コロナ禍では手紙を何度かやり取りしていたのですが、実際に会えることは何にも勝る。本当に素晴らしいことです。

この記事を読んだおじいちゃんの娘さんからお手紙をいただきました。この記事をお仏壇に供えてくださっているとのこと。

 ありがとうございます。

今日もあかりが灯る 1

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私の一冊

古川佳代子

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「地震・台風時に動けるガイド~大事な人を護る災害対策〜」 辻直美監修 Gakken

今年も台風シーズンが近づいてきました。地震も各地で頻発しています。防災対策はできていますか?わたしはといえば、いやはや情けない…。

防災グッズをそろえている方たちは、それを使いこなせるテクニックをお持ちですか?

この本の監修者である辻直美さんは、防災現場で命を助ける看護師さん=レスキューナース。現場に出動するだけでなく、減災の一環で、防災啓もう活動も各地で行っています。その経験から、人にやさしい防災の考え方、方法を伝えることが、自分にとっても他者に対してもいちばん優しいものになるだろうと考え、この本が生まれました。

防災の取り組みは「まじめに、ちゃんとやらないといけない」わけではありません。「100円ショップのすべり止めシートを適当に切って、その辺の棚に置く」だけでも昨日より防災力が1段階上がりますよ、ととてもハードルの低い、私でもすぐに取り掛かれる提案がたくさんあります。

これから防災準備を始める人、もうすでに防災に取り組んでいる人、どちらにもおすすめの知恵が詰まっています。

 

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最後のページは、みんなでおきゃく

ろいろい ろいろい

「ようきたにゃあ まあ すわりや」

「たるばあ たべや」

みんなでたべる みんなでわらう

よるはふけ またあしたがやってくる

ろいろい ろいろい

 

土佐町の絵本「ろいろい」。最後のページは、机の上に並んだごちそうの数々!

さばの姿寿司、山菜寿司、こんにゃく寿司、ぜんまいの煮物やイタドリの油炒め、手作り羊かんも。土佐町の銘酒 桂月も並んでいます。

みんなで集まってその土地の美味しいものを囲み、食べて飲んでワイワイすることを、高知では「おきゃく」と呼びます。

ごちそうを食べている人たちの楽しそうなこと!(乙女軍団の皆さんもいますね!)

 

ようきたにゃあ

おきゃくに来る人を「ようきたにゃあ」と迎え、「まあ すわりや」と声をかけ、「たるばあ 食べや」と勧めてくれる。「たるばあ」は、土佐弁で「思う存分」とか「好きなだけ」という意味です。「おなかいっぱい食べや〜」という感じでしょうか。土佐町の人たちの優しく気さくな人柄がよく出ている言葉だなあと思います。

 

皿鉢料理

さばの姿寿司

皿鉢にドーンと置かれているのはさばの姿寿司。高知県の郷土料理の一つで、お正月やお祝い事の時によく作られてきました。地蔵寺地区の長野商店・店主の長野静代さんは、さばの姿寿司作りの名人です。

塩をしたさばを一晩寝かし、柚子酢に漬ける。その絶妙な塩加減、柚子酢の香り。高知県出身の人が「高知県一美味しい!」と言うのを聞いたことがあります。

40年以上、お店の台所に立ち続けてきた長野さんのさばの姿寿司は、町中の人から愛されています。

皿鉢料理 その2 さば寿司

 

2019年。下田さんも長野さんに教えてもらいながら、さばの姿寿司作りに挑戦しました。

下田昌克さんが(再び)土佐町にやって来た! 2日目

 

山菜寿司も羊かんも

他にもみょうがやしいたけ、こんにゃくのお寿司も。かき揚げやさばのばってら寿司も盛られています。お米はもちろん土佐町産。野菜や他の材料も、ほとんどが土佐町で作られていることに驚きます。

↓長野静代さんに教えてもらった山菜寿司の作り方

皿鉢料理 その5 山菜寿司

 

↓ばってら寿司の作り方

皿鉢料理 その9 ばってら寿司

 

羊かんも手作りです。畑で収穫した小豆をコトコト煮てさらしでしぼり、寒天と混ぜ合わせてまたコトコト…。

「お箸を持ち上げて“ぽって、ぽって”と落ちるばあに、炊かないかんね」

長野さんはそう教えてくれました。

皿鉢料理 その1 羊かん

 

さまざまな種類のおかずが一枚の大きなお皿の上に盛り付けられている皿鉢料理。彩りを考えながら一品ずつ盛り付けます。「こうあらねばならない、なんてことはなくて、それぞれが自由に、それぞれの皿鉢でいいんだよ」と長野さんは教えてくれました。

山には山の、海には海の皿鉢料理があります。高知県の素晴らしい文化の一つです。

盛り付けられたさばの姿寿司の頭と尻尾をご覧ください!共にぴんと立つように盛り付ける。その手さばきは惚れ惚れするほどでした。

 

 

↓盛り付け方はこちら。動画もあります。長野さんの手さばきをぜひご覧ください!

皿鉢料理 その10 盛りつけ

 

ごちそうを囲んで、子どもも大人もみんなで食べて、笑って。昔から、生活の中の楽しみだったことでしょう。

「みんなでたべる みんなでわらう よるはふけ またあしたがやってくる」

いいこともしんどいことも、喜びも悲しさも、それぞれの人の胸の内にある。けれど、みんなで食べて笑ったら少しだけ心が軽くなるかもしれない。

おなかをいっぱいにして、ぐっすり眠って、また明日。

太陽は昇り、また新しい一日が始まります。

 

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くだらな土佐弁辞典

ぎっちり

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ぎっちり

【副詞】いつも、頻繁に

 

例:牧野博士は、ぎっちり草摘みしゆう

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昔と今の田井の街並み

土佐町の人なら誰でも知っている、土佐町の中心地「田井」の街並み。よく見ると、今はないお店も描かれています。

町の人たちが見せてくれた昔の写真やお話から、この場所にはかつておもちゃ屋さんがあり、ボンネットバスが走っていたことを知りました。かつての風景を残したい。その思いで、このページには今はなき風景も描かれています。

今回のご紹介する「昔と今の田井の街並み」のページは解説したいことが多いので、記事を2回に分けてお届けしています。

(「土佐町の絵本ろいろい ⑭ その1」はこちら

 

ろいろい ろいろい

かつてたんぼだったとちのまんなかを はしるこくどう439ごうせん

このみちぞいに みせやいえがたちならび おおきくかわった ひとのせいかつ

むかしとかわらぬ   やまと なかじまかんのんどう

このとちのふうけいをみまもりつづける

 

 

もちまき

絵の中央には「もちまき」の様子が描かれています。

棟上げ(新築の家の骨組みと屋根ができた時。建前ともいう)の時、家主と家を建てた大工さんが屋根に上がり、もちをまきます。昔は棟上げの時にまくことが多かったそうですが、現在は落成(家が完成した時)にまくことがほとんどとのこと。

御年90歳、大工の森岡忠賢さんがそう教えてくれました。忠賢さんご自身も大工として何度も屋根に上がり、おもちをまいたそうです。

 

↓忠賢さんの記事はこちら

忠賢さんのまな板

もちまきをする時は「四方もち」と呼ばれるおもちを一番先に投げたそうです。四方もちは大きな丸いおもち。屋根に上って「まず上へほおって、あんまり大きかったら瓦の上に落ちたら割れるけね、ちょっと上げてね、そしたら、ぽてんと落ちるばあの調子でコロコロッと落ちる」。

東西南北へ投げるおもちは、上へ投げるおもちよりも少し小さめ(10㎝位)。各方角の神様への感謝を込めて、屋根から外へ落ちるように投げたそうです。「“四方もち”いうけんど、真上と東西南北で “五方もち” やね」と忠賢さん。

昔は、おもちに直接「祝」と紅い文字で書き、袋に入れずに投げていたとか。現在は「祝」と書かれた袋に入ったおもちを投げることがほとんどです。

おもちの他にお菓子も一緒に投げたりと、近所からも遠くからも人が集まって、ワイワイ拾うもちまき。みんなで祝う楽しげな声が聞こえてきそうです。

 

↓もちまきのおもちを作る様子はこちら

おもち作り

 

 

中島観音堂

絵の上部に描かれているのは中島観音堂。中島観音堂には約1200年前に作られた高知県有形文化財「木造十一面観音像」があります。毎年7月末に行われる中島観音堂夏の大祭の日、年に一度だけ開帳。土佐町の人はもちろん県内外からも多くの人が参拝に訪れます。

夏の大祭の日には、観音堂へ向かう石段の途中にある通夜堂の戸が開かれ、揺れる赤い提灯のあかりのもと、飲み物などを振る舞いながら訪れた人を迎えます。

2019年、樹齢1200年の金木犀が倒れて通夜堂と石灯籠を直撃、石階段の手すりも大きな被害を受けました。修復するため、土佐町役場の若手職員がクラウドファンディングに挑戦。多くの人の賛同を得て、通夜堂や石灯籠などを見事修復しました。

クラウドファンディング、始まります!

 

 

早明浦ダム堰堤

絵の右上には皆さんご存知の早明浦ダムの堰堤が。大雨の際には放水される水が白い筋のように見えます。堰堤周辺ではさめうら湖畔マラソン大会が開催されたり、堰堤の地下100メートルの最深部には土佐酒造のお酒を貯蔵するなど、ダムを通じた交流も生まれています。
川村長康さんが、建設中のダムの写真を見せてくれました。

建設中のさめうらダム

 

軽トラックの柿の枝

国道を走る軽トラックにご注目。荷台に乗っているのは柿の枝。

2017年秋、土佐町の人たちの顔を描いてくれた下田さん。その展覧会の時、筒井博太郎さんが家の柿の枝を届けてくれました。「すごい!嬉しいなあ!」と喜んだ下田さん。その時の柿の枝が描かれています。わざわざ枝を切って持ってきてくれた博太郎さん。あらためて、ありがとうございました。

 

↓筒井博太郎さん・苗子さんご夫婦。「4001プロジェクト」で撮影させてもらいました。

筒井博太郎・苗子 (立割)

 

博太郎さんが柿の枝を持ってきてくれた時の記事はこちら。

下田昌克さんのこと 7

 

ろいろい ろいろい。

昔と今の田井の街並み。今見える風景の向こうには、この場所で泣いたり笑ったりしながら生きた先人たちの姿があったのです。過去があるから今がある。そのことを忘れずにいたいと思います。

 

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土佐町の絵本「ろいろい」。コロナ禍の数年も挟んで、約5年かけた長期プロジェクトとなりました。

完成した「ろいろい」は、ジャバラ型の少し変わった形をした絵本。ながーいページを伸ばすと、そこには土佐町の実在の風景や文化、人々が描かれています。

表面には春と夏の町。裏面には秋と冬。

15回に渡る記事で、絵本「ろいろい」を1ページずつ解説していきます。

 

 

昔と今の田井の街並み

土佐町の人なら誰でも知っている、土佐町の中心地「田井」の街並み。よく見ると、今はないお店も描かれています。

町の人たちが見せてくれた昔の写真やお話から、この場所にはかつておもちゃ屋さんがあり、ボンネットバスが走っていたことを知りました。かつての風景を残したい。その思いで、このページには今はなき風景も描かれています。

今回のご紹介する「昔と今の田井の街並み」のページは解説したいことが多いので、記事を2回に分けてお届けします。

 

 

ろいろい ろいろい

かつてたんぼだったとちのまんなかを はしるこくどう439ごうせん

このみちぞいに みせやいえがたちならび おおきくかわった ひとのせいかつ

むかしとかわらぬ   やまと なかじまかんのんどう

このとちのふうけいをみまもりつづける

 

文章中にある「かつて田んぼだった土地の真ん中を はしる国道439号線」。この文章の通り、現在お店が立ち並ぶ国道439号線周辺は、かつて一面の田んぼでした。国道ができたことで、町の人の生活も大きく変わりました。

1956年の田井

これは土佐町の畳屋さんである谷登(のぼる)さんが見せてくれた、1956(昭和31)年の田井の写真です。

国道439号線ができる前、写真中央左側の道沿いが土佐町のメインストリートでした。

 

かつてのメインストリート

清水屋旅館

絵の左下に描かれているのは清水屋旅館。築100年以上という旅館を、現在91歳の森ミネさんが切り盛りしています。

旅館に面した通りは、車がやっと一台通れる程の道幅で、人が行き交い「旅館の壁すれすれにバスが通っていた」のだそう。

清水屋旅館

 

冨士見館

清水屋旅館の隣に描かれているのは冨士見館。4代目の女将、高橋信子さんによると「ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんが大正5年(1916年)に創業した」とのこと。信子さんが小学生だった頃は「金魚屋さん」が宿泊。袋に入れた金魚を手に、年に数回来ていたそう。肩に担ぐ竿と金魚を入れる桶は、いつも冨士見館に置いてあったそうです。

冨士見館

 

山中百貨店

その向かいの「山中百貨店」は14年前に閉店。今はお店だけが残っています。仕立て屋さんだった山中百貨店。既成の服はほとんどない時代、お客さんが店頭で選んだ生地で洋服を作っていたそうです。

山中百貨店

 

岡部百貨店

そして現在も営業中、緑の庇の「岡部百貨店」。岡部百貨店を営む岡部忠利さんと真紀さんご夫婦を撮影させてもらいました。釣具や生活用品、駄菓子などを販売。大人も子どもも「おかべ」と呼び、町の人たちにとても愛されているお店です。

岡部忠利・真紀 (田井)

 

岡本菓子店

岡部百貨店の右隣に描かれているのは「岡本菓子店」。お菓子屋さんですがおもちゃも売っていて、毎日子どもたちがおこづかいを握りしめ、群がるように来ていたそうです。現在40代の人たちには懐かしい、任天堂のゲーム機「ファミリーコンピューター」も売っていたとか。「窓際のガラスのケースにはプラモデルが並んでた。よく行ったわ〜」と話してくれた人も。(かつてあったお店の場所とは違う位置に描かれています)

田井地区の曲がり角

 

西森理髪店

橋のたもとに描かれている床屋さんの赤白青のサインポール。こちらは「西森理髪店」。西森五明さん・美喜さんご夫妻が50年以上営んでいるお店です。五明さんには田井の昔の写真を見せてもらい、当時の様子を聞かせてもらったりと大変お世話になりました。

西森五明・美喜 (田井)

 

ボンネットバス

かつて走っていたボンネットバス。バスの車掌さんだった窪内花美さんに写真を見せてもらいました。

当時は「バスの扉が閉まらないほど人が乗っていて、閉まらないのにそのまま走っていた。今やったら問題やろうねえ」と話してくれました。

ボンネットバスを描いていた下田さんから「色は何色なの?」という質問がありました。当時の写真はモノクロで色がわからないため、車掌さんだった花美さんと西森理髪店の西森さんに尋ねました。「バスのボディはクリーム色、ラインは朱色だった」。お二人の記憶を辿り、この色となっています。

ボンネットバス

 

「昔と今の田井の街並み」、まずはここまで。

次回「土佐町の絵本ろいろい⑭ その2」に続きます!

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私の一冊

西野内小代

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「お探し物は図書室まで」 青木美智子 ポプラ社

地域のコミュニティーハウスにある図書館の司書さんの影響力、察知能力をメルヘンタッチで描いている。5章からなる短編集のような構成。

婦人服販売員、夢を実現したいサラリーマン、出産後のキャリアウーマン、ニート、そして定年退職後の自分の居場所を求めるおじさん等が、鬱屈した想いを抱え、取り巻く環境に不満を抱き、この図書館に引き寄せられるがごとくやって来る。

そして不思議な司書さんに出会い、一見尋ねた本とは関連のないと思われるタイトルの本を薦められ、付録と称するぬいぐるみのような手芸品を手渡される。

本を探しに来てはいるが、実際は自分探しの来館者が、司書さんの助言により前向きな人生へと漕ぎ出す展開。ファンタジックな司書さんの数少ない助言により自らが思いを定めるようになる過程がキーポイント。

 

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土佐町の絵本「ろいろい」。コロナ禍の数年も挟んで、約5年かけた長期プロジェクトとなりました。

完成した「ろいろい」は、ジャバラ型の少し変わった形をした絵本。ながーいページを伸ばすと、そこには土佐町の実在の風景や文化、人々が描かれています。

表面には春と夏の町。裏面には秋と冬。

15回に渡る記事で、絵本「ろいろい」を1ページずつ解説していきます。

 

 

秋は、黄金色の棚田。

ろいろい ろいろい。

次にやってきたのは高須地区の棚田。毎年、四季折々の美しい姿を見せてくれる棚田には県内外からも多くの人が訪れます。

 

ろいろい ろいろい

こがねいろにそまったたなだ みのりのあき

さらさらと  いなほをゆらすかぜがふく

このだいちをたがやしてきたひとたちの こえがきこえる

なによりのごちそう しんまいおにぎり

「ああ うまいにゃあ」

 

秋には、黄金色の稲穂の上を気持ちの良い風が通り抜けていきます。その風の道を先人たちもきっと見ていたことでしょう。棚田を見つめていると、この大地を耕してきた人たちの声が聞こえてくる気がするのです。

 

↓高須地区の棚田は「土佐町ポストカードプロジェクト」でも何度も登場しています。

2019 Sept.

2017 May

 

土佐芝刈り唄

土佐町に昔から伝わる民謡「土佐芝刈唄」。化学肥料などなかった時代、柴を刈って肥料として田んぼに入れていました。その作業は重労働で、「山のこっちでも向こうでもお互い励まし合う」ために唄っていたといいます。

そのお話が「土佐町の民話」の中に書かれています。

土佐柴刈り唄 前編(高須)

 

この唄の歌い手が池添博喜さん。2019年秋、稲刈りがひと段落した頃に、棚田で「土佐芝刈り唄」を歌っていただきました。朗々と歌い終わった池添さんの晴れ晴れとしたお顔が印象的でした。

池添博喜 (相川)

 

↓こちらは池添さんに唄っていただいた時の動画です。

【動画】土佐柴刈り歌

 

↓土佐芝刈り唄にまつわる話をもう一つ。こちらも「土佐町の民話」に掲載されています。芝刈り唄の全歌詞も記載されています。

土佐柴刈り唄 後編(高須)

 

 

田んぼの三角

田んぼに立っている三角の存在。このように藁の束を乾かして置いておき、乾いた頃にあか牛農家さんが取りにきて、あか牛の餌になります。お米どころであり、あか牛が育つ土佐町だからこその循環です。

この三角の名前は何という名前なのか?聞いてまわったところ、「わらぐろ」「わらすぼ」「すぼつき」と3つの候補が出てきました。

何だか懐かしい、土佐町の原風景のひとつです。

2021 Oct. 相川

2017 Oct.

彼岸花団子

秋、田の畦に咲く彼岸花。昔、この彼岸花の球根を団子にして食べたという話を司馬遼太郎さんの編集者だった窪内隆起さんが書いてくれました。

彼岸花の球根には毒があり、そのまま食べることはできないので、水にさらしてゆがいて、また水にさらして…を何度も繰り返す。

やっとできた団子はほぼ味がなく、砂糖醤油をつけて何とか食べられるというものだったとか。食糧の少なかった時代、飢饉の時の大事な非常食だったそうです。

赤い彼岸花の存在は、いくつもの時代を経て今があることを思い出させてくれます。

彼岸花団子

 

 

土佐あか牛を育てる

土佐町には、土佐あか牛を育てる畜産農家さんがいます。土佐あか牛は、高知県の山間部を中心に飼育されている褐色の毛色をした牛で、年間300~400頭しか出荷されていない貴重な品種です。

土佐町にはかつて100軒ほどの畜産農家があったそうですが、現在は約30軒ほどに減少しています。

近くで見ると、つぶらな瞳で優しい顔をしているあか牛。日々、農家さんに大切に育てられています。

 

↓畜産農家の沢田健次さん・智恵さん。「4001プロジェクト」で撮影させていただきました。

沢田健次・智恵(高須)

 

↓澤田清敏さんといち子

澤田清敏・いち子 (高須)

 

↓上田義和さんには、土佐あか牛の出産を見せていただきました。

土佐あかうしの出産

 

 

柚子の収穫

秋、土佐町では柚子の収穫時期を迎えます。澄んだ黄色のコロンとした柚子の香りは爽やかで、全国に送られています。

その柚子畑で撮影させていただきました。写っているのは、柚子を育てている田岡さん一家の子どもたちです。

2020 Nov.

 

ろいろい ろいろい。

今年収穫した新米のおにぎりをいただいて、おなかいっぱい。

さあ、さあ、元気に歩いていきましょう。

 

 

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とさちょう植物手帖

ノアザミ(野薊)

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アザミには品種(※ひんしゅ)や変種が多く、世界に250種以上、日本にも100近くあるといわれています。

嶺北地域では春から夏に咲くのはノアザミ(野薊)だけで、この時期の野山でアザミを見掛ければそれは間違いなくノアザミです。

 

土佐町高須の高台にある牧場の周辺には季節ごとに色々な花が咲きます。つい先日訪れた際には、牛が放たれる前の広い放牧場に群れて咲くノアザミが出迎えてくれました。

草原いっぱいに紅紫色の頭花が立ち上がり、ひときわ目を引く光景でした。

 

付近には笹ヶ峰登山道へ向かう道路があり、沿線にはニガナやハナニガナ、ウマノアシガタなどの黄色い花、アオテンナンショウやナンゴクウラシマソウ、スイカズラ等々沢山の花が咲いていました。

 

真っ白なウツギの花にはアサギマダラ(※浅葱斑)が来て羽を休めていました。

 

以下、花のいくつかを掲載します。

ニガナ(苦菜)

【キク科ニガナ属の多年草】

花びらは5~7枚で、黄色い花を咲かせる。

 

 シロニガナ(白苦菜)

【キク科ニガナ属の多年草】

ニガナの品種。ニガナの白花をシロニガナという。

 

ハナニガナ(花苦菜)

【キク科ニガナ属の多年草】

ニガナの品種。ニガナに似ているが、花びらが8~11枚ある。ちなみにハナニガナの白花はシロバナニガナと呼ばれる。

 

 ウマノアシガタ(馬の足形)

【キンポウゲ科キンポウゲ属の多年草】

光沢のある5弁花を咲かせる。果実は金平糖のような形をしている。

 

花の紹介はこのぐらいにして、以下、赤い実を2種掲載します。

 

 

ヤブヘビイチゴ(藪蛇苺)

【バラ科キジムシロ属の多年草】

葉の先がやや尖る。果実の直径は1.5~2.5㎝。毒はないが、食べて美味しいものではない。よく似たヘビイチゴは葉の先が円く、果実が小さくて直径1.5㎝に満たないものが多い。

 

クサイチゴ(草苺)

【バラ科キイチゴ属の落葉小低木】

茎や枝に細かい棘がまばらにある。果実の直径は1~2.5㎝。食用になる。酸味が少なく甘くて美味しい。

 

 

※品種(ひんしゅ):植物分類における階級の一つで変種より下位のランク。花の色の違いなどごく一部のみの違いがある個体のこと。

※アサギマダラ:海を越えて旅をする渡り蝶として有名。春から夏にかけて南から北へ移動し、秋になると南へ移動する。

 

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