古川 佳代子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「緑の精にまた会う日」 リンダ・ニューベリー作, 野の水生訳, 平澤朋子絵 徳間書店

 日本に座敷わらしやコロボックルの伝説があるように、イギリスには豊かな自然の象徴のグリーンマンや炉端のロブ等の民間伝承があるそうです。

ルーシーのおじいちゃんの畑には「ロブさん」が住んでいて、おじいちゃんの畑仕事をちょこちょこと手伝ってくれています。ルーシーはまだロブさんを見たことはありませんが、ロブさんの存在をときどき感じることはあります。

やっとロブさんの姿を見ることができるようになったのもつかの間、おじいちゃんがなくなってしまい、畑は売りに出されます…。

目に見えないものは「ない」という人がいます。でもそうでしょうか?人を好きになる心や誰かに対する感謝の気持ちは目に見えないけれど、確かに存在しています。魔法はないっていう人がいますが本当にそうでしょうか?

小さな黒い朝顔の種を植えればちゃんと芽が出て夏には美しい花が咲くこと。ツバメの卵からはトカゲやニワトリでなく必ずツバメが孵ること。ちいさくて何もできなかった赤ちゃんが幼児になり子どもに成長し、いつしか大人になっていくこと…。どれ一つとっても全く不思議な、魔法としか思えないことで世界は満ち溢れています。

いつもいつも、幸せに平和に生きていくことは難しいかもしれません。でも、自分の周りにあるたくさんの魔法の力を信じて、自分の芯にある変わらぬものを大切にして道を歩き続ければ、その先にはきっと祝福がある、とルーシーとロブさんが教えてくれました。

 

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「ルポ 森のようちえん~SDGs時代の子育てスタイル」 おおたきとしまさ 集英社新書

 遠い昔、幼児教育をほんのちょっぴり齧った(ほんとうにちょっぴりです)せいか、モンテッソーリ教育やシュタイナー教育、イエナプラン教育などの実践には興味や憧れがあります。これらの教育と並び称される教育が日本の各地で展開されているらしいのです。素敵!

その教育・保育活動を称して「森のようちえん」と名付けていますが、そのアプローチ方法は一律ではありません。 生きぬく力に満ちた、迫力のある子どもたちが育っている様子は見事の一言。こどもはやはり希望にあふれた存在なのだと伝えてくれるルポルタージュです。

 

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「はなのすきなうし」 マンロー・リーフ文, ロバート・ローソン絵, 光吉夏弥訳 岩波書店

昔、スペインの牧場にフェルジナンドという子牛がいました。フェルジナンドは一人静かに草の上にすわって、花のにおいをかいでいるのが好きでした。他の子牛たちはいつか闘牛で活躍したいと飛んだり跳ねたりしていましたが、フェルジナンドはそんなことには全く興味がありませんでした。

それから数年後、体の大きな立派な雄牛に成長してもフェルジナンドの好きなことは、花のにおいをかいで静かにいることでした。ところが…。

この絵本がスペインで発行された1936年は内戦の最中で、平和主義者の象徴として国内で発禁になったこともある作品です。それでも名作として世界各国で読み継がれているのは、自分らしく自然体で、周りに流されることなく穏やかに生きるフェルジナンドの個性が、人々の心に何かしらの善きものをもたらしてくれるからではないでしょうか?

 

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「はるがきた!」 ジーン・ジオン文, マーガレット・ブロイ・グレアム絵, こみやゆう訳 主婦の友社

春から夏、夏から春、と季節の移ろいを感じる時間は楽しいものです。その中でも特に冬から春になる時間は格別に思われます。でも、例年なら春の気配を感じるころなのに、どこもかしこもどんよりとした灰色だとしたら、どうしますか?

「どうして春を待たなくっちゃいけないの? ぼくたちで春をつくっちゃおうよ!」と町の人たちに呼び掛ける小さな男の子。その言葉に鼓舞されて、人々は町を春の色に塗り替えていきます。町中すっかり春の装いになった夜、嵐がやってきて…。

自然災害や戦争や感染症など、自分の力だけでは好転させられないものはたくさんあります。でも、あきらめずに願い、行動し、希望を失わずに生きていればきっと待ちわびる「春」がやってくることを伝えてくれる絵本です。

 

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「#マイネーム」 黒川裕子 さ・え・ら書房

名前って不思議です。誰もが持っているものなのに、自分で自分に名前をつけることはできません。呼んでもらいたい名前もあれば、呼んでほしくない名前もあるでしょうに…。

主人公の名前は美音(みおん)。この名前はパパが私につけてくれた素敵な名前。ママは「結婚して名前が変わったとき、感動して泣いちゃった」と言っていたのに、性格の不一致で二人は離婚。中学生になった春、美音は坂上美音から戸松美音になります。

中学生活スタート初日、担任から生徒たちのこと、またお互いのことも名字にさんをつけて呼ぶ「SUNさん運動」を取り入れることになったと告げられます。地元中学生限定Nスレッドに(自分の名前が嫌いな奴集まれ #マイネーム)の呼びかけを見つけた美音は、自分の呼ばれたい名前を書いた名札を付けて登校します。 #マイネームに賛同する子もいれば賛同しない子もいます。養子縁組で名前の変わった子や在日コリアン、あるいは夫婦別姓を選んだカップル等など、「なまえ」に対する考えはそれぞれ違います。

違いはあっても正直な思いを伝え、考えを話すなかから浮かび上がってくるのは「誰にも支配されない、世界で一番自由な“自分”」でありたいという、譲れない想い。

私って、いったい何者なのだろう…?

 

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「世界のかわいい本の街」 アレックス・ジョンソン著 井上舞訳 X-Knowledge

ウェールズの小さな田舎町「ヘイ・オン・ワイ」を知っている人がいたら、きっとその人は根っからの本好きの人に違いありません!

ヘイ・オン・ワイは知る人ぞ知る「本の街」発祥の地です。1961年にリチャード・ブースがお城を古書店に変身させたことをきっかけに、小さな村に次々と本屋が誕生し、1970年代には「本の街」として村は有名となり、本屋による「村おこし」の好例となりました。

現在では40店舗ほどの本屋があり、毎年5月から6月にかけて行われる「ヘイ文学フェスティバル」には観光客や作家、音楽家、科学者など何十万人もの人が小さな村に訪れるそうです。

「本を核とした町おこし」は、始めることは比較的容易ですが、継続することはなかなか難しいプロジェクトです。それは承知しているのですが、いつかこの嶺北の地にもすてきな「本の街」を誕生させることはできないかなぁ~。

 

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「ぼくにはこれしかなかった」 早坂大輔著 木楽舎

子どもに本を手渡す仕事に就いてから、かれこれ20年以上が経ちました。司書として働く毎日はとても幸せで、これこそ天職(^^)vと思うこともあります。とはいえ子どもの時から司書になろうと思っていたわけではありません。いろいろな偶然が重なり「本を手渡す側の一人」になりました。

司書になる前に経験した仕事も楽しく、今の自分を培ってくれる大切な栄養素となっています。だからでしょうか?初志貫徹した人よりも、紆余曲折を経た人の生き方に魅力を感じます。

盛岡市で独立系の本屋「BOOKNERD」を経営されている早坂大輔氏は、書店員の経験も出版社で働いた経験もゼロなのに、生まれ故郷でもない盛岡に、40歳を過ぎて小さな本屋を開店されました。その過程は綺麗事ではすまされるはずもなく、書店の、仕事の、そして生活の現実が包み隠さず綴られているのが本書です。

自分の生きかたや進路に迷うことって決して悪いことではないし、一本のまっすぐな道でなければ間違いというわけでもないと思います。「これしかない」と実感できる生き方に出会うまで、堂々と迷ってみるのも素敵な生き方だと思います。

 

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「捨てないパン屋の挑戦 ~しあわせのレシピ~」 井出留美 あかね書房

何年か前のこと、「とてもおいしい天然酵母のパンを定期購入できることになったんだ」と、友人がちょっと自慢げに話してくれました。それからしばらくして「こないだはなしたパン屋さんが本を出したよ」と教えてくれたのは『捨てないパン屋』(清流出版)。早速読んでみたところ、なんて素敵な生き方&考え方!それからまたしばらくたったころ、先の友人から「あかね書房からも本が出たよ」と教えてもらったのがこれです。

清流社の本のなかでは、パン屋としての矜持の様なものが綴られていましたが、こちらの『~しあわせのレシピ』では、捨てないパン屋になるまでの紆余曲折が丁寧に描かれています。人間らしく、幸せに生きるということと重なる印象的な言葉がたくさんありました。なかでも「食べものが一番の環境問題」という言葉は事あるごとに思い出され、頭の中に響いています。

 

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「最初の質問」 長田弘 詩 いせひでこ 絵 講談社

詩人の長田弘さんが紡ぐ言葉はどれも美しく、まっすぐに心に届きます。ちょっと嬉しいことがあった時、あるいはすこし淋しくなった時、気がつけば長田さんの詩集やエッセイを開いています。

けっして麗々しい言葉ではないし、よく口にする言葉なのに、長田さんが記すると、言葉が言葉本来の意味を持ち、美しい響きを取り戻すように思われます。

「今日、あなたは空を見上げましたか。」
「空は遠かったですか、近かったですか。」
「樹木を友人だと考えたことがありますか。」
「何歳のときのじぶんが好きですか。」  ……

答えを思うたび、豊かなものに満たされていく絵本です。

 

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「ちいさなおじさんとおおきな犬」 バールブロー・リンドグレン文, エヴァ・エリクソン絵,菱木晃子訳 あすなろ書房

浜田廣介の「泣いた赤おに」を覚えていますか?心優しく人間と友だちになりたいと願う赤鬼と、友だちの願いをかなえるために事故犠牲を厭わない青鬼の友情物語。読むたびに理不尽さに憤り、赤鬼、青鬼どちらもが可哀そうで仕方なく、読むたびに泣いてしまうおはなしでした。

この絵本の主人公、ちいさなおじさんも友だちがいません。「ひとりぼっちのちいさなおじさん 友だち募集中」と家のそばの木に貼り紙をするおじさんは、赤おにを彷彿させ、どんなことになるのかとドキドキしながら読みました。

道行く人から見ないふりをされるちいさなおじさんでしたが、10日目の夜、大きな犬がおじさんのそばにやってきます。不器用で内気なおじさんとおおきな犬は徐々に距離を縮めていくのですが、そこにかわいい女の子が現れて…。

おじさんの気持ちに寄り添いながら味わってほしいお話です。

 

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