私の一冊

 

 

山の人、町の人。先祖代々住む人、都会から越してきた人。猟師さん、農家さん、森の人、職人さん、商店さん、公務員…。

人口4,000人弱の土佐町にはいろいろな人がいて、いろいろな人生があります。

土佐町のいろいろな人々はどんな本を読んでいるのでしょうか?もしくは読んできたのでしょうか?

みなさんの好きな本、大切な本、誰かにおすすめしたい本を、かわりばんこに紹介してもらいます!

(敬称略・だいたい平日毎日お昼ごろ更新)

私の一冊

矢野ゆかり

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「風の谷のナウシカ」 宮崎駿 徳間書店

随分とごお無沙汰しておりました。

5月ぶりの登場のゆかりでございますよ。あいすみませんね。

学校図書館の支援員をしていると、慣れないことばかりで言語野がオーバーヒートを起こしてしまうのです。謎の偏頭痛やら、耳鳴りに耳痛に親知らずは生えるし、最近な謎のさしこみもあるし。

まぁ白々しい言い訳はさておき、我が矢野一族の華麗なる近状もご報告しなければなりませんね。

弟は真面目に苦学生やっているので割愛。妹は自由気ままに奔放にやっていいるので割愛。

認知症の祖母は、ロジカルモンスターSOHU(祖父)と、毎朝なぜかバトルをしています。

どうやらお米をどれぐらい炊くべきかの論争らしいのですが、2人とも耳が遠いので自然と話す声が大きくなり、毎朝大喧嘩をしてるように聞こえます。

そして眠りが浅く不眠症の私が驚いて、目覚めてしまい、朝から精神安定剤を飲まなければならないのは、勘弁して欲しいところです。

この米騒動は常態化しているので、矢野家の懸案事項の1つです。しかし祖母はデイサービスに行く時に「行ってらっしゃい~」と声をかけると「はーい!!いってきまーす」と子供のように無邪気な笑顔で手を振るので、ま、いっか(笑)と思えてしまいます。

母の痩身ぶりは相変わらずで、アブラゼミ(メス)が脇腹に留まって休憩していました。多分ゴツゴツした肋骨と木の枝のような腕が、彼女にとって安心出来る場所だったのでしょう。みんみん。

父は相変わらず、笑点の山田くんが持って行く座布団が無くなるぐらい、寒いおやじギャグをカマしていますが、たまに場外ホームラン打つようになりました。妙なツボにはいって、私が泣いて嘔吐くほど笑うので、本人が一番困惑しています。

ちなみに笑いすぎて、何が面白かったのか忘れてしまうので、ここに書けないことが残念です。ちなみに、台風10号が9/69/7にかけて通過していきましたが、その中で生まれたオヤジギャグは'うちの田んぼに、飛んできた椅子が居座っちゅう'でした。

ちなみに持ち主が分かるのが田舎ならではですね。土佐町に来たのが、しょーもないギャグで終わる、台風10号でよかった。停電や農家さんやら沢山被害はあるけれど、人死が出るようなことがなくてよかったことでした。

さて前座は終わりまして(スパッと)

本文へと参りましょう。

この作品の中で、ナウシカがたびたび言われている言葉があります。言い手によってニュアンスは違いますが「男だったら」というのは一緒。

ナウシカは男であったならと常に言われているのです。父王や4p16のように。しかし実際はナウシカ自身は一騎当千とも言われる猛者中の猛者。何故そこに性別が絡んでくるのでしょうか。

生理や出産といった事が理由の一つではあると思いますが、この世界で女性が権力を持つことはほぼ無いようです。

風の谷の大ババ様は少し例外的だとは思いますが、敬意を表されてもそこに権威や権力は存在していないという点で、女性が権力を持つという発想が異質であるということです。

だからこそ族長をナウシカに任せる選択をしたジルの判断は、苦痛と不安を伴ったでしょう。実際に武力と権力を持っていたクシャナは、あらゆる手を使って奪われてしまいます。

ただクシャナは男であったならと言われているシーンがありません。散々「賢い女は嫌いだ」言われていますし、白き魔女と誉れとも侮辱とも取れる異名ならありますが。

どちらにせよ、女性が権力を持つことの無いこの世界で、世界を動かす中心にいるのがナウシカ、そしてクシャナ、後述する子供のチチクなのは、かなり異質であり著者の心の深淵を覗いたようでゾッとします。

さて、この4巻では、あの冷静沈着な白い魔女クシャナが、仇を前にしてとうとう我を失ってしまいます。

この兄皇子の意地の悪いことと言ったら、まさに虫唾が走るとはこのこと。間一髪、クロトワが機転を利かして難を逃れますが、蟲の大軍の中に完全に孤立。

兄皇子は重コルベットで逃げ出しますが蟲の大軍に撃墜されます。この瞬間、クシャナは白い魔女らしさと言うべき氷のヴェールが剥がれ落ち呆然と立ち尽くします。

普段なら、この危急時には部下と自分がどう生き残るかを、走りながら最優先で考えているでしょう。それほどまでに、兄皇子に対する憎しみと怒りは強かったのか、というのが私の正直な感想です。

私はどこか、クシャナに対して温かい人間味を感じないようにしていたのかも知れません。ですからその後の場面で、クシャナが指示を出さないばかりに部下が死ぬシーンを見て、私自身の足元がふらつくような不安感を覚えました。

しかし、恐らく、彼女が感じているのも、自分を構成する一大部分が、不意に削げ落ちてしまった不安定さなのではないかと思います。

クシャナは数名の部下達と塹壕で、じっと動かず蟲の大軍を凌ぎます。彼女は、毒に侵され娘た人形の区別もつかなくなった母を、最後に見舞った時を思い出しています。ここに大きなウシアブがやってきます。

クシャナはお前が私の死か……~中略~あいつたちを殺せるならこの生命など惜しくもないとおもいつづけて生きていたものを……”と半ば諦めたように兄皇子を始末した蟲に対して愚痴を吐きます。

しかし、ウシアブは一瞥したのみで、行ってしまいました。彼女は自然と子守り唄を口ずさんでいました。私は胸がつかえてこのシーンは本当に苦しいです。

クシャナは、クシャナ自身が王都攻略、打倒父王とは掲げていても、それより最優先すべき事項が兄皇子達への復讐だったのでは無いでしょうか。

土鬼侵略諸々、トルメキア王都攻略はついで。ただ本当は、部下達には自分の復讐や自分への謀略のせいで、一兵たりとも死んで欲しくはない。今まで謀略によって失った部下達の扱いを見ても、それは痛いほど分かります。

ですから実際に、仇の1人が目の前でいとも簡単に死んだ事は、クシャナがクシャナ足るべき一部を失ったと言っても過言ではないでしょう。足るべきものが無くなれば、何かを足さなければ立ち直れません。それを足していく、それを考えていく時間。それがこのカボ基地での、大量の戦死者、虫の死骸、発芽する腐海の植物たち、生き残りの部下達との時間なのだと思います。

一方でナウシカは南下の旅を続け、古来の信仰を神殿でチチクと出会い、託されます。ここからの話は一気に進んでいきます。

変異させたの腐海の植物と突然変異の粘菌が暴走したところを、土鬼の僧正であるチヤルカと共に何とか収めます。突然変異した粘菌の増殖力と知能は凄まじく、確実に土鬼の土地を食らってゆきました。皇弟に忠実なチヤルカは葛藤しつつも、ナウシカの真摯さと持ち前の忠国心で墓所に戻らず、土鬼の民を救う道を選ぶ事になります。

5巻に続きます。5巻の中程まで自体はあまり進展しません。城オジ達とユパ、アスベル、ケチャが、カボ基地で偶然クシャナ達と合流します。

そして、この合流までの時間は、クシャナをクシャナたらしめることが出来たようです。そしてクシャナとユパが同じ船に乗ったことが、今後に大きく繋がっていきます。

一方ナウシカはチチクと共に、突然変異体の粘菌を追っていました。粘菌は5体。防衛本能に従って1つの場所に集まり、一斉に胞子を飛ばして勢力を拡大するつもりです。

蟲が狙っているのもこの粘菌たちです。古より伝わる大海嘯は、今回この粘菌たちのために起こると確信したナウシカはここで共に最期を迎える覚悟をしたのでした。

さて、今回はここらへんで!

次回はもう少し早く続きが出せそうな気がします。(ホントかな~(笑))

5巻から6巻辺りを書けたらいいかなと思います。

最後に、末文になりますがお許しください。

未だ収束せず混乱を招いているCOVID-19ですが、医療従事者の方々、保健所の方々、教育現場の方々、各種接客業の方々、老人福祉施設の方々、コロナという戦場の前線に立たれている皆様に心からの敬意と、感謝を。いま苦しい立場にいる人々にエールを。

そして、今年の豪雨や今回の台風10号で亡くなられた方にご冥福を、被災された方々にはエールを送らせてください。

それでは、また。

 

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私の一冊

西野内小代

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鬼滅の刃  しあわせの花」 吾峠呼世晴, 矢島綾 集英社

関東の孫(小学生の女の子)二人が夢中になっている「鬼滅の刃」というアニメの小説版が出版されたという情報を遅ればせながらキャッチ。共通の話題作りになればと思い読んでみる事にしました。

鬼退治の勇ましい内容を想像していたのですが…。あにはからんや、時代は大正、内容は成長していく10代の少年少女の青春ストーリー。

孫達も共感を持った事だろうと納得し、彼女たちが描いた「鬼滅の刃」の絵(お嫁さんがラインで送ってくれた作品)を再度じっくりと眺めたばぁばです。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「クラバート」 オトフリート・プロイスラー 作, 中村浩三 訳 偕成社

ドイツのスラブ系少数民族ヴェンド人に伝わる〈クラバート伝説〉を下敷きにした本書は、メアリー・ポピンズや指輪物語、ハリー・ポッター等の英語圏のファンタジーとはずいぶん雰囲気の違う物語です。

主人公のクラバートをはじめ登場人物一人ひとりを個性豊かに描き、復活祭やクリスマスなどを物語に巧みに取り入れた緩急ある構成で最後までぐいぐいと読ませます。

そして軍国主義への小気味よい一撃などもさりげなくはさみ、より密度のある物語となっています。 そして、親方の権力からクラバートを解放するべく「ソロの娘」と親方との命を賭した緊迫の駆け引きの巧いこと!

代表作のホッツェンプロッツの底抜けの楽しさとは全く違う、重厚で神秘的な骨太な世界をお楽しみください。

 

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私の一冊

川村房子

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「いつも忘れないで。」 浅見帆帆子 ダイヤモンド社

嫁さんの本棚からの一冊です。イラスト入りの、薄い小さな冊子の様な一冊。これが、読むと奥深いのです。

「精神レベルをあげよう。その為にはプラスのパワーをあげよう。日常の小さな心がけでたまるプラスパワー」。

簡単なようで、心がけの日々の積み重ねはなかなか難しい。

「精神レベルが上がってないうちは、自分の本音に正直に。会いたくない人、見たくない物、嫌な気分になることをしていると、心のなかにマイナスがたまっていく。はじめのうち、そういうことは意識して避けること。レベルがあがっていくと、自然に受け入れられる」と。

レベルを上げていくことは難しくても、嫌な気分で過ごすことがないように…。

そうありたい。

 

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私の一冊

西野内小代

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「世界遺産ミステリー」 博学面白倶楽部 王様文庫

人類の過去にはとても残酷な歴史がありました。この本にも多数載っているような亡霊の出現目撃等を否定する気はサラサラないのですが、個人的には疑問に思っています。

しかしながら、現実として可視化できる建造物等はとても不思議に思います。例えば1600年間錆びた事のない「モスクの鉄柱」はとても神秘的!

一つのテーマが3~4ページにまとめられているので、ちょっとした時間つぶしにはもってこいの一冊です。

 

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私の一冊

田岡三代

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「ラジオ深夜便 誕生日の花ときょうの一句」 NHKサービスセンター

「誕生日の花と花言葉」と「きょうの一句」の一年分が一冊にまとめられている。

10年前に購入して以来、出会った人の誕生日を聞き、その日の花言葉を教えてあげると、何と、その方の考え方や、生き方の傾向が花言葉にぴったりだったりで、随分楽しめる本でした。

因みに、主人は、4月21日生まれ、誕生日花は、「サクラソウ」。花言葉は「少年時代の希望、青春」。そういえば、いつも前向きの希望と明るい未来を口にする人でした。

 

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私の一冊

西野内小代

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「桂太郎」 倉山満 祥伝社

「今の日本に求められる宰相」というフレーズに興味を抱き読み始めました。

ニコポン宰相と表現され、「人たらし術」で人事に威力を発揮し、駆け引きに勝利、政治をコントロールできた方らしい。ニコポンとはニコッと笑ってポンと肩を叩き、物事を良い方向へと運ぶ術を表現している。

維新の高邁な志がなくなり、己の権益に迷走しがちな政治の中にあって、ひたすら日本を考え、変えようと奮闘したが、胃がんのために志半ばでお亡くなりになった。

改革はやり遂げないと結果がでないと言われています。心残りな人生だったことでしょう。

 

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私の一冊

古川佳代子

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「風をつむぐ少年」 ポール・フライシュマン著, 片岡しのぶ訳 あすなろ書房

誰しも生きていく中で、加害者になることもあれば、被害者になることもあるでしょう。 傷つけられた被害者や家族、友人たちの加害者に対する怒りや嫌悪は当然のことです。けれども加害者もまた、自分の引き起こした罪に傷つき、思慮の足りなかったこと、迂闊だったことに打ちのめされることも多いのです。

16歳の少年ブレントは転校早々開かれたパーティで恥をさらし、酔った勢いで自殺を企てます。その結果、ブレントは軽傷で済んだものの18歳の少女の命を奪ってしまいます。「人を殺してしまった」贖罪のためには何をすればよいのか?そもそも許されることなのか?大切な娘の命を奪われた母親は思いもかけない償いの方法をブレントに提案します。

罪を償うことのむずかしさ、赦されたいという願いの先にある希望が切なく伝わってくる物語です。

 

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私の一冊

川村房子

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「月の満ち欠け」 佐藤正午 岩波文庫

新聞に載っていた宮本輝さんの文庫を買いたいと大阪で本屋に寄ったけれど、大きな店で店員さんも忙しそうで声もかけにくく、待ってくれてる家族も気にかかる。ふと見ると、「直木賞受賞作」文庫本があり購入。

あたしは、月のように死んで生まれ変わるー

この七歳の娘が、いまは亡きわが子?今は亡き妻?今はなき恋人?

過去から現在への時間軸に沿って、繰り広げられる一つの物語。恋人だったり、妻だったり生まれるまえの記憶を持ったまま、自分が生まれる前の人生を覚えていて、前世の記憶の好みや癖の一つ一つが娘の体に入っているって…。

過去から現在へ時間軸に沿って、繰り広げられる3人の男と女の物語です。

 

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私の一冊

西野内小代

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「恵比寿屋喜兵衛手控え」 佐藤雅美 講談社文庫

インターネットで他の本を注文した時にお薦めとして紹介されていたので、購入してみた一冊です。

直木賞受賞作という事なので期待度も高まります。

導入部分のさりげない描写に促され、すんなり江戸へとタイムスリップできます。期待通りの面白さでした。

恵比寿屋という旅籠屋が舞台、そこの主人を中心に物語は展開していきます。

今でいう司法書士事務所も併設している旅籠なので、種々の人間模様が深い観察力で描かれています。

主人公が命を狙われるという複雑なサスペンス性も兼ね備え、先へ先へとページが進みます。

 

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