私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

鳥山百合子

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「宇宙兄弟 心のノート」 小山宙哉 講談社

私の愛する漫画、「宇宙兄弟」。現在39巻まで発売されていて、私は全巻持っている。その39冊に加え、この「心のノート」、さらに「心のノート2」もあり、合計41冊が私の本棚の一番いいところに並んでいる。

「宇宙兄弟」は南波六太と日々人という兄弟が、紆余曲折を経て、宇宙飛行士という幼い頃からの夢を叶える。宇宙という憧れの舞台に立つまで、そして、その舞台に立ってからも生じる多くの試練や葛藤。日々の喜びや仲間たちへの信頼…。六太と日々人だけではなく、あらゆる登場人物の心のひだが丁寧に描かれ、39巻全てにグッとくるようなシーンと言葉が散りばめられている。「うん、わかるわかる…」と涙ぐんでしまったことは数知れない。

さて、この「心のノート」。「宇宙兄弟」第1巻から37巻までに描かれている名場面・名言、“心のノートにメモしておきたくなる”言葉たちが収められている。

何が素晴らしいかというと、37巻分の名シーンが一冊にまとめられているので、本編全巻読み返さずとも感動の名場面にすぐに再会できるということだ。「あのセリフをもう一度読みたい!」という時、すぐに探せてとても便利であるし、探していたセリフの前後のページもつい読んでしまい、忘れていた名場面をもう一度味わえるという醍醐味がある。

この「心のノート」には、1巻から16巻までの名言100個が収められている(「心のノート2」は17巻から37巻までの名言100個)。100個全てを紹介したいくらいだが、それも大変なので、1つだけ紹介したい。

天文学者であり、六太と日々人の良き理解者であるシャロンが、どちらを選択したらよいかを迷う六太にかけた言葉だ。

『迷った時はね「どっちが正しいか」なんて考えちゃダメよ 日が暮れちゃうわ 「どっちが楽しいか」で決めなさい』。

人は迷った時、悩んだ時、余計な力が入って、つい難しく考え過ぎてしまう。本当は単純な物事を複雑にしてしまう。そんな時、ちょっと深呼吸して、シャロンのこの言葉を思い出す。

もちろん「どっちが楽しいか」だけで決められないこともある。でも、この言葉は幾度となく私の肩の力を抜き、自分の本当の気持ちに気づかせてくれた。

「心のノート」を開いてその名言だけを読むつもりだったはずが、その前後の話の詳しい確認をしたくなり、やはり本編を読み返してしまうことになる。「宇宙兄弟」は、やはり素晴らしい。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ふたつめのほんと」 パトリシア・マクラクラン作、夏目道子訳 福武書店

事実と真実って似ているけれどイコールではないよなあ、と思うことが時々あります。例えば事実のデータを例示して書かれた記事が真実とはいえないこともあるし、創造の話である神話や民話の中に普遍的な真実が語られていることがあったり…。この似て非なる事実と真実の狭間で戸惑いながら成長する少女の姿が素敵に描かれた物語がこの『ふたつめのほんと』です。

主人公のミナーの母親は小説家。机の前のボードには、様々な言葉を書いた紙を貼りつけています。その中の「事実と小説は 、それぞれに真実」という言葉がミナーは気になって仕方ありません。作りごとの話である小説ってうそのことでしょう?それなのにどうして真実なの?11歳のミナーには納得できません。

でも、目下の問題は習っているチェロにビブラートがかけられないこと。一緒に習っているルーカスはビオラに素敵なビブラートがかけられるのに、どうして私はかけられないの?? 音楽の神様、ウォルフガング様、どうか私の力をお貸しください!

目に見える真実だけでない、もう一つの真実“ふたつめのほんと”に気付き始めた少女の揺れが、モーツァルトを伴奏に軽快に描かれています。

 

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私の一冊

西野内小代

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城郭考古学の冒険」 千田嘉博 幻冬舎

とても楽しそうにお城の紹介をしてくれるキャラでお馴染みの千田先生の著書です。

学者としての幅広く豊富な知識と根拠に基づいて解説してあります。観光中心の間違ったお城再建に苦言を呈する場面も度々です。

天守閣の「閣」は後世付けられた名称であって、学術的に正しくは「天守」だそうです。様々な年代・種類の石垣・土塁・堀…などの深い見方も解説。

「馬だし」と呼ばれる軍事上とても重要な区域は家康でほぼ完成形になっている。やはり天下を獲ったのは綿密な作戦と準備にあったのだと納得です。

シンボルとして天守があるのが「お城」と思い込み、その華やかさのみを追い求め、軍事空間である事をすっかり忘れ、お城の上面しかみていなかった単なる城ファンの感想です。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「ぼくのぱん わたしのぱん」 神沢利子文, 林明子作 福音館書店

我が家の3人の子どもたちが何度も開いてきた「ぼくのぱん わたしのぱん」。読むたびに「パン作りたい〜」と子どもたちが何度声をあげたことか!

この本に出てくる3姉弟の真似をして、パン生地を机にたたきつけるはずが、勢い余ってパン生地は床に落下。でも実は、そういった思いがけないことが楽しい。

ボウルに入れて暖かい場所においた生地がちゃんと膨らむのか?さっき見に行ったのに、またすぐ見にいく。子どもたちのその後ろ姿がとても可愛かったことを、まるで昨日のことのように思い出します。

お腹を粉で真っ白にして、ドタバタドタバタ。作るのにあれだけ時間がかかったのに、食べるのはあっという間。自分たちで作ったパンは、何だか特別美味しくて子どもたちは大満足。その顔を見て私も大満足。

「また作ろうね」という約束をしながら、子どもたちはいつの間にかどんどん大きくなっていきました。

最近はもっぱらパン焼き器に頼りきりになってるので、また一緒に粉まみれになりたいなと思います。

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私の一冊

浪越美恵

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「沈まぬ太陽(五)会長室篇・下」 山崎豊子 新潮社

時の総理からのバックアップにより、安全の確立と組合統合という目的に向かって、国見会長と恩地は苦労を分かち合って行くのだが、航空会社の利権にかかわるありとあらゆる人間達の妨害により改革は進まない。

強力なバックアップを約束した総理でさえ、最終目的は航空会社の民営化に備え、再建による好材料を揃えて、然るべき利権を得ようとしていることに、国見は改革の無力を感じ、最後は司直の手を借りなければとまで追い詰められて辞表を書く。

しかし、最終的には会社の一人の職員が利権をあばいたノートを東京地検特捜部へ送って自殺した事により、司直の手が入る事になる。

そして恩地は、ご遺族係としての仕事を全う出来ず、会長室のメンバーとして重要な役割を果たせない立場にたたされ、再びアフリカへ追いやられたところで、物語は終わった。

 

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私の一冊

西野内小代

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「論語物語」 下村湖人 講談社

今回の大河ドラマ「渋沢栄一」に影響されて論語を読もうとしても、言い回しの難しさ、日本語なのに言葉の壁に阻まれてちっとも理解できない。「論語物語」は文章が平明という事で読み始めた。

孔子と弟子のやり取りやその場の情景が分かり易く展開していて、理解したかのような錯覚に陥るが、実は深い思想の理解には到達できない。

しかし、論語に一歩踏み込んだという自己満足は残った。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ケレー家の人々」 ケート・D・ウィギン作,村岡花子訳 角川文庫

何か失敗して気が滅入ってしまった時の特効薬は、昔懐かしい家庭小説を読むこと。日常生活の中から、何かしら美しいものを見つけ出しては子どもらを楽しませ、自分の失敗は笑い飛ばしてしまう主人公たち。そんな彼らにいつの間にか感化され、落ち込んだりささくれていた気持ちもいつしか落ち着いてくるのです。

よき父でありよき夫でもあったケレー氏を亡くし、貧しい田舎暮らしを始めるケレー一家。けれども一家はケレー母さんを中心にまとまり、貧しさをも楽しむたくましさとユーモアを持っていました。とにかく、このケレー母さんが惚れ惚れとする素敵な大人なのです。なかでも、自分の大学進学のためならば家族が犠牲を払うのは当然だと主張する長男に対する言葉は、最高にステキです!

 

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私の一冊

西野内小代

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「内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法」 スーザン・ケイン著, 古草秀子訳

元気よく泣き、手足をばたつかせる赤ちゃんグループを「高反応」。静かで落ち着いたまま時々手足を動かすも、さほど大きな動きはないグループを「低反応」。
経過を観察すると高反応グループの多くは思慮深く慎重な性格に成長している例が多かった。低反応グループはおおらかで自信家の性格に成長する例が多かった。
この事から、「高反応→内向的」「低反応→外交的」傾向とみられる。

社会にさらす個人と内なる個人のギャップは多くの人が持ち合わせていると例をあげて解説。
折り合いを付けて、社会と付き合う方法を勇気を持って実行する必要性。近頃もてはやされているオープンオフィスが、必ずしもいい結果を残すとは限らない。
実績を残している有能な方々の事例をあげて、個人の空間の大切を認める重要性を主張。

内向型人間が社会と関わっていくにあたっての対処法の一つとして、日常生活において「回復のための場所」をできるだけたくさん用意しておく事も重要。
内向型人間が自信を持って社会と対峙する方法が、いくつか紹介されています。
「私はそんなに頭がいいわけではない。問題により長く取り組むだけだ」
これは、極度の内向型だったらしいアインシュタインの言葉だそうです。

 

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私の一冊

西野内小代

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「スマホ脳」 アンデシュ・ハンセン著, 久山葉子訳 新潮社

私達の脳は、原始時代の狩猟と採集をして暮らしていた時代と1万年変化していないにもかかわらず、最新の生活様式に脳は最適化されている。

現代社会と人間の歴史の「ミスマッチ」が重要な鍵となる。グーグル効果、デジタル性健忘→脳が自分で覚えようとしない現象。ブルーライトがメラトニンの分泌にブレーキをかける為に眠りにつきにくくなる。現代病といえる睡眠障害もスマホ脳のなせる業。

若い女性に多い自信喪失は、SNSにおいて他人と比較する事により引き起こされる場合が往々にしてある。

そして何よりも、スマホ等と向き合う時間の膨大さは人生の損失にしか過ぎない。

開発者達が、いかに自分の子供を スマホ ・ iPadの類から遠ざけているかも力説されています。

 

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私の一冊

浪越美恵

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「沈まぬ太陽(四)会長室篇・上 」 山崎豊子 新潮社

御巣鷹山の事故後、新会長についた国見は、二度とこのような事故を起こしてはならないと言う強い信念のもと、航空会社の改革を始めるが、次々と発覚する不正と乱脈、新旧労働組合の埋められない深い対立等、難題が立ちはだかる。

しかし国見は、会長として航空会社の「絶対安全」と言う目標を持って、現在の難局を乗り切ろうと切々と職員達に協力を求める。

そして、アフリカから本社へ戻されてもまた、十年以上閑職につかされていた恩地元を、会社再建と言う大きな目標達成に力を貸してもらいたいと、会長室の部長に抜擢する。

改革が少しでも前に進む事を願って「会長室篇・上」を読み終えた。

 

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