下田昌克さんが土佐町に滞在したことが高知新聞の記事に掲載されました。
下田さんが土佐町へ来たきっかけは、とさちょうものがたり編集長の石川と下田さんが旧来の友人であり、そのご縁で実現したことでした。
下田さんに土佐町の人たちの絵や風景の絵を描いてもらい、土佐町にある「当たり前のような」ものごとをまた違った角度で見つめることで、町のよさを再確認することができたらと考えました。
下田昌克さんは2017年10月2日から9日、土佐町に滞在し、土佐町の人たちや風景の絵をたくさん描いてくれました。
その前後を通じ、高知新聞嶺北支局の森本敦士さんが3回にわたって記事を書いてくれました。
・1回目 2017年9月29日
「絵描き」下田昌克さん 土佐町を描く
【嶺北】
土佐郡土佐町教委は10月2~8日、谷川俊太郎さんの絵本で絵を担当するなど「絵描き」として活躍する下田昌克さん(50)
=東京在住=を招き、住民や風景をモチーフに制作してもらうイベントを行う。
写真家で町地域おこし協力隊員の石川拓也さん(43)が下田さんと一緒に仕事をしたことがあり、その縁で実現。下田さんは世界各地を旅しながら描きためた肖像画を日本の雑誌で連載したり、布で恐竜の骨格標本を作って話題を呼んだり、多彩に活躍している。
下田さんは土佐町に滞在中、各地区に出向いて絵筆を振るう予定で、4日はみつば保育園の年長26人、5日に土佐町小学校2年生24人と一緒に絵を描く。
最終日の8日午後1時から同町土居の青木幹勇記念館で、下田さんと町民が制作した作品を展示し、午後3時からトークショーも予定。入場無料。町教委は、今回の作品を基にしたグッズ製作も計画している。
・2回目 2017年10月11日
土佐町 笑顔輝く肖像画 下田さん町歩き描く
【嶺北】
「絵描き」の下田昌克さん(50)=東京都=が1~9日、スケッチブックとクレヨンを手に土佐郡土佐町を訪れ、保育園や街角、棚田など町内を回って住民の絵を描いた。下田さんが人懐っこく「にっ」と笑うと向かい合った人もつられて「にこっ」。仕上がった肖像画はみなカラフルに笑っている。下田さんは「楽しかったよ。また来たいね〜」と言い残して町を後にした。描きためた絵の展覧会が、土佐町土居の青木幹勇記念館で29日まで開かれている。
下田さんは神戸市出身。26歳から中国やチベット、ヨーロッパなどを訪問し、旅先で出会った人の肖像画を帰国後、雑誌で連載。また、谷川俊太郎さんの絵本の絵を担当したほか、布で恐竜の骨格標本を作って話題を呼んだり、舞台芸術を手掛けたりと、多方面で活躍している。写真家で町地域おこし協力隊の石川拓也さん(43)と仕事をしたことがある縁で町教委が招いた。
下田さんは滞在中、町内のみつば保育園と土佐町小学校に出向き、子どもたちと共に高さ2.7メートル、幅5.5メートルの紙いっぱいにクジラや怪獣など、思い思いの絵を描いた。保育士の山下志保さん(48)は「下田さんの色使いをまねて、子どもの絵が変わった」と話す。
下田さんが肖像画を描く姿は圧巻。対面するとすぐにクレヨンを取り、笑顔で相手をさっと見てはどんどん手を動かす。描きながら話もする。「僕、ほんとはサラリーマンになりたかったんだあ。チベット人に絵を褒められてなかったらやってなかったかもー」。黄色で輪郭をつくり、ピンクを重ねると絵の表情は一気に立体感を帯びる。緑も紫も使う。
「調子いいときは、色が粒になって見えるんだよな」。肖像画は15分ほどで出来上がり、隠された色が、表情が、下田さんの手によって浮かび上がる。
展覧会は8日に開幕し、約30人の肖像画や滞在中の様子を収めた写真や動画が並んだ。訪れた人は見知った顔を見つけては「いい表情」などと感心しきり。下田さんが描いたアケビやシイタケの絵をTシャツとバッグにプリントした町オリジナルの品も完成した。 (森本敦士)
・3回目 2017年10月26日
魅力再発見
なぜ笑顔の絵ばかりなのか。
先日、土佐町で町民の肖像画を描いた画家の下田昌克さん(50)=東京都=に問うた。
すると、「みんな笑顔なんだもん」。
自分も描いてもらって理由が分かった。それは下田さんの無邪気な笑顔が目の前にあったから。恐らく誰もが頰を緩めてしまうのだろう。出来上がった自分は自分でも気付かない新鮮な表情だった。
下田さんが製作した肖像画は町内で29日まで展示されている。初対面で描くのは得意ではないそうだが、今回「(人との距離が)壁がなくて近い。超楽しかった」とモデルの魅力を存分に引き出していた。
下田さんを招いたのは、町の魅力を発信するプロジェクト「とさちょうものがたり」を立ち上げた地域おこし協力隊の石川拓也さん(43)。写真家として世界を旅し、レディー・ガガさんらを撮影した華やかな経歴もあるが、「生きていくための全てが土佐町にある」と昨夏移住した。
石川さんは町民性や文化もブランド化できると信じる。下田さんらプロの感性を通じ、住民が町の魅力を再確認するきっかけにしてほしいと願う。当たり前を誇りや強みに変える“再発見”の取り組み。必ず発信できるものが見つかるはずだ。
(嶺北・森本敦士)
下田さんが描いた絵とその時の出来事の様子は、土佐町のフリーペーパー「とさちょうものがたり ZINE 01 下田昌克、土佐町を描く」に詳しく掲載されています。ぜひ多くの人に読んでいただけたらと願っています。