2022年11月5日〜13日、土佐町郷土学習センターで「南正文展覧会」が開催されました。南正文さんは少年時代に事故で両手を失い、絶望の淵に迷いながら、口で絵筆を咥え、描くことを見つけた日本画家です。2012年に亡くなるまで、約900点の作品を残しました。
なぜ、南正文さんの展覧会を土佐町で開催することになったのか?
それは以前、町内で「Monk」というラーメン屋を営んでいた正文さんの息子、一人さんの「お父さんの絵をたくさんの人に見てもらいたい」という思いがあったからでした。
編集部は一人さんから正文さんの画集「よろこびの種を」を手渡され、絵を描くに至った経緯やお人柄を知り、ぜひ土佐町で展覧会をと企画しました。本来ならば2020年4月に開催予定だったのですがコロナ禍で延期を繰り返し、今回やっと、2年半越しの開催となりました。
心の深いところへ
展覧会スタート前日、高知放送「こうちeye」で展覧会会場の様子が生中継されたこともあり、町内はもちろん、遠方からも多くのお客さまが来てくれました。
体育館に展示された絵は、桜の花びらを何回も重ねて描いたという『活きる』や、二羽の鶏を描いた『共に』など30点。座ったり、絵の近くに寄ったり、お客さまは思い思いにじっくり絵と向き合っていました。
会期中、毎日2回、正文さんの生き方を描いたドキュメンタリー映画「天から見れば」を上映しました。
「この映画を見る前と後では、絵の見え方が変わりますね」と話すお客さまが何人もいました。特にご年配の方は、正文さんの人生を自分と重ね合わせているようでした。目を赤くしながら映画会場から出てくる方もたくさんいました。
会期後半は、友人の紹介で来たという人が増えていきました。「展覧会に行ってすごくよかったと聞いたので。本当に来てよかったです」と感想を伝えてくれた人も。
中には、自分のご主人が事故で寝たきりになってしまい途方に暮れ「どうやって立ち直ったのか、弥生さんに聞いてみたい」という方も。(弥生さんの許可を得て、弥生さんの連絡先をお伝えしました)
そういったお客さまの姿は、正文さんの人柄や生き方が、その人の内へ深く静かに染み渡っていっていることを伝えてくれました。その人の歩んできた人生にそっと寄り添うような、じんわりと優しく包んでくれるような力が正文さんの絵や姿にはあるのだと思います。
(「喜びの種を 南正文展覧会 その2」に続く)