西野内小代

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西野内小代

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「魔女と過ごした七日間」 東野圭吾 KADOKAWA

「ラプラスの魔女」シリーズの最新作です。

この本も特殊設定ミステリー。エクスチェッドと呼ばれる、特殊で秀でた才能の持ち主である天才が活躍する。

母親を亡くし、父親(元刑事)と二人で生活している男子中学生が主人公。この父親の不審死から物語は展開する。
中学生の息子一人が残され、たまたま出会った魔女(特殊才能の持ち主)と犯人探しに挑む七日間を描いている。

後半は、マイナンバー制度を連想させる社会批判も織り交ぜながら繰り広げられていく。「ラプラスの魔女」ほどのドキドキ感はなかったが、ハズレのない面白さだった。

 

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私の一冊

西野内小代

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「教室がひとりになるまで」 浅倉秋成 KADOKAWA

フラッガーの方程式」の著者の出世作です。
同じクラスの高校生が次々と自殺していくというショッキングな出来事から始まる。その事件に関わっているのが特殊能力の持ち主であるクラスメート。この高校では、代々「特殊能力」を受け継いでいくという伝統が確立されている。

自殺した一人の「特殊能力」をたまたま受け継がされてしまった(受取人となってしまった)、普通であったはずの男子生徒がキーマンとなって解明に挑むストーリー。
現在流行している「特殊設定ミステリー」のカテゴリー。この題名を見た時、一クラスの教室が、犯人一人を残してみんな死んでしまう内容か…?あな恐ろしや!と思った。そうではなく、教室を擬人化してのタイトルだった。

みんな一緒、友達は多いほど幸せ、といった先入観、強迫観念、学校におけるカーストにメスを入れる内容だった。

 

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私の一冊

西野内小代

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「フラッガーの方程式」 浅倉秋成 KADOKAWA

数学の公式を紐解く物語を類推させるタイトルですが、全く無関係。

フラッガーシステムとは「誰もが現実において、物語の主人公になれるシステム」であって、フィクションを現実世界に取り込むプロジェクトのことらしい。

ある日、このフラッガーシステム開発プロジェクトの村田静山という男性に帰宅部の男子高校生がスカウトされる。そして、その申し入れを安易に受け入れてしまったばかりに彼の大混乱の一か月が始まる。

読み始めは支離滅裂のギャグテイスト、理解不可能だった。ひたすら我慢して読む。

無秩序のように思えた数々の事件が、実は重要な伏線だった。最後はきっちりと伏線を回収し着地する。

一風変わった構成ではあるが、後半は不可解な世界に引き込まれてしまう。不思議な本だった。

 

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私の一冊

西野内小代

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「百人一首 百人の物語」 辻井咲子 水曜社

一首には一つの解釈があるのみとずっと思っていた。違う感じ方をしてもそれは私が間違っているのであって、正解を覚えなくては…と長年思っていた。

時々こんな作品がどうして長く世に残っているのかと不思議に思うこともある。この本に出会い、長い年月を経る過程において、解釈は変化していく場合もあることを理解した。

それならば、自己流に解釈してもいいのではないか、と気軽に接することができるようになった。

百人一首の選者である藤原定家は、政治的な思惑や世間の評判を気にして選んだ可能性も考えられるそうだ。表現や解釈は自由と感じることにより、固まっていた思考がほぐされていく思いがする。

この本は、それぞれの作者とその歌を詠んだ時の状況も含め、その歌の背景を簡明に解説してくれる。

 

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私の一冊

西野内小代

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「六人の噓つきな大学生」 朝倉秋成  KADOKAWA

優秀な就活生六人の関わりを描いた作品。それぞれの個性が際立ち、秀でた描写力で迫ってくる。

伏線に更に伏線が重ねられている、油断大敵である。読み手は作者の意図通り、翻弄されるがままとなる。

最終選考に残った6人の優秀な就活生の中に、自分以外を排除して内定をとりつけようと画策する卑劣極まりない犯人がいる。その6人の中で唯一入社できた一人が入社6年目にして、ふとしたきっかけで、真の犯人探しを始める。

その奮闘と精神状態を綿密に描くことで、読者を混乱の渦に巻き込む。最終ページまで心がざわつく。

 

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私の一冊

西野内小代

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「日本史を暴く」 磯田道史 中央公論新社

入荷パトロールに登録すること2回、やっと届いた。さすが人気歴史家さんです。

歴史上の人物や事柄を独自の現代語に変換・装飾してくれるので、とても日本史を身近に感じられる。この本も例に漏れず、古文書からの解説が楽しい!

例えば、鼠小僧は決して「義賊」ではなく、むしろ変態性の素質を秘めたコソ泥にしか過ぎなかった。幕末の会津藩主「松平容保」は「高須四兄弟」とうたわれ、兄弟皆優秀であったらしい。

何故、高須藩のようなわずか三万石の小藩から、このような幕末史を動かした人材がごっそりと搬出されたのか、古文書と出会い子育ての雰囲気を垣間見たと紹介されている。

歴史に色付けをして未来へと誘ってくれる。大河ドラマの見方が変わってくる。

 

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私の一冊

西野内小代

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「名著に学ぶ60歳からの正解」 齋藤孝 宝島社

「ぞうさん」の歌詞にそんな解釈があったとは、全く気がつかなかった。

最近、「??歳からの~」と銘打った本が気になる。迷える年配者の救世主となり得るか!?

お手軽に名著を解釈でき、尚且つ人生の指針を学べるかもと、「名著に学ぶ~」という言葉の誘惑に乗ってしまった。が、やはり本編を理解していないと、頭に入ってこない。お手軽と高を括っていたが、なかなかはかどらなかった。

信念・確信を持ち、臆病な自尊心を脱ぎ捨て、孤立しないように心掛けることが必要、と説いている。

「プライドは安いものやで、捨てなはれ」80代の翁の言葉を思い出した。文字で感じるよりも強烈であった。

しかし、「ぞうさん」の歌詞にそんな解釈があったとは!私は思ってもみなかった。気になる方はご一読を。

 

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私の一冊

西野内小代

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「赤と青のエスキース」 青山美智子  PHP研究所

題名の謎はエピローグで解明、エスキースとは「下絵」のことらしい。

一枚の絵をベースに、5つの短編のような構成。第4章辺りで「エッ」と気づく。エピローグで糸がほぐされる。

それぞれの章には登場人物に対する深い洞察が含まれており、心模様が描かれている。

20歳前後の恋愛事情を扱った内容の予感がして、楽しく読めるかどうか不安だったけれども、予感は見事に裏切られた。

仕掛け満載の読み応えのある構成だった。

 

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ほのぼのと

にわとり

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ある日、手伝いに来てくれた親類の男子が、お隣さんの飼っている「にわとり」を興味津々の様子で眺めていた。

私はふと子供時代の事を思い出した。

昭和30年代の頃は「にわとり」を飼っている家は比較的多かったように記憶している。私の家でも祖母が青菜を刻み、糠を混ぜ込み、竹を半分に割った樋状の餌箱に均等に分け入れる。一日の始まりの光景だった。

発熱のために学校を休んでいた低学年の私に「卵を取って来て」とお仕事の依頼が。鳥小屋に入ると大暴れする「にわとり」が恐怖だった。こわごわ、いやいや入って行った。

そして両手に抱えた。

その中に殻が柔らかく、ブニュブニュしていて、ホカホカの卵が一個あった。ほとんど膜状で中が透けて見えた。恐る恐る、割らないように、慎重の上にも慎重を重ね運ぶ。

しかし、案の定落としてしまう。しばし呆然、固く踏みしめられた黒々とした地面の上で黄身がプルプルしている。動けなくなり、泣いてしまう。様子を見に来てくれた母に優しくなだめられホッとして家に戻った。

あの時の卵の温もり、柔らかさ、あの感触を今でも覚えている。

パックで卵を買う時代、隣の「にわとり」を見つめていた男子に、日常に溶け込んでいた新鮮な感情を蘇らせてもらった。

 

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私の一冊

西野内小代

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「天路の旅人」 沢木耕太郎 新潮社

この本の作者さんがNHKのクローズアップ現代に出演されていたのを偶然目にし、即ネット注文した。

この分厚い本を、さて完読できるのだろうか…と悩ましく思いながらページを開く。いやいや、とんでもない!ページを繰る手が止まりません。

第二次世界大戦末期、敵国である中国の奥深くまで、蒙古人になりすまして潜入した「西川一三」の8年に及ぶ旅の軌跡です。

スパイ物の映画のような華やかさは一切ない、一歩一歩文字通り自分の足でヒマラヤ超え数回、冷たい大河に浸かりながら渡り、ひたすら前に進む。チベット語・蒙古語・ウルドゥー語・ヒンドゥー語・中国語・英語を自由に操る、勤勉家でもある。

西川一三さんの記した「秘境西域8年の潜行」という書物があるらしいのだが、膨大なページ数らしい。興味はあるが、読破は困難だと思う。

西川一三さんという人物を知る事ができて、この本にとても感謝している。

 

 

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