私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

古川佳代子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「プラスチック・フリー生活」 シャンタル・プラモンドン, ジェイ・シンハ著 服部雄一郎訳 NHK出版

海や山、あるいは清流で豊かな自然を愛でているときに足元や水面にあるプラスチックごみを目にして、一気に興醒めした経験はないですか?

プラスチック汚染の問題はわたしたちの身近にあり、健康にも深くかかわっています。けれども、プラスチック製品に囲まれた環境でのなかで、一気に減らすのはなかなか難しいこと。あまり神経質にならず、「できること」をさがして、ゲーム感覚で取り組んでみると意外に楽しく実践できるかも?

気負わずに始められる「プラスチック・フリー生活の実践ガイド」として、家庭に一冊常備するのもおすすめです。

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

田岡三代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「気がつけば、終着駅」 佐藤愛子 中央公論新社

ポンポンと小気味よい言葉が溢れ出る文章が好きで、佐藤愛子の本を読み続けている。エッセイの中に出てくる、遠藤周作との掛け合いが又、面白い。

90歳では、「九十歳、何がめでたい」がベストセラーに。

この「気がつけば、終着駅」は、50年前から今まで、「婦人公論」に執筆したものを集めたものだそう。

現在96歳。初エッセイから、55年。勇気を頂く一冊です。

田岡三代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「4TEEN」 石田衣良 新潮社

東京月島。ジュン、ダイ、ナオトと僕テツロウの4人。思春期真っ只中の14歳。

この小説は8つの章にわかれている。

第1章は「びっくりプレゼント」。ナオトは早老症で入院。母親は今度の入院は長引きそうだという。僕たちは、図書館に行って詳しく調べた。へこんでいてもはじまらない。簡単にナオトをつれていかせはしない。3人は特別な誕生会を病室でやろうと作戦会議。

性についても多感な年頃。大人でも考えつかないような「びっくりプレゼント」を悪戦苦闘しながら用意する。

その他の章もこころ熱くなりゆさぶられる。

中学生の話しだけれど感動しクスリと笑わせてくれる。是非読んで欲しいのに、上手く伝えられないのがもどかしい。

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

鳥山百合子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「繕う暮らし」 ミスミノリコ 主婦と生活社

靴下やズボンの穴、どこかで引っ掛けてしまって裂けたシャツやエプロン。いつか縫おうと取っておいても次から次へ溜まっていくばかり…。「そういったものをチクチク縫うことで、ちょっと楽しいものにしませんか?」と伝えてくれているこの本を開くと、時々やる気が出てきます。針と糸を手にする時間はなかなかいいものです。当たり前ですが、縫ったら縫ったぶんだけ、縫い目ができていくのがうれしい。

まだ息子が保育園か小学校の低学年だった頃、「一体どうしたらこんなに穴が開くのか?!」と首をかしげるほど、何度もズボンの膝やおしりに穴を開けて帰ってきました。「縫わないといけないズボン」が次々重なっていくのを見て見ないふりをしながら時間を過ごすのは、結構モヤモヤするものです。

ある日、やっと重い腰を上げてチクチク縫い出すと、息子が本当に嬉しそうに「母さん、縫ってくれるんだ!」とせっせとお茶を運んできてくれたことを思い出します。

布を当て色々な色の糸で縫ったズボンを息子はたいそう気に入って、洗濯して乾いたところからすぐに履いていました。

そのズボンはもうとっくに小さくなってしまったけれど、大事に取ってあります。私にとって、そして、多分息子にとっても、特別なズボンとなりました。

鳥山百合子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

古川佳代子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「火星にいった3人の宇宙飛行士」 U・エーコ作, E・カルミ絵 海都洋子訳 六耀社

地球の上の3つの国から、ロケットが打ち上げられました。アメリカ、ロシア、そして中国。飛行士たちはお互いに何を言っているのか分からず、お互いに変な奴だと思っていました。

けれども火星に到着し、そこで出会った怪物に比べたら、自分たちのちがいなど些細なこと。地球から来た三人はたちまち力をあわせ、火星人を倒すことにします。そのとき…。

哲学者で思想家、優れた文学者でもあるウンベルト・エーコの含蓄ある文章とエウジェニオ・カルミによる想像力を刺激する抽象画のコラボによる、風刺のきいた絵本です。

古川佳代子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

田岡三代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「ターシャの言葉 思うとおりに歩めばいいのよ」 ターシャ・テューダー KADOKAWA

アメリカの絵本画家・作家のターシャ・テューダー。

子どもが自立したのち、アメリカ、バーモント州の山奥に18世紀風の農家を建てて、植物と動物とのナチュラルライフを送り、自然体で生活を楽しんだターシャの生き方。

「いいなぁ~!」と、思ってもターシャのようにはできない。

けれど、私の心に影響を受けた一冊です。

田岡三代

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「スターダストパレード」 小路幸也 講談社

テレビでも放映された東京バンドワゴンの作者。図書館にあれば必ず読みます。これも図書館の一冊。

元暴走族のヘッド福山マモル。ハンサムで頭もよく優しさもあるが、家庭環境に問題があり、生きることをすてていた。それでも仲間には暴走以外のことは禁じていた。

そんな彼を無実の罪で逮捕した刑事の鷹原。刑務所に入れてくれた事によって、今までの生活から離れ自分を見つめなおすことができた。

出所の日、鷹山が迎えにきた。車の中には、母を不審死で亡くした5歳の女の子ニノン。母親は政治家の愛人だった。ニノンが何者かに狙われているため、鷹原のもと妻美里の所へ連れて行き、二人を守るよう依頼。恩義のあるマモルに断るという選択はない。

鷹原と美里とマモルとの過去。逃亡中、きっちりと距離をおいてついてくる一台の車。

母親の死の真相は?マモルのこれからは?鷹原との関係は?

テレビドラマのようにほっこりとさせてくれる小説です。

ある人との出会いで人は成長する。そういう経験のもてる人は幸せだとおもう。

川村房子

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

石川拓也

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「デザイナーは喧嘩師であれ」 川崎和男 アスキー出版局

僕が下手に紹介文を書くよりも、この本の前書きにあたる「デザイナーは、喧嘩師でなければならない」という文章を、ここに全文引用したいと思ったのです。

ですがそれはこの項の趣旨ではないので、一部のみそのまま引用します。

子どもにとっては、喧嘩ほど、激している感情から知性的な自己中心性を取り戻すはっきりとした学習のチャンスなのではないかと私は思う。喧嘩こそ、自我の確立を助け、もともと肉体的に多少なりとも暴力性を秘めている人間の原初的行動を抑制して、話し合いや討論に変革させる動機付けになるはずだ。

ところが「暴力」ということばは拡大解釈され、「悪」という概念に単純に結びつき、喧嘩を抑制することにのみ使われるようになってしまった。結果は「話し合い」が正しいとかいうわけだ。

強要される話し合いというのは形式でしかない。現代の民主主義はこの形式が強要されている暴力と言ってもいい。

(中略)現代では、喧嘩のできない子どもが「いい子」として扱われる。この「いい子」を摩擦回避世代と呼ぶらしい。

そしてこの前書きの最後は、上の写真にあるように、

若者よ。喧嘩を恐れるな。

摩擦回避世代の者たちよ。一発殴ってやろうじゃないか。

という文で締められます。ストロングスタイル。すごい。

川崎和男は、日本を代表するプロダクトデザイナー。その美意識を結晶化するような仕事の数々と、クライアント相手でも喧嘩上等、場合によっては完成したデザインを引き上げてギャラも突き返すという姿勢で知られています。

現代の社会における暴力への嫌悪感、これはもちろん悪いことではない。むしろ戦争を筆頭にした数多くの暴力を経験してきた人類の叡智というものでもあるでしょう。その中には例えばガンジーの言う「非暴力主義」として現実社会において具現化した例も実際にあるわけです。キング牧師も然りですね。

 ただ、これを社会のすべてにおいて当てはめたときに、そこはかとない違和感を感じるのは、これを書いている私一人だけではないように思います。

例えばこの本の前書きに触れられているような子ども同士の喧嘩。または頑固じいさんが近所の悪ガキに落とすゲンコツ。こういったことも全て「許されざる暴力」でしょうか?その見極めはとても難しいものに思いますが、一つだけ言えることは「非暴力」と「摩擦回避」は似て非なるもの。

ガンジーもキング牧師も、「非暴力」を掲げながら、最大級の摩擦・インパクトを社会に与えた指導者たちです。言論・思想のぶつかり合いは辞さない、しかし手段としての暴力は否定する。

「暴力は悪いもの」という考え方が行き過ぎた末に、川崎和男が書いたように「とにかくぶつかることを避ける」という摩擦回避世代の出現がくるとしたら、「一発殴ってやろうじゃないか」という心意気には拍手を送ります。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「エムエス  継続捜査ゼミ2」 今野敏 講談社

図書館でも人気があって、この作者の本が入ると予約待ちになることが結構ある。以前にもこの作者の感想を書いた事がある気がするけれど…。

警察を定年となり、友人の女子大学長に誘われて、準教授として教鞭をとっている小早川。

彼のもつゼミ「継続捜査ゼミ」には5人の女子大生。「冤罪」をテーマと決めた。そんな折も折、大学構内で傷害事件がおこり、傷害容疑で小早川が警察に任意同行された。身に覚えがないのに執拗に問い詰められ犯人扱いされる。その精神的苦痛は大きい。警察時代の自分をふりかえってみると、犯人逮捕に必死になっていた自分がいる。自由に動き回れない小早川にかわってゼミ生は、回りの人の協力を得ながら真相を追究し、容疑を晴らしていく。

女子学生が選んだ冤罪事件も考えさせられる内容だった。

娯楽小説には最適だと思っているけれど、寝る間を惜しんで読んでしまうからそうじゃないかも。

川村房子

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone
私の一冊

石川拓也

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone

「チェーザレ 破壊の創造者」 惣領冬実 講談社

このコロナ禍で遠出がままならなかった時期に、以前から気になっていたマンガを大人買いして一気読みという休日を過ごしていました。

「チェーザレ」は1500年代に活躍した政治家チェーザレ・ボルジアの伝記マンガ。

小耳に挟んだところによると、西欧史の中でチェーザレ・ボルジアはどちらかというと悪役イメージを担わされていることが多いのだそうですが、この作品はそのチェーザレ像に新たな光を当て、とても奥深く魅力的な主人公として命を吹き込んでいます。

同時にルネッサンス期のイタリアを中心としたヨーロッパの政治宗教的な状況や、学生や庶民の文化習俗にいたるまで、説明過多にならず、且つその息遣いも聞こえてくるような距離感で展開されます。

紙面での建築物の再現も息を呑むほどの精密さで、システィーナ礼拝堂の内観などもストーリー上登場しますが、ミケランジェロが天井画を描く前の時期の礼拝堂を、想像力も交えながら精密に再現しています。ちなみに2枚目の写真はピサに実在したボルジア邸の内観。見事です。

歴史マンガの非常に面白いところは、教科書で「習う」「覚える」ものであった歴史の一要素を、登場人物の様々な感情に共感しながらその出来事や事件を「体験」できるものとして現前してくれること。

例えば「カノッサの屈辱」というキリスト教史の大事件が、この漫画に出てきます。ローマ皇帝ハインリヒ4世がローマ教皇グレゴリウス7世から信徒としての破門を言い渡される大事件です。

教科書で読むとそういう説明になってしまうのですが、マンガの中ではそれが皇帝も教皇も1人の感情豊かな人間として、怒り、悔しさ、怖れなどを抱えながら先の見えない未来を掴もうともがく様が伝わってきます。

そうすると「カノッサの屈辱」は、生々しい体験として読者の心に刻まれる。そこがマンガの強さでもあると思います。

 

Share on FacebookTweet about this on TwitterEmail this to someone