2023年8月

土佐町歴史再発見

④ 鎧にみる郷士の誇り

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「あれ、何で立てっちゅうがやろう?」何度か展示室を往復するうち、ふと気がついた。

甲冑の展示は、通常「鎧櫃」(よろいびつ)と呼ばれる箱の上に胴を乗せる形で設置するので、当然座った格好になる。立たせた展示というのは、西洋甲冑などには例があるが、初めて見た。

 このままだと縅糸(おどしいと)に負担がかかりすぎ、最悪切れてしまう可能性があった。資料カードも作成しなければならないし、思い切って一度全部解体することを提案した。

以来、約3ヶ月間、1領ずつ解体し、部位ごとに写真を撮り、実測し、メモを取る。その繰り返しである。正直くじけそうになったこともあった。でも傍らには常に委員会の精鋭が3人も付いてくれている。この手厚い支援を受けては、途中で投げ出すことは許されない。

 3領目が終わったころ、昔お世話になった国立博物館の先生の言葉を思い出した。「土佐は五枚胴が多いんですよ」。確かにそのとおりで、資料館にある5領のうち4領は五枚胴だった。簡単に言うと5枚の鉄板を蝶番(ちょうつがい)で連結している胴のことで、畳んで箱の中に収納しやすく持ち運びにも便利である。

土佐の武士は機能性を重視したようだ。いやいや、機能性だけではない。「鉄地五枚胴具足(てつじごまいどうぐそく)」と付けた甲冑がある。特徴は、地味ながらとても頑丈であること。特に胴は甲冑師の腕がいいのだろう、肌、艶もいい。そして、とにかく重い。だが、戦さなどありはしない泰平の時代に、こんな重い胴が必要だったのだろうか。

 良く似た胴が昔の職場にも2領あった。矢野川家と片岡家の五枚胴だが2つとも重かった。土佐町の甲冑は5領とも西村家のもの。この3家に共通するのはいずれも土佐藩の下士(かし)、そしてその地域を代表する「郷士(ごうし)」の家柄ということだ。

 昔読んだ漫画に坂本龍馬の兄の権兵衛が、所属する組の演習に参加する場面があった。その武装は信じられないほど見窄らしく、上士からの嘲笑を買う。だが、実際の郷士の武装はそんなものではない。そもそも郷士は足軽ではない。郷士のことを極端に見下げた表現はいかがなものかと思う。

 確かに、非常事態に藩が足軽などの下士、軽格に貸与する「御貸具足」(おかしぐそく)というものがあった。その類いのものを郷士も所有していた可能性は否定できないが、西村家の甲冑は明らかにそれとは異なる。質実剛健、万が一の戦さでは決して遅れをとらない覚悟、それがこの重い五枚胴に込められている気がするのである。

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とさちょうものづくり

ろいろい解説書、完成!

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ついに完成!解説書!

土佐町の絵本「ろいろい」の解説書が完成しました!

この解説書は、絵本に描いた土佐町の様々な要素を解説したもの。

A2サイズの紙の両面に絵の詳しい説明を掲載してあり、絵本本体に折り込まれます。「タブロ」という新聞紙をイメージした紙で、温かい手触りです。

 

土佐町の絵本「ろいろい」は、今まで町の人たちから聞いたことや教えてもらったこと、町の伝統行事や歴史、言い伝えなどで場面が構成されていますが、絵本の文章には盛り込めなかった内容は実はとても多いのです。解説書はその詳細な部分を補って伝えるためのものです。

 

何度も修正と校正を繰り返し、やっと完成にたどり着きました。長い道のりでした。

解説書の完成は、絵本の完成。これでやっと、土佐町の絵本「ろいろい」の本当の完成です。これで皆さんにお披露目できます!

 

絵本に解説書を挟んで…

 

ついに絵本「ろいろい」、完成!

 

土佐町の子どもたちのもとへ

絵本はまず、土佐町のみつば保育園の子どもたちへ配られます。

子どもたちの存在は未来そのもの。絵本「ろいろい」をお家の人と一緒に読んで、土佐町の暮らしや人の姿をよりよく知るきっかけになったらうれしいです。そしてこの町の存在を大切に思ってもらえたらと願っています。

ただいま、絵本「ろいろい」の販売の準備もしています。

販売を開始するときは、またお知らせします!

 

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私の一冊

古川佳代子

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「風が吹くとき」 レイモンド・ブリッグズ作, さくまゆみこ訳 あすなろ書房

イギリスの田舎で穏やかな生活を送っている老夫婦。悠々自適に暮らしていたある日、町に出かけた夫は、戦争が起こるかもしれないと妻に話す。若いころ世界大戦を経験している妻は、話半分に聞き流す。

それよりも大事なのはお昼ごはんの献立だ。メインはフレンチフライなのかソーセージなのか?デザートはパイかプディグか?だって戦争なんて起こるはずはないし、万が一起こったとしても爆弾が2、3発落ちて、そのうちな~んだってことになるわよ、と…。

ところが突然ラジオから「3日のうちに戦争が勃発しそうだ」と政府発表が流れてくる。焦る夫と日常生活を守ろうとする妻。政府の言うことを盲目に信じる夫婦は、自分たちがどんどん死に向かっていることに気がつかない、いやそれとも気がつかないふりをしているだけなのか?

20数年前に出された絵本だけれど、まるで今の世界状況を予言しているようでドキドキしながら読み返しました。読むのがつらくなるかもしれないけれど、だからこそ、目をそらさずにたくさんの方に読んでほしい絵本です。

 

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読んでほしい

川へ!

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「今日も暑いな」という日は、タオルとゴーグル片手に、車で10分ほどのお気に入りの川へ行く。

その場所には飛び込める岩と浅瀬があって、ちいさな子どもも安心して遊ぶことができる。3メートルほどの高さから飛び込むと、小さな魚たちが驚いて、あちこちに泳ぎ散るのが見える。水はきらきら、気分は爽快。近所にこんなきれいな川があるなんて、なんて幸せなことだろう。

ただ、7月下旬ごろから、テジロというアブがブンブンと飛び回るのには閉口する。テジロはきれいな川にいて、手で追い払ってもしつこく顔や手足の周りを飛び回り、血を吸うのでとても厄介な存在だ。まだ数匹ほどなら手で叩いてやっつけるのだが、8月ともなれば大群が襲ってくる。そうなると、もうこの川へは行けない。

なんとも残念。テジロ大量発生後は下流の別の川へ行く。このテジロ、なんとかならないものか…。

 

 

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私の一冊

西野内小代

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「RAO’NEWSSTAND」 石川拓也 合同会社風

書店で物色していると、私が立ち寄る事の少ないコーナーから夫の手招き、指さす棚に発見!

石川拓也さんの写真集がそこいらを圧倒する雰囲気を醸し出し、黒の表紙がデンと座っていた。

抱えていた本を書棚に戻し、少し重量のある写真集を手にレジへ一直線。

写真の事には全く不案内であるが、自分なりの鑑賞が可能かなと期待して持ち帰る。

その後、高知新聞でも紹介されていたので、その記事を参考に、この写真集を傍らにおいて日々鑑賞している。

 

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メディアとお手紙

高知新聞 閑人調 5

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とさちょうものがたり編集部の鳥山が、2023年春より、高知新聞の「閑人調」というコラムに寄稿させていただくことになりました。
このコラムには数人の執筆者がおり、月曜日から土曜日まで毎日掲載。月初めにその月の執筆者の氏名が掲載され、コラム自体には執筆者のペンネームが文章の最後に記されます。

鳥山のペンネームは「風」。月に2回ほど掲載される予定です。

 

梅仕事

今年も梅の季節がやって来た。産直市で梅の姿を見つけ、1年ぶりに懐かしい 友人に会ったような気持ちになる。毎年、わが家では梅シロップを作る。このシロップを水や炭酸水で割ってごくごく飲む。これで夏バテ知らず、暑い夏に欠かせない飲み物だ。

まず梅をきれいに洗って水気を拭き取り、ヘタをようじで取り除いてガラス瓶に入れていく。コロンと弾む音が心地良い。瓶の底が梅で隠れたら次は氷砂糖を。この作業を交互に繰り返していくと黄緑色の梅と透明な氷砂糖の層が出来上がる。この色合いを眺めながら、今年の梅仕事を無事終えた達成感を味わうのもまた良い。

今年は小学校5年生の次女と一緒に作った。保育園児の頃から手伝っているので、もうすっかり一人前の仕事ぶりだ。次女の楽しみは氷砂糖。瓶に入れるタイミングで自らの口にもパクリ。 そういえば氷砂糖を買う時から既にウキウキしていた。

そんな次女を見て、私自身もそうだったことを思い出した。母が梅酒を漬ける時に口に入れてくれた氷砂糖、それが何よりの楽しみ だったことを。

長女と長男もしてきた梅仕事。子どもたちが大人になった時、この季節の恒例行事をふと思い出してくれたらうれしい。

2023年6月12日に高知新聞に掲載されたコラム「閑人調」です。

我が家の恒例行事である「梅仕事」、梅シロップ作りのことを書きました。

子どもたちと一緒に梅を洗い、梅のヘタを取って、氷砂糖と一緒に瓶へ。氷砂糖を口に入れながらの作業はとても楽しいです。

「梅、いるかよ?」と近所の人が声をかけてくれることもあり、そんな時はさらに梅シロップを仕込みます。いくつも並んだ瓶を見てはちょっとした達成感を味わえるものお楽しみです。

この記事を読んでくださった方が「うちも梅シロップ作ってるから、いつでも家に寄ってね。ごちそうします」とメッセージをくれました。

四季折々の野菜や果物が地元で手に入ること。それらを工夫して使い、周りの人が喜ぶものを作ること。それはこの地の人たちがずっと昔から大切にしてきたことです。それがどんなに豊かなことであるか、日々噛みしめています。

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私の一冊

山門由佳

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「火垂るの墓」 野坂昭如 徳間書店

はじまりの舞台は昭和二十年の神戸。何年にもわたって戦争を続け、苦境にたたされた日本でひっそりと紡がれた兄妹の物語。有名すぎるほどに有名なこの作品を私はこれまたうすぼんやりとしか知らなかった私は、息子が小学校の図書室から借りてきてやっと今回ちゃんと出逢いました。

戦争なんて、過去の話。どこか遠い国の話で、私には無関係。恥ずかしながら、そんな意識があったのだと思います。けれども、この度この物語を息子と娘に読み聞かせながら途中でぽろぽろ涙が溢れて、ついには読むのも詰まるくらいに苦しくなってしまいました。子供達が困惑するほどに…。(主人公の兄と妹が、わが息子と娘にビジュアルが似すぎていることも感情移入してしまう大きな要因でもある。)

最初から最後まで、どこをとっても悲しくてつらい。お兄ちゃんの清太が、必死に守ろうとした妹の節子。けれどもその願いも虚しく節子を失い、性も根も尽きた清太の死に様は悲しみをこえて戦争を引き起こした大人達に怒りすら覚えます。

実際、今この瞬間も戦争をしている国があるということ。今の自分にできることはなんなんだろうか。夏休み、息子と娘を原爆資料館に連れていくことからはじめようと思います。

 

 

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絵本に折り込む解説書

 

土佐町の絵本「ろいろい」の解説書を制作しています。

A2サイズの紙の両面に各ページの絵の詳しい説明が書かれていて、完成したら絵本に折り込まれます。

土佐町の絵本「ろいろい」は、今まで町の人たちから聞いたことや教えてもらったこと、町の伝統行事や歴史、言い伝えなどでできていますが、絵本の文章には書ききれなかった内容はとても多いのです。

 

 

お待たせしました、完成までもう一歩

この解説書はその詳細な部分を補って伝えるためのもの。

例えば、「虫送り」のページではその歴史や言い伝え、田の畦に供えるお供えものの話を。

「田井の街並み」のページでは、昔の田井の様子やかつてあったお店のこと。

描かれている町の風景やものごとの意味をさらに深く。絵本の印刷をしてくださったリーブル出版さんと何度もやりとりし、修正・校正を繰り返しています。

絵本と解説書を開いて並行して読むのもよし。どちらかだけでもよし。色々な楽しみ方をしていただけたら嬉しいです。

校正が終了したら、いよいよ印刷へ。

解説書の完成=絵本の完成までもうすぐです!

 

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