私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

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 「フラミンゴボーイ」 マイケル・モーパーゴ 著, 杉田七重 訳 小学館

児童文学やYA小説を「小学生の読む本」とか「中高校生向けの本」と受け止めているかたは多いように思います。でもそれはちょっと残念な誤解です。小学生から、あるいは中学生くらいから「読みこなせる本ですよ」ということで、決して子どもだけを対象とした作品ではありません。

マイケル・モーパーゴは優れた児童文学・YA小説の書き手の一人です。第二次世界大戦下を生きのびる人々をテーマにした作品の多いモーパーゴですが、厳しい状況であっても決して失わない人類への信頼と希望を描ききる筆力に、毎回圧倒されます。 本書では第二次世界大戦のフランスを舞台に、ロマの少女と他者との意思の疎通が困難な少年、そして少年がこよなく愛するフラミンゴを主軸に据え、戦時下において最も迫害を受ける弱者の視線から、戦争の理不尽さが語られています。

古川佳代子

 

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私の一冊

川村房子

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「足みじかおじさん」 やなせたかし 新日本出版社

「足ながおじさん」じゃなくて「足みじかおじさん」て何?、と作者をみると、アンパンマンでおなじみのやなせたかしさん。

足みじかおじさんは無名。いつも逆行の中にいて年齢も正体も不明。黒いボーラハットを目深にかぶり、黒いアタッシュケースを片手に影のように現れて、困った人の悩みを聞いて、ごく初歩的な超能力で解決する。そしていつのまにかいなくなっている。

うすいうすい本で35編のショート物語。とても単純で短いメルヘンの世界。

私の専属でいてほしいなあ。自分も助けてもらいながらみんなに貸してやるのに。

川村房子

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私の一冊

鳥山百合子

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「三つ子のこぶた」 中川李枝子 のら書店

まきお、はなこ、ぶんたという名前の三つ子のこぶたの毎日はとてもにぎやか。朝起きてごはんを食べて、遊んで、お昼ごはんを食べる。昼寝して、おやつを食べてまた遊ぶ。夜ごはんを食べて、お風呂に入って、寝る。その合間に喧嘩あり、涙あり、親は休む暇がない。食べたそばから「おかあちゃん、おやつまだ?」。

そう言われたお母ちゃんの気持ちが手に取るようにわかります。

私の息子も同じでした。まだ2〜3歳の頃、さっきおにぎりを食べたばかりなのに「おなかすいた…」。おやつに持ってきた蒸かし芋やらお菓子の存在を知っているからです。「あともう少ししたらね」と言うと「わかった!」と遊びに行く。律儀にも5分後くらいに戻ってきて「“もうちょっと”たったよー」と呼びに来る。お腹をぽっこりさせた幼い子がこちらを見ている姿がどこかいじらしくて「じゃあ一つだけね」と言ってあげる。本当に嬉しそうにガツガツ食べる。また遊んで、そして「おなかすいた…」。日々その繰り返しでした。

繰り返される毎日には忍耐が必要とされ、多くの葛藤がありました。でもその合間には、子どもにも大人にも発見や驚き、楽しみや悲しみ、そして、かけがえのない喜びも確かにあったのです。その時はわからなかったことが今はわかります。どんな時も一緒に成長してきたんだなと思います。私は子どもたちに育ててもらってきたんだな、と。

この本は3人の子どもたちが幼い頃、それぞれに読みました。「おやつまだ?」のところで笑うのも3人一緒でした。身に覚えがあるのでしょう。

子どもたちが小さかった頃のことを懐かしく思い出せる一冊です。

鳥山百合子

 

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私の一冊

古川佳代子

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「和菓子のほん」中山圭子 文, 阿部真由美 絵 福音館書店

その昔、マリー・アントワネットは飢えた人々に向かって「パンがないのなら、お菓子を食べればよいのに」といったとか。
そんな不遜なことを言うつもりはさらさらないけれど、ごはんがなくてもお菓子があればそれでよい、と思うくらいにはお菓子が大好きです。カスタードクリームたっぷりのシュークリーム、栗の風味がうれしいモンブラン。食べ応えのあるケーキもよいのですが、和菓子にはどこか別格の佇まいがあります。ほんの二口、三口で食べ終えてしまえる小ぶりなお菓子なのに、その繊細な形や色遣いとそれを引き立てる雅な名前。

日本ならではの和菓子の色や形、名前の美しさなどをあまさず伝えてくれるのがこの絵本です。四季折々の美味しそうな和菓子とあわせて日本語の響きもお楽しみください。

古川佳代子

 

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私の一冊

川村房子

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「主夫のトモロー」 朱川湊人 NHK出版

キャリアを積んで一流インテリデザイナーを目指す妻をささえ、作家を志しながらも、家事と育児をこなすトモロー。社会の風は、まだまだ主夫に対して厳しい。

妻の美知子もキャリアは捨てがたいが、かわいい娘知里のことを思うと後ろ髪をひかれるが、理解ある夫に助けられ社会に戻っていく。

トモローは知里と一緒に、ママ友やパパ友いろいろな出会いの中で壁にぶちあたりながら奮闘し、「家族のかたち」をつくりあげていく。

文中にある「いくら夫婦だろうが、親だろうが話し合わなければ、分かりあうことなんかできっこないのだ。何もいわなくても分かってくれる…なんて都合のいい幻想で、そんなに察しがいい人ばかりなら、さぞや世界は平和だろう」。

ほんとにその通り。

いやー、私も昔は落ち着いて言葉にすることができず、怒って、泣いて、すねたなあ。いっぱい反省してます。

ユーモアがあって、愛があってやさしい家族小説です。

川村房子

 

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私の一冊

鳥山百合子

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「宇宙兄弟 1巻」 小山宙哉 講談社

私の愛読書『宇宙兄弟』。

子どもの頃からの夢「宇宙飛行士」を先に叶えた弟・南波日々人と、諦めかけた夢を思い出し「宇宙飛行士」になるべく奮闘する兄・南波六太の物語です。上司に頭突きして職場をクビになった六太は、母親が応募したJAXAの書類審査を通り、次の一次審査へ。でも失敗した姿を弟に見られたくない、「俺程度の人間はふるい落とされるってわかってるから」と次へ進むことを自ら諦めようとします。ここで背中を押してくれるのが天文学者のシャロン。日々人と六太は幼い頃からシャロンと星を見つめ、共に楽器を演奏し、多くの良い時間を過ごしてきました。

久しぶりに一緒に演奏しようとシャロンに誘われて躊躇する六太。

「上手くなくてもいいし、間違ってもいいのよムッタ。まずは音を出して。音を出さなきゃ音楽は始まらないのよ」。

幼き日の六太は、シャロンの数ある楽器の中から「一番音が出にくいから」と“金ピカのトランペット”を敢えて選んで吹いていたのです。

「今のあなたにとって、一番金ピカなことは何?」

 シャロンのその言葉で「忘れたふりを続けていたせいか、本当に自分の大事な気持ちを忘れていた」ことに気付いた六太は、一次審査へと臨みます。

シャロンは、六太だけではなく私の背中も押してくれました。いつのまにかうつむいていた自分、そしてそんな自分の肩をポンポンと叩いてもらっているような気がするのです。言葉が誰かを励まし、誰かの日々の瞬間に希望を与える。言葉と物語の持つ力にあらためて気付かされます。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「俳句歳時記  夏」 角川書店編 角川ソフィア文庫

数年前、大先輩から句会に誘われました。全く素養がなく迷惑をかけるだけなのでと固辞したのですが断り切れず、仲間に入れていただきました。句集を読んだり句会で他の方の作品を拝聴するのはとても楽しいのですが、句作のほうは冷汗三斗。楽しいはずの句会が苦界になることもしばしばでした。

そんな中、ベテランの方が紹介くださったのが角川書店の俳句歳時記全4巻。藁にもすがる思いで買い求め、折あるごとに広げては「どうすればこんな句が読めるのだろう」と羨ましく思いながら、17文字の世界を遊びました。

市内を離れ句会への参加は難しくなってしまいましたが、せっかく素敵な地に住まうことになったのですから、ぼちぼちと勉強だけは続けていきたいと思っています。

古川佳代子

 

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私の一冊

川村房子

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「思わず考えちゃう」 ヨシタケシンイチ 新潮社

今日は6月4日。高知県はコロナの影響も落ち着いて、いつもの生活に戻りつつあるけれど、次男家族の住む宝塚では、分散登校がやっとはじまったところで、集団登校もなし。1年生になったばかりの孫は学校まで送っていかなくてはならない。分散登校も週2日で3時間授業。仕事が休めない息子夫婦の育児の大半をカバーしてくれていた、嫁さんの父親が庭の剪定をしていて腰を痛めダウン。母親は介護に…。

1週間の滞在予定がのびて、嫁さんの本を物色。

絵本作家でイラストレーター。この本は、中年男性の言い訳とヘリクツと負け惜しみの数々だといってます。イラストいりでとても読みやすい。あるあると思ったり、そう考えればいいんだと思ったり、気軽に読みました。

「幸せとはするべきことがはっきりすること」「もう明日やるよ。すごくやるよ」と3回となえて寝る。何より気に入ったのが「世の中の悪口をいいながら、そこそこ幸せにくらしましたとさ」。

土佐町三面記事などもおり混ぜて…。

いいよねえーあこがれます。

川村房子

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私の一冊

古川佳代子

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「天使のにもつ」 いとうみく 童心社

中学生の職場体験を受け入れたことのある方もいらっしゃると思います。やる気が空回りする子もいれば、そんじょそこらの大人よりも役に立つ子もいて大助かりの時もあります。しかし、どんな場合も一番試されるのは受け入れる大人だということに変わりはありません。

主人公の斗羽風汰は中学2年生。5日間の職場体験先を「楽そう」とエンジェル保育園を体験施設に選びます。事前面接では思惑通りの職場だと思ったのですが、保育園児と向き合う仕事はそんな甘いものではありません。言葉遣いや仕事ぶりを保育士どころか園児たちにもダメだしされる風汰。それでも少しずつ風汰は命を預かる保育師の責任や、やりがいなどに気が付いていきます。

たった5日間のことですから風汰が大きく変わったり、目覚ましく成長するわけではありません。けれども小さな気づきはあり、それが今後の風汰の成長の大きな糧になるのではないかと感じられます。風汰から小さな変化を引き出したのは、受け入れ先の保育園の園長先生や保育士のたちのさりげない対応の数々です。 こういう大人に出会える子どもは幸せだなあと思いつつ、わが身を振りかえって反省したことでした…。

古川佳代子

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私の一冊

鳥山百合子

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「よるのびょういん」 谷川俊太郎 作, 長野重一 写真 福音館書店

「あさから おなかが いたいといっていた ゆたか、よるになって たかいねつがでた。おとうさんは やきんで つとめさきの しんぶんしゃにいっている。おかあさんは 119ばんで きゅうきゅうしゃを よんだ。」

お母さんは慌てたように電話をかけ、その傍らで「ゆたか」がおでこにタオルを当てて寝ている。次はどうなるのか、臨場感溢れる言葉と写真が、次へ、次へとページを進めさせます。

ゆたかの手術が無事終わるのを、まだかまだかと待つお母さんの祈りが痛いほど伝わってきます。

「よるの びょういんは しずかだ。けれど そこには ねむらずに はたらくひとたちがいる。びょうしつを みまわる かんごふさん、ちかのぼいらーしつで よどおし おきている ぼいらーまん。おもいびょうきの ひとたちを よるも ひるも やすまずに みまもる しゅうちゅうちりょうしつ。」

私の子どもも入院したことがあります。付き添いながら不安で眠れずにいた時、見回りに来た看護師さんが「どうですか?」と病室に入ってくる。子どもの様子を見て、点滴を確認して、熱を計る。「うん、大丈夫ですね」。その一言にどんなに救われたか。

夜中に手術を終えて、朝を迎えたゆたかの言葉は「ねえ、まんがかってきて」。

お母さんの安堵感はどれほどだったでしょう。

鳥山百合子

 

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