4月中旬、土佐町の平石地区を車で走っていると、道脇の斜面に這いつくばるように何かを収穫している人がいました。
その人は近藤雅伸さん。
「この葉の正式な学名はギボウシ。このあたりでは「きしな」というし、田井(土佐町の中心地)のあたりでは「いそな」というのよ。
じけ(あく)もないきね、軽くぬめりがあるけんど、さっとゆがいておひたしにしたり。生姜入れたり、揚げ(油揚げ)を入れてもかまんきね、炒めても食べられるし。」
「ある程度まばらにとって残していくわけよ。おっきい方が美味しい。なるたけ元(根元)をとって。ゆがいたら量が減るきね。
これからずっと先、夏になって葉がかとうなるき、その時は葉は取って、茎は湯がいておひたしにして食べる。茎は真夏でもかとうならん。鰹節をかけたり、ほうれん草と同じように食べられるよ。」
「こうやって残しちょいちゃったら またおんなじ量が生えるきね。ここら辺一帯、株があるき。
時期的に寒いとことあったかいとことあったら、だんだんに出るきね、あっちこっち取りに行ったらいい。
ちっさい時に採って塩漬けにしても置ける。水につけて塩抜きして、そのままの形で煮物にしたり炒めたり。いろんな食べ方があるきね。」
近藤さんは言いました。
「昔の人の知恵はすごいね。昔はものがない時分やきね、ここら辺にあるもんをとって食べるしか方法がないんよね。今から先が一番お金がいらんときよ、いろんなものが出てくるきね。」
土佐町は今、ゼンマイ、わらび、イタドリ、たらの芽…、山の恵みの収穫に大忙しの季節です。
この日、近藤さんは稲の苗を育てる苗床を作る仕事をしていた合間に「ちょっと採っておこう」と、ギボウシを収穫していたそうです。スーパーに行かずとも、目の前の山を見渡して今日のおかずの材料を見つけることができるのです。ちょっとした合間にちょっと収穫しておく。それは、その人の心のあり方にもつながっているような気がします。
「りぐった言葉ではよう言わんけんどよ、気安うに何でも言うてもろうたら!」と近藤さんは見送ってくれました。
その日の夜、近藤さんが教えてくれたように、おひたしにしていただきました。
ギボウシのおひたし
【材料】ギボウシ・かつお節・しょうゆ
①ギボウシを洗って、さっと湯がく。
②食べやすい大きさに切り、かつお節や海苔をふりかけ、しょうゆを加えて和える。千切りした生姜を入れても美味しい。
くせがなくてとても美味しい!色々工夫ができそうです。
この日、家に帰る道の途中に気づきました。
この「ギボウシ」、なんと私の家の近くにも生えていたのです!
今日は緑の野菜がないなあという時に重宝することになりそうです。