とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただいています。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。
鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載されます。
五色の旗
今年3月に滞在したブータンでは青、白、赤、緑、黄色の5色の旗をあちこちで見かけた。公用語のゾンカ語で「ルンタ」と呼ばれる旗には経文が書かれており、寺院や山の中で、万国旗のように風に揺れていた。
ルンタは「風の馬」という意味で、経文と共に馬の絵が描かれている。各色には意味があり、青は空、白は雲、赤は火、緑は水、黄は土。これらは生きるために必要な五つの要素で、自分や家族の健康と幸せを願う祈りが込められていると知り、驚いた。土佐町にも5色の旗があるからだ。
毎年6月、土佐町の各地では伝統行事の虫送りが行われる。虫送りは稲に虫がつかないよう豊作を祈る行事で、5色の色紙をつなげて作った「五色の旗(ごしきのはた)」を竹に結びつけ、田のあぜに立てる地域がある。
「赤は太陽、黄は月、青は火、緑は水、黒は大地。この五つが調和し、豊かな実りを得られるようにという願いが込められているのですよ」。宮司さんがそう教えてくれた。
五色は、仏教において如来の精神や知恵を表すと聞いたことがある。旗を揺らす風の向こうに、ブータンと日本のつながりを感じた。その土地で生き、祈る人たちの姿が見えるようだった。
(風)
2024年6月5日の高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。
毎年6月に土佐町で行われる伝統行事、虫送り。今年も町内各地で行われました。
太鼓や鐘の音が響く中、子どもや大人が「サイトウベットウサイノボリ イネノムシャ ニシイケ」と唱えながら地域の中を練り歩きました。
土佐町の宮古野地区では虫送りの際に、田んぼのあぜに「五色の旗」を立てます。五色にはそれぞれ意味があることを、白髪神社の第41代目の宮司である宮元千郷さんが教えてくれました。
その五色の旗ととてもよく似た旗をブータンで目にした時はとても驚きました。
遠く離れたブータンの地と、今自分が暮らす町がつながっている。その感覚はなんとも不思議でありながら、とても心地よいものでした。