私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

西村まゆみ

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「ライオンのおやつ」 小川糸 ポプラ社

「ライオンの家」というホスピスが 瀬戸内の島にあり、主人公の雫は30過ぎで痰のステージⅣと告げられて、一人で終わりを迎える決心をして、遠路はるばる海を渡り「ライオンの家」へ来た。

雫は「ライオンの家」が 大層気に入った。空気がおいしい、海が目の前に広がり元気になる気がした。そこでゲストと呼ばれる同じ病気の人達や、シスターやマドンナたちに囲まれ楽しんで暮らしてゆ く。

週に一度 日曜日の午後3時からおやつの時間がある。おやつの時間がくることで一週間経った事が判る。おやつの時間が生きる希望であり節目になっていた。

ゲストの 1人1人が、もう1度食べたい思い出のおやつをリクエストする事ができる。そして毎回くじ引きで選ばれる。最後まで選ばれない人もいる。それが人生なのかもしれない。おやつを前にすると誰もが皆、子供に戻る。おやつの時間は 皆子供の顔になって いるのだろう。

雫は不思議なことに死が近づけば近づく程両親の存在を強く感じるようになった。私が今、ここにいるのはすべて両親のお陰だったと。でも幼い雫を残して不慮の事故で亡くなって、母の弟に育てられた。

その後義父が結婚したい人が出来た時、雫はひとりで生きる事を選び家を出た。その義父と暮らしていた時に、初めて作ったのが「ミルクレープ」それをリクエストしていた。モルヒネで痛みを柔げるようになり、おやつの時間が来た。今のおやつは雫がリクエストした「ミルクレープ」だった。会いたくて会えなかった義父が来た。妹も連れて。雫さん会えて良かったね。

ホスピスに入る事で最後まで笑って暮らせて、 周りの人達の心づかいで悔いのない最期を迎える事が出来て、泣きながらもほのぼのとした時間を過ごせた物語りでした。

 

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私の一冊

西野内小代

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「名著に学ぶ60歳からの正解」 齋藤孝 宝島社

「ぞうさん」の歌詞にそんな解釈があったとは、全く気がつかなかった。

最近、「??歳からの~」と銘打った本が気になる。迷える年配者の救世主となり得るか!?

お手軽に名著を解釈でき、尚且つ人生の指針を学べるかもと、「名著に学ぶ~」という言葉の誘惑に乗ってしまった。が、やはり本編を理解していないと、頭に入ってこない。お手軽と高を括っていたが、なかなかはかどらなかった。

信念・確信を持ち、臆病な自尊心を脱ぎ捨て、孤立しないように心掛けることが必要、と説いている。

「プライドは安いものやで、捨てなはれ」80代の翁の言葉を思い出した。文字で感じるよりも強烈であった。

しかし、「ぞうさん」の歌詞にそんな解釈があったとは!私は思ってもみなかった。気になる方はご一読を。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「ヘルシンキ生活の練習」 朴沙羅 筑摩書房

図書館のカウンターに座っていると時々「面白い本はないですか」とか「おすすめの本はありますか」と聞かれることがあります。簡単なようで難しいこの問いですが、気がつけばわたしも本好きの友だちにたびたび投げかけています^^。

この本を紹介してくれたのは二人の友人です。あの二人が紹介してくれるなら間違いない、と手に取ったのが運の尽き。しなければいけないことを投げ出し、寝なければ仕事に差し支えるとわかりつつ…。

社会学者で日本国籍を持つ在日コリアンの著者の朴さん。幼いころからずっと「私は何者なのか」と悩んできたけれど、大学で社会学を学び「私は何者なのか」と悩まなければならない状況が問題なのだ、と気がつきます。では、どうすれば状況を帰れるかと思っているタイミングで、フィンランドの首都、ヘルシンキでの仕事を得て、二人の子どもを連れて移住します。

日本とフィンランドでは社会の成り立ちはずいぶん違いますから、当然、社会制度や思想も違います。ヘルシンキで子どもたちと共に暮らしながら「生活の練習」を重ねる朴さんの率直な思索が綴られています。

 

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私の一冊

西村まゆみ

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「あらしのよるに」 きむらゆういち作あべ 弘士絵 講談社

もう20年ほど前になるでしょうか。友人と書店で甥の誕生日プレゼントを買いに行った。しばらく絵本や図鑑を探していた。「あらしのよるに」を手に取り、立ったまま読むとヤギとオオカミの物語りで、すごく可愛くて切なくて引き込まれた。友人も「この本いい ね、 これにしよう」と。

隣りに「あるはれたひに 」と「くものきれまに」と並んでいたので、3冊買ってプレゼントした。甥が読み終ると借りてゆっくり読んだ。「いやー良かった」。

ヤギとオオカミが、真っ暗なあらしの夜に雨やどりした洞窟の中で知り合って気が合っ て、天気の良い日に会う約束をした。お互い引かれあい友達になるが、所詮ヤギとオオカミ。それぞれの仲間達に2匹が会っているのがバレて、仲間をとるか友達をとるか迫られ、2匹は裏切る決心をして約束の場所に会いに行き、どしゃ降りの雨の中、一緒に逃げようと決心する。

「ここまで来たら行くところまで行ってみますか」とヤギのメイ。「おいらそのかくごはもうできてやすよ」とオオカミのガブ。2匹は、大雨で増水した激流へとび込む。何とか生きていた2匹は追っ手に見つからない様に故郷を出る。

「私がガブと出合ってしあわせだと思ってるんです。命をかけてもいいと思える友達に会えて」とメイ。「そんな風に思ってくれる友達がいるなんて、オイら本当に幸せでやんす」とガブ。

次の年に「きりのなかで」「どしゃぶりのひに」「ふぶきのあした」を 買っ てコンプリートした。しばらくして「まんげつのよるに」を見つけた。シリーズの完結編は「ふぶきのあした」だと思って悲しい 物語りだと思っていたが、完全版と書かれた自分の為に買った「あらしのよるに」はハッピーエンドだった。今回推しの本を紹介する事になった時、一番にこの本が浮かんだ。

素敵なヤギとオオカミの物語り。

 

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私の一冊

西野内小代

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「赤と青のエスキース」 青山美智子  PHP研究所

題名の謎はエピローグで解明、エスキースとは「下絵」のことらしい。

一枚の絵をベースに、5つの短編のような構成。第4章辺りで「エッ」と気づく。エピローグで糸がほぐされる。

それぞれの章には登場人物に対する深い洞察が含まれており、心模様が描かれている。

20歳前後の恋愛事情を扱った内容の予感がして、楽しく読めるかどうか不安だったけれども、予感は見事に裏切られた。

仕掛け満載の読み応えのある構成だった。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「いちごばたけのちいさなおばあさん」 わたりむつこ作, 中谷千代子絵 福音館書店

土佐町のいちご屋さん「やまびこ農園」さんにいちごが並び始めると、いつも「いちごばたけのちいさなおばあさん」のことを思い出します。

いちご畑の土の中に住んでいるおばあさんの仕事は、いちごの実に赤い色をつけること。土の中のみどりの石を掘り出し粉にして、お日さまの光をたっぷり吸いこんだ水に注ぎ込むと赤い色が出来上がる。おばあさんはその赤い水をせっせと塗って、赤いいちごを作るのです。

これは母に何度も読んでもらったお話で、幼い頃、私はこういった世界をみじんも疑っていませんでした。いつからか、いちご畑におばあさんはいないと知りますが、そんなことはどうでもよく、いちごばたけのおばあさんはやっぱりいるのだと、春先のいちごを見るたび思います。

やまびこ農園さんのいちごは、びっくりする程甘くてジューシー。毎年ジャム用のいちごを分けてもらってジャムを作ったり、砂糖をまぶして冷凍し、牛乳と一緒にミキサーにかけていちごシェイクにするのが楽しみです。

いちごばたけのちいさなおばあさん、今年も美味しいいちごをいたただきます。ありがとう。

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私の一冊

鳥山百合子

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「運動脳」 アンデシュ・ハンセン サンマーク出版

情けないことに、私は運動しようとしても続いた試しがない。毎日ランニングをしている友人が「走ることは歯磨きと一緒。走らないと気持ち悪い」と話すのを聞いて心底かっこいいと感じ、そんなふうに言ってみたいと思い続けて今に至る。

そんな私でも、たま〜に気が向いた時に走ったり、ほんの少しだけヨガをやるだけでも、モヤがかかっていた頭の中がクリアになり、前向きに何でもできそうな気持ちになることは知っている。

運動するとなぜ心地よい気分になるのか?その秘密をこの本は教えてくれた。

それは「私たちの祖先が、狩猟や住む場所を探すときに走っていたから」だという。

人間の脳は原始時代からほぼ変化していないのだそうだ。激変したのは生活習慣で、人間は物に囲まれて快適に暮らし、食料もボタン一つで自宅まで運んできてくれるようになり、身体を動かさなくなった。そうなると、狩猟仕様にできている脳にとっては具合が悪い。脳が求める運動をしないと調子が悪くなる。気持ちが沈み、意欲減退、記憶力低下…。大なり小なり日々のストレスに気持ちが滅入る。まさに今の私。すごくよく分かる。

でも運動することで、使われていなかった神経が繋がり、血が巡る。感情を制御している神経伝達物質であるセロトニン、ノルアドレナリン、ドーパミン、3つの脳内物質たちを増やすことができるそうだ。

・セロトニン…悩みや不安を和らげる
・ノルアドレナリン…やる気や集中力を促す
・ドーパミン…意欲や活力を促す

この3つが増えることで「あなたの気分が変わる」という。

狩猟民族のご先祖さまの姿と非常にわかりやすい科学的な説明が、私の背中を押してくれた。

この前の日曜日に1時間ほど歩いた。単純かもしれないがとても気持ちがよくて、清々しい気持ちになった。こんな気持ちは久しぶりだった。

週に3回くらいでも効果があるらしい。ランニングやウォーキング、サイクリングもいいそうだ。まずはウォーキングからやってみよう。脳内に3つの物質を増やし、この鬱々とした気持ちを追い払ってしまいたい。

 

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私の一冊

石川拓也

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「ヤノマミ」 国分拓 新潮文庫

同タイトルのドキュメンタリー作品があるので、そちらを観た人が多いかもしれません。「ヤノマミ」とはブラジルとベネズエラの国境付近に住むヤノマミ族のこと。

彼らの中にNHKのカメラが入り、150日間の同居を通して、ヤノマミの生き方を記録していく。

そうやって編まれた「NHKスペシャル ヤノマミ」は、数多くのドキュメンタリー映像を観てきたように思う僕にとっても、衝撃度という意味ではダントツの一位で、それは観てから10年以上経った現在でも変わりません。そのぐらい、自分の死生観や価値観が根底から揺さぶられるような作品だったのです。

ヤノマミの世界では、人間は精霊として生まれ、母に抱かれることで人間になると信じられています。

母となる女性は自らが産んだ赤ん坊を、自身の子として受け入れ育てるか、もしくは精霊の元へ返すかという選択をするといいます。

精霊の元へ返すというのは即ち、産んだ赤ん坊をその場で殺めて、白蟻に食べさせること。

実際に取材班はヤノマミのひとりの女性の出産に同行し、出産を終えた彼女が産まれたばかりの赤ん坊を「子として育てるか」「精霊の元へ返すか」という決断をする過程を撮影しています。

そしてこの番組の中で、その女性は「精霊の元へ返す」という選択をしたのです。

『母としての「無条件の愛」は、人間として生物として非常に根源的な部分に根ざしていて、それは例外はあれどヒトにとって本能的に備わったものである』という前提を漠然と持っていた僕は、このエピソードを観てひっくり返ったのです。

母の「無条件の愛」ですら、場所や時代や文化が違えば当たり前のものではないのだ。人間を根本から考え直す機会を与えてくれる作品に出会うことはそれほど多くはありませんが、だからこそ「ヤノマミ」は僕の中で忘れられない作品になっています。

*調べたところ、「ヤノマミ」はNHKオンデマンドなどで(有料ですが)現在でも視聴できるようです。

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「はなをくんくん」 ルース・クラウス文 ,マーク・シーモント絵, きじまはじめ訳 福音館書店

光が春めいていることに気づく今日この頃。

日中は暖かくてウキウキし、けれど翌日はまさかの雪!こうやって冬と春の間を行ったり来たりしながら、いつの間にかすっかり春を迎えているのでしょう。

1967年にアメリカで出版された絵本「はなをくんくん」。冬眠中の動物や虫たちが目を覚まし、はなをくんくんさせながら何かに向かってかけていく。はなをくんくん、はなをくんくん。雪の中、たどりついた場所には花がひとつ咲いている。

動物も森もモノクロなのに、みんなが見つけた花は鮮やかな黄色。笑って踊って「うわい!」と叫ぶ。春はもうすぐ!その喜びが伝わってきます。

この本の原題は「The Happy Day」。春が待ち遠しい今この時期に、読みたい絵本です。

 

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私の一冊

山門由佳

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「POPEYE (ポパイ)」  マガジンハウス

雑誌「POPEYE」は創刊からもうすぐ50年というご長寿雑誌なので、ご存知のかたもたくさんいらっしゃると思います。

ヤングで、シティ在住の、男性。をおそらくターゲットとされていると思われるのですが、アラフォーの、田舎在住の、子持ち女性。という一番正反対であろうわたしの心を掴んで離しません。

特に好きなテーマは【ガールフレンド特集】です。 いろんなピチピチしたおしゃれなカップルたちのデートの様子やいかに女の子を喜ばせるには?という特集をなぜか最も好みます。わたしは男性なのでしょうか? いや、きっと男性目線なのかもしれません。

「POPEYE」の雑誌からはちきれ出るほどに満ち溢れている、ヤングなパワーとエネルギー、いつも頂戴しております∞拝

 

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