古川 佳代子

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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「ポリぶくろ、1まいすてた」 ミランダ・ポール文 エリザベス・ズーノン絵  藤田千枝訳 さ・え・ら書房

7月1日から始まったレジ袋有料化。大量のプラスチックごみ削減に対する貢献度はささやかなものだとも聞きますが、意識改革のとっかかりとしては有効なのではないかな、と思います。

ポリぶくろ(プラスチックバッグ)は便利なふくろです。けれどもすてられたポリ袋を食べた動物が死んでしまったり、庭に埋めたら草が生えなくなったり、大量の蚊の発生の原因になったりと様々な問題を引き起こしています。できるだけ使用しないことはもちろんですが、すでにあるポリ袋はどうすればよいのか?

ゴミにするのではなく、リサイクルすることで、環境改善に貢献するだけでなく、女性の収入の道を切り開き、女性の地位の向上の一助となった活動がありました。

ガンビア共和国(西アフリカ)のンジャウ村から始まったポリ袋のリサイクル活動は、近隣の住民の環境問題への関心を喚起し、公共図書館開館にも繋がったそうです。 小さな取り組みが、大きな流れを生み出すことにつながることを示してくれる絵本です。

 

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「ケーキの切れない非行少年たち」 宮口幸治 新潮社

「境界知能」ということ言葉を知っていますか?

これはIQ(知能指数)70~84のことをさす言葉です。現在「IQ70未満」を知的障害とされていますが、1950年代の一時期「85未満」とされていた時期もあったそうです。けれどもIQ85未満の人の人口比率が16%と多くなるため「IQ70未満を知的障害とする」ということになりました。

現代の社会生活を営むには100前後のIQがないとしんどいそうです。IQ70~84に相当する人たちは「知的障害」ではないので支援される対象にはありませんが、実際の社会生活では様々な困難に直面します。

本書では、児童精神科医でもある著者が非行少年たちと出会う中での気づきを「境界知能」に焦点を当て、そこから導き出された考察と支援の方法が記されています。

 

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「クラバート」 オトフリート・プロイスラー 作, 中村浩三 訳 偕成社

ドイツのスラブ系少数民族ヴェンド人に伝わる〈クラバート伝説〉を下敷きにした本書は、メアリー・ポピンズや指輪物語、ハリー・ポッター等の英語圏のファンタジーとはずいぶん雰囲気の違う物語です。

主人公のクラバートをはじめ登場人物一人ひとりを個性豊かに描き、復活祭やクリスマスなどを物語に巧みに取り入れた緩急ある構成で最後までぐいぐいと読ませます。

そして軍国主義への小気味よい一撃などもさりげなくはさみ、より密度のある物語となっています。 そして、親方の権力からクラバートを解放するべく「ソロの娘」と親方との命を賭した緊迫の駆け引きの巧いこと!

代表作のホッツェンプロッツの底抜けの楽しさとは全く違う、重厚で神秘的な骨太な世界をお楽しみください。

 

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「風をつむぐ少年」 ポール・フライシュマン著, 片岡しのぶ訳 あすなろ書房

誰しも生きていく中で、加害者になることもあれば、被害者になることもあるでしょう。 傷つけられた被害者や家族、友人たちの加害者に対する怒りや嫌悪は当然のことです。けれども加害者もまた、自分の引き起こした罪に傷つき、思慮の足りなかったこと、迂闊だったことに打ちのめされることも多いのです。

16歳の少年ブレントは転校早々開かれたパーティで恥をさらし、酔った勢いで自殺を企てます。その結果、ブレントは軽傷で済んだものの18歳の少女の命を奪ってしまいます。「人を殺してしまった」贖罪のためには何をすればよいのか?そもそも許されることなのか?大切な娘の命を奪われた母親は思いもかけない償いの方法をブレントに提案します。

罪を償うことのむずかしさ、赦されたいという願いの先にある希望が切なく伝わってくる物語です。

 

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「殺人者の涙」 アン=ロール・ボンドゥ, 伏見操 訳 小峰書店

アンヘル・アレグリアは殺人者。逃亡生活にうんざりした彼は隠れ家を得るため、チリの最南端、太平洋の冷たい海にのこぎりの刃のように食い込む地の果てに住む夫婦を殺します。

一人残された息子のパオロは生きのびるため、殺人者と一緒に暮らすことになるのですが…。

なんとも強烈な出だしからはじまる、緊張感あふれる二人の生活。何も与えられず、何かを与えたことのない殺人者と愛されたことはなく愛されるとはどんなことかを知らない少年。空疎な二人が共同生活を送る中から生まれる「なにか」。

生きる意味、赦すということ、贖罪とは…。決して心温まる物語ではないし打ちのめされる展開に読み続けるのがつらいこともあるにもかかわらず、未来への希望が感じられる読みごたえのある小説です。

 

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「いしぶみ  広島二中一年生全滅の記録」 広島テレビ放送 編 ポプラ社

表紙を開くと見開きには石に刻まれた名前が…。これは、広島二中慰霊碑に刻まれた子どもたちの名前です。

昭和20年8月6日。その日、子どもたちは世界で最初の原子爆弾により自分の命が絶たれることなど露とも知らず、家族にいつものように挨拶をし、家を出たのでした。

広島に原子爆弾が落とされた時、20数万の方が命を奪われ、多くの人が原爆症で苦しみ、今も原爆病院には長い入院生活を送っている患者もいるのです。「20数万人」「多くの人」「患者」と文字にするとなにか一つの抽象的なもののようにも感じられますが、その単語の向こうには、言葉のなかには一人ひとりの個人がおり、それぞれには家族があり、生活があり、夢があり、「明日」があったはずなのです。

ひとくくりにすることで見えなくなりがちな一人ひとりが、どのような子どもであったのか戦時下ではあっても家族との語らいを楽しみ、友達を笑いあい、今日が明日に続くと信じていた子どもたち。誰一人として奪われてよい命はないのに、簡単に奪ってしまい奪うことが正義となる戦争。

戦後75年といわれる今日が「戦前」とならないよう読み継ぎ、手渡したい1冊です。

 

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「窓ぎわのトットちゃん」 黒柳徹子 講談社

今を去ること40年前の大ベストセラー。読んだことのある方は多いでしょうし、読んでなくても書名に覚えのある方もおありでしょう。

“これは、第二次世界大戦が終わる、ちょっと前まで、実際に東京にあった小学校と、そこに、ほんとうに通っていた女の子のことを書いたお話です” ではじまる本当にあった物語。 周りの空気を読むとか、同調するとか忖度なんか一切ない、好奇心旺盛で心のままに行動するトットちゃん。何をしても何を言ってもまるごと受け止めて「君は、本当は、いい子なんだよ!」と声をかけてくれる校長先生。

子どもたちに関わる大人がみんなこの校長先生のようなスタンスで子どもに関わっていければ、子どもにとってどんなに生きやすい社会となることか…。

 

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「プラスチック・フリー生活」 シャンタル・プラモンドン, ジェイ・シンハ著 服部雄一郎訳 NHK出版

海や山、あるいは清流で豊かな自然を愛でているときに足元や水面にあるプラスチックごみを目にして、一気に興醒めした経験はないですか?

プラスチック汚染の問題はわたしたちの身近にあり、健康にも深くかかわっています。けれども、プラスチック製品に囲まれた環境でのなかで、一気に減らすのはなかなか難しいこと。あまり神経質にならず、「できること」をさがして、ゲーム感覚で取り組んでみると意外に楽しく実践できるかも?

気負わずに始められる「プラスチック・フリー生活の実践ガイド」として、家庭に一冊常備するのもおすすめです。

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「火星にいった3人の宇宙飛行士」 U・エーコ作, E・カルミ絵 海都洋子訳 六耀社

地球の上の3つの国から、ロケットが打ち上げられました。アメリカ、ロシア、そして中国。飛行士たちはお互いに何を言っているのか分からず、お互いに変な奴だと思っていました。

けれども火星に到着し、そこで出会った怪物に比べたら、自分たちのちがいなど些細なこと。地球から来た三人はたちまち力をあわせ、火星人を倒すことにします。そのとき…。

哲学者で思想家、優れた文学者でもあるウンベルト・エーコの含蓄ある文章とエウジェニオ・カルミによる想像力を刺激する抽象画のコラボによる、風刺のきいた絵本です。

古川佳代子

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 「フラミンゴボーイ」 マイケル・モーパーゴ 著, 杉田七重 訳 小学館

児童文学やYA小説を「小学生の読む本」とか「中高校生向けの本」と受け止めているかたは多いように思います。でもそれはちょっと残念な誤解です。小学生から、あるいは中学生くらいから「読みこなせる本ですよ」ということで、決して子どもだけを対象とした作品ではありません。

マイケル・モーパーゴは優れた児童文学・YA小説の書き手の一人です。第二次世界大戦下を生きのびる人々をテーマにした作品の多いモーパーゴですが、厳しい状況であっても決して失わない人類への信頼と希望を描ききる筆力に、毎回圧倒されます。 本書では第二次世界大戦のフランスを舞台に、ロマの少女と他者との意思の疎通が困難な少年、そして少年がこよなく愛するフラミンゴを主軸に据え、戦時下において最も迫害を受ける弱者の視線から、戦争の理不尽さが語られています。

古川佳代子

 

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